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ローマ、天才、豊かな生活。

「人間の歴史を考えて大きく分けると、
先史の時代と古代とそれ以降しかないとぼくは思っているんですよ。
先史はもちろん文字も金属もほとんどない。
古代は文字を持っていて都市をつくり、
経済システムをつくり法律体系をつくっています。
現代と違うのはガスや電気や化石燃料の技術がなかったというくらいなんですよ。
そういう前提のうえでの完成形体は、ローマ帝国なんです。

中世のあと近代主義社会になって現代になるんだけど、
まだ完成形までは行けてないと思うんですね。まだ先はある。
そこで、われわれの歴史から見ることのできる
ひとつのモデルというのが古代という時代であり、
古代というものの完成形体はローマではないか…ぼくはそう思ったんです。

科学史の研究者たちがよくやるのですが、
人類史上の天才100人をトップから並べようと。
そうするとほとんどだいたい誰もがアインシュタインを80番くらいに置きます。
もちろん日本人は残念ながらひとりもいない。
トップから20番目30番目くらいまでは、ほとんど古代ギリシャの
自然科学者や哲学者で、アリストテレスなんかがばーっと入ってきて、
そのなかにローマ人は全然入らないんですよね。

ギリシャ人たちが活躍した時代は
紀元前600年代から紀元前200年くらいまでの約400年ですけど、ただ、
当時に生活レベルが上がったかというと、これはほとんど上がってないんです。
その当時からギリシャ人たちは「まずいものしか食わない」って、
地中海世界でも有名なんですね(笑)。
生活レベルで言うとその100人の天才リストに名前を輩出していない
ローマ人というのは、そのギリシャ人の発明したものを
徹底的にアプライしていくわけですね。
応用して利用しつくして自分たちの生活水準をぐんぐんあげる。
この生活水準はイギリスで産業革命が起こるまで
人類のどこも克服できなかったものなんですよ。
約17世紀くらい克服されないものを築いちゃう。

4〜5年くらい前から日本の教育が閉鎖状態と言われて、
そうすると教育研究者や文部省が「創造性のある人間をつくらないとだめだ」
と言うけど、創造性って何かというと、
ギリシャ人のような天才をぐんぐん輩出したってわれわれの経済などが
好転するかっていうと、少なくとも歴史上の教訓を見るとそうではない。
現代には3タイプの金持ちがあると言われます。
ひとつは南米のブラジルやアルゼンチンのように、
お金さえあればやりたい放題にできるというもの。
2番目はイギリスの貴族の、衰えたとは言え奥深い金持ちのありかた。
3番目は北イタリアの市民レベルでの豊かさで、誰もが豊かになれて、
豊かになったときにはそのよさをエンジョイできる生活と環境がある。
その点は南仏などよりもはるかに上なんです。
もちろんアメリカの金持ちはこの3つとはまた別ですけど、
そのあたりを考えたときに、
例えばローマ時代の1世紀2世紀の頃はやっぱり古代社会という違いはあっても、
ある豊かさの典型じゃないかと思いますね。
それは奴隷であれば違いますが、
市民であれば今の北イタリアの生活レベルに達しています。
食料が供給されるし生活補助もありますから、
そういう意味での豊かさはあったんですね」


青柳正規(東京大学教授)


ほぼ日刊イトイ新聞「ポンペイに学べ」




ローマ市民は「大浴場」使い放題でしたっけ。
パンとワインも。
いいなあ。
ビバ、パクス・ロマーナ(←ちょっと違う)。
by shinobu_kaki | 2004-10-19 13:54 | エウレーカ!

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