外部と内部とテクノロジー。

かなり昔、1989年頃の坂本龍一のコメントだけれど、
面白かったので手元の本から転載。

「人間の本質的な欲望として、自己を外化するというのか、外へ表すということで言うと表現ということになるわけだけども、道具をつくるということはまさにそうで、身体の延長、身体の外化がどんどんされていく。テクノロジー自体がそういうものじゃない?
つまり武器を持つということ自体、手の延長でしょう。そうやって人類は一生懸命、自己を外化してきたんだけど、二十世紀になってとうとう脳を外化するところにまで至った。ワープロももちろんそうだし、コンピュータもそう、全部脳の延長なんだよ。あれはだから自分でどう考えているかということを自分で見るということだからね、自分の脳のシミュレーションなんだよね。
それは無根拠なもので、そこには個的な根拠みたいなものはないわけだから、それは入れ替え可能になるわけ。そうすると完全に内部がなくなる。同時に外部もない。外部がなくなって全部内部になってしまうと、めちゃくちゃな自己矛盾というか、神と神との対話みたいになっていく。実際に僕らの状況はそうなってきていると思う。しかも、柄谷さんではないけれども、すべては無根拠で、何も決められるはずないのね。だから、コマンドというのが与えられないと、われわれは何もできない。
自分たちが意識して選んだわけでもない記憶がインプットされている。生体系自体、生体自体がそういうものであって、意識的な根拠はどこにもないところで、しかも、テクノロジーと向かい合ってすべて自分で決めていかなくてはいけない。つまり、外部がない状況、すべてが内部である状況に閉じ込められているわけ。だから直接的にわれわれ自身が神の情報系の末端というか、一部にならないといけない。神というか、一神教的な情報系があって、われわれ自身はその一末端になることを選ぶこと以外に取る道はない。今はそういうところまで来ているような気がする。
ピアノで作曲するということは、近代のシステムに包含されるということで、そこではエモーションとか物語とかが許される。自分で自分を許したいわけね、人間たちは。だから近代というシステムをつくり、そこにロマンをつくり、ピアノという楽器をつくり、そこに作曲という行為を演出する。だけど、それが完全に終わってしまって、テクノロジーと直接向かい合わざるをえないところまで来てしまった。
つまり、内部があるという仮定の下で、そういうモダンなパラダイムでテクノロジーと向き合うときに、向こうからコマンドがくる。数値を示せという。その数値を示すのは自分以外にないんだけども、実はどこを探しても、根拠を提示する自分はないことを発見するわけでしょう。そうすると、逃げ道というか、ひとつの答えはテクノロジーを介して向き合っている神という一神教的な情報系の一部であると認めることでしか、存在理由はないわけね。
だけど、いちばんの厄介さというのは、テクノロジーの進化の中にも逆説的に近代が残ることだと思う。(略)常に情報を与え続けないと、気が狂ってしまうわけね、人間というのは。近代というか物語みたいなものが必要なわけ。必要というか、ものすごい強力な機能としてもう一回定義され直すというかな、神話なりストーリーというものがリプログラムされる」


ちょっと難しいけどね。
今から20年以上前のコメントなので、
「今」の指し示すものはずいぶんと変わって来ているとは思う。

テクノロジーは進歩したし、ユビキタス的な、
生活のあらゆるディテールの中にテクノロジーが活かされ、浸透している。
それは他人との通信において特に顕著だ。

コンピュータが脳の延長というのはまさにそうで、
僕も何度か「人間(の能力)はOSのようだ」と書いた記憶がある。
つまり、肉体とか器官といった入れ物があって、
それ自体はほとんど大きくは変わらないものだけれど、
中身である「能力」の部分はどんどん進化していくし、
トータルで見るとかなりドラスティックに変えることができる。
そして能力や最適化力において散見される個体差は、
まるでOSのバージョンが違うみたいに差異が顕著だと思うのね。

これも前に書いた気がするけど、
コンピュータ用語って神的なワードと親和性が高い気がする。
「ユビキタス」という言葉だって、
「神はあまねく偏在する」みたいな意味でしょう。
上記の引用にもあるように、コンピュータが脳を外化して、
取り出した自己を見つめる、対峙するようなものであるとするなら、
それはまさに神のような所業と言えるかもしれないんだよね。
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by shinobu_kaki | 2011-01-15 09:01 | 言葉は踊る。 | Trackback | Comments(0)

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