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最高のビール考。

子供はビールが嫌いだ、と言っていい。
ごく稀にいる一部の天才を除いて、子供はビールに苦味しか感じない。

僕の「ビール童貞喪失」はローティーンの頃、
親戚連中のおおぜい集まった自宅での宴会において、である。

「お前ももうお兄ちゃんだからビールの一杯くらい」という、

まったくわけのわからない酔っ払い独特の論理を秋田弁でまくしたてられ、
キリンのロゴの入った小さいグラスに冷えた瓶ビールをなみなみと注がれ、
小学生にとって苦いだけのビールを飲み干すとすでに顔の赤い大人たちはやたらと喜び、
当然一杯で済むはずもなく一杯もう一杯とおかわりを強要され、
気がついたら折りたたんだ座布団を枕にのぼせたように寝ついていた、
というのが僕のビールに関する最初の記憶である。

ともかく酒全般に言えることなのだが、
体調や顔ぶれ、舞台装置の快適さなどによってビールの味は大きく異なる。
「まずい酒だ」という言葉があるが、これは酒そのものの事よりも、
酒をまずくさせている状況を指して言われる事が多い。

僕の場合、仕事中とフリーな時間のテンションがまったく違うので、
会社に買い置きされているビールを夜は飲んでいいと言われても、
美味しく感じないビールは飲みたくないという理由で会社ではほとんど飲まない。
それなら家に帰って飲むか、帰りにどこかの店に寄って飲むのがいいし、
実際にそうしている。もちろん飲まない日も多いけれども。

今まで飲んだ中で、最もビールを美味しく感じたのはいつだろう。


忙しい一週間が終わって、週末に友達と飲むひとくちめのビールはいつでも最高だが、
もうちょっとスペシャルなシチュエーションで考えたい。
一番、というのはなんとも決めがたいものがあるけれども、
ここ数年で言えば去年の沖縄だろうか。
サイパンに向かう機内の窓際の席で眼下の雲海を眺めつつ飲んだ、

太陽の光にキラキラと黄金の輝きを放ったあの冷たいビールもとてもとても捨てがたいが、
ここはやはり沖縄をあげたい。沖縄の、海の上。


去年が初の沖縄旅行、初日に那覇からいきなり慶良間の離島へ向かうスケジュール。
泊港から移動は高速艇「クイーンざまみ」、目的の島までほぼ一時間。
オリオンビールを数本持ち込みキレイな船内で窓から海を眺めて飲んでいたのだけど、
船が横波に大きく揺れ、ビールがシャツにこぼれてしまった。
濡れたシャツを乾かそうと船の後部に出ると、なにやら上が騒がしい。
階段を上がって、デッキの上に出られるらしい。嬌声が聞こえる。
僕は急いで席に戻ると、新しい缶ビールを持ってデッキに登った。


これぞ絶景キター!


午後。那覇を出て数十分、かなりの沖に出た船の周りは360度の海。

しかも天気は快晴、バスクリン入れましたか?という海は、
水平線の彼方までひたすらキラキラと光っている。
ぽつぽつと小さい島だけが点在する南の海を、高速艇はずんずん進む。
船の後ろからは白く一直線の轍が、伸びて広がって消えている。
海風を全身で浴びつつ飲んだあのオリオンビールは、たとえそれほど冷えてなくとも

サイコーにウマいと感じて余りあるものなのであった。
デッキの上の人々は終始、自然な笑顔を絶やさない。僕も笑顔を絶やさない。
海の上の幸せな小空間。


この秋も、美味しいビールを飲みましょう。

年中言ってますが…(笑)



のこのこさんのスーパードライが安く飲める島にトラバ。
by shinobu_kaki | 2004-09-17 16:46 | 最初の一皿、最後の一杯

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by Shinobu_kaki
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