野口英世への手紙。

千円札の肖像にもなった野口英世。
彼は終生、日本の学会から認められなかったことも含め、
決して人に羨まれるような生涯ではありませんでした。

漫画や映画(「遠き落日」)にもなっているので有名かもしれませんが、
彼の母はシカさんといいました。
彼女は貧しい家計を助けるために小さいころから子守奉公をし、
寺子屋に行く暇もお金もなかったため、字の読み書きができなかったといいます。
それでも、時々寺子屋を覗きに行くほどの勉強意欲、
それに打たれた寺子屋の先生が特別に手本を贈り、
彼女は灰の上に何度も何度も字を書いて覚えたといいます。

そんな彼女が明治45年に、
アメリカにいる英世に向かって送った有名な手紙があります。
書き慣れない文字で綴られたその手紙は、
稚拙ではあるが、むしろその稚拙さゆえに心を打つものが。




はやくきてくだされ はやくきてくだされ
はやくきてくだされ はやくきてくだされ
一生のたのみで、ありまする
西さ向いては、おがみ、東さ向いてはおがみ、しております
北さ向いてはおがみしております
南さ向いてはおがんでおりまする
ついたちには塩絶ちをしております
栄昌さまに、ついたちにはおがんでもろておりまする
なにをわすれても、これわすれません
写真をみるト、いただいておりまする
はやくきてくだされ いつくるトおせてくだされ
これの返事をまちておりまする ねてもねむられません

(手紙の一部)




もちろん漢字の部分はすべて平仮名、
助詞の「を」は「お」と書かれているが、読みづらいので直しました。

上の手紙を読んだ英世は涙が止まらなかったといいます。
「帰ってこい」「会いたい」と、ここまでせつせつと綴られると、
これは切ないよね。彼はすぐに返事を書きましたが、
帰らなかった(帰れなかった)そうです。

母シカは英世に何通もの手紙を書きましたが、
明治36年に最初の手紙を受けとるまで、
彼は母が字を書けるということを知らなかったんだとか。

感動的なお話で「さすがお札の顔!」とゆーべきとこですが、
奥さんの実家に借りたアメリカ行きの費用を飲んで一晩で使い切っちゃった、
なんていう豪快なほどルーズなエピソードもあり、
当時の研究者にしては女遊びもなかなか派手だったようで、
ちょっとひと癖ありそな御仁です、野口。


「手紙」って書かなくなったよね。
メールと手紙は、またちょっと違う。その温度において。
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Commented by いづみ at 2004-11-16 13:30 x
手紙は大好き(筆まめ)だけど、海外行った時くらいしか書かなくなったなあ。

野口英世といえば
小学校の時、授業中に書いた伝記の感想文が入選して
賞状もらえたから、恩人?みたいなイメージ(笑)
Commented by あい at 2004-11-16 13:31 x
先週だったかな、おばあちゃんの家でお昼を食べた時、
TVでみました。

おばあちゃんちでのお昼は、必ず「おもいっきりテレビ」。
(ちなみにおばあちゃんは、気になった話があると、
 必ず専用ノートにメモを取る)
その「今日は何の日」というコーナーで。
その日は確か、野口シカさんの亡くなった日。

その手紙は決してきれいと言えるものではなく、
でも、会いたいという気持ちが満面に溢れていました。
「~まする」「~くだされ」という言葉は、
あまり息子にあてて使う言葉ではない気がするのですが、
その言葉に、余計気持ちが込められているようで…、

涙が出ました。一人ずっと待っていたんだなって。

その後帰国した時、親子で全国を回ったそうです。
会わなかった分だけの親孝行をしたんですね。

そういえば、せっかく福島にいったのに、野口英世関係に触れる事が
できなくて残念でした。

新札、なんだかのっぺりしている気がする、全員顔が。
Commented by shinobu_kaki at 2004-11-16 14:07
>筆まめいづみちゃん

恩人なんだ(笑)
僕も似たようなケースが…。
誰だっけ。

あ、山本有三か(いかにも推薦図書)…偉人ではないな。
Commented by けろよん at 2004-11-16 14:08 x
野口英世のお母さんの手紙。

よくドラマの勉強会で課題になりました。
親が子供を思う気持ちを表現するには
どうしたらいいか? とかいうときに。
これだけ、気持ちがつたわる手紙はなかなかないですね。
文字や言葉を知らなくても、
言霊というものは人を感動させるものですなー。
これ、ワープロじゃなくてほんものの文字をみると
もっと感動するんだよねぇ。

Commented by shinobu_kaki at 2004-11-16 14:10
>午後は○○思いっきりあいさん

家には帰ってこない、連絡もなかなかしない、
仕事熱心ではあるけど遊び好きでふらふらして野口英世…

…って、なんか他人とは思えなかったりして…

母上に手紙でも書こうかしらん。


新札の顔。
たしかに。なんか立体感ないっていうか。
でもまだ樋口さんを入手していないのでつ…。

まぼろしの女(ひと)。
Commented by shinobu_kaki at 2004-11-16 14:15
>けろよんさん

個人的には「息子に対する母親の丁寧語」ってぐっときます。

>これ、ワープロじゃなくてほんものの文字をみると
>もっと感動するんだよねぇ。

ウェブに載ってる小さい画像しか見たことないです…。
でも、
現代語に翻訳されたそれよりも、
当時の書き方そのままの素朴な文面のほうが、
確実に胸を打つものがありますよね。
Commented by あい at 2004-11-16 14:40 x
>路傍のかっきーさん

新札、全部手にしましたが…
樋口さんが一番のっぺりしているような。

Commented by shinobu_kaki at 2004-11-16 14:48
>あいさんの石

そうですか、樋口さんがいちばん…。

本人が生きていたら、
「あたいの顔、こんなんじゃないしー」と、
ハスッパな口調でダメ出しされたりしてね。

ユーゾーと言えばロボーのアレですな。
これしかないのかってくらいに、アレです。
Commented at 2004-11-16 16:01 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2004-11-16 16:01 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by shinobu_kaki | 2004-11-16 13:05 | 言葉は踊る。 | Trackback | Comments(10)

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