フィッツジェラルドの苦悩。


以下は、2008年3月の「エスクァイア日本版」からの引用。


 あるとき、フィッツジェラルドが
 筆者の同僚でプロ中のプロの脚本家のもとに相談に来た。
 「ディソルブとフェイドアウトの違いを教えてくれないかな?」
 脚本家はおどろいて、なんでそんなことを知りたいのか、と聞いた。
 「映画は新しい芸術だよね。
 どういうものか、しっかり知っておきたいんだ」
 そこで、脚本家は、細かいことは知らなくていいのよ、
 ディソルブとかフェイドアウトは、
 映画を撮り終わってから監督とか編集のやつらがラボでやる作業で、
 脚本書きには関係のないことなの、と言った。
 フィッツジェラルドは呆然とした顔になったが、なおもこう言った。
 「でも、知りたい。ぼくは一級の映画作家になりたいんだ」
 すると、脚本家はこう言い放った。
 映画作家?会社があんたに求めているのはフィーリングだけだよ。
 余計なことは考えないことだ。
 「フィーリングだけ?」
 そうだよ。
 そして、力なく引きあげていくフィッツジェラルドを見ながら、
 こう言うのである。
 あのひとも死んでるね。

 青山南「盛衰の作家、フィッツジェラルドへの再評価」より


村上春樹の功績によって、
ブッキッシュな日本人のほとんどが知っているのではと思われる、
F・スコット・フィッツジェラルド。
僕も詳しいわけではないけれど、
代表作である「グレート・ギャツビー」くらいは持っている。

彼は1940年に44歳で亡くなっているが、
その時は本のほとんどが絶版で、世の中の認知度においても
「まったく『だれ、それ?』な状態だったのである」。
(上記の同記事より引用)

上のエピソードは少々分かりづらいが、
歴史的に有名になった作家の、生前のもがきが感じられる。
彼が額縁に入るのはもう少し後の話だ。

そしてフィッツジェラルドの苦悩は、
どこか現代に通じるものもあるだろう。
その時々では、人はいつも先が見えないので懸命である。
自分がどうなるかなんて知っている人はいないのだ。
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by shinobu_kaki | 2010-05-11 18:14 | 言葉は踊る。 | Trackback | Comments(0)

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