井上雄彦「逆算の生」

「君は恐くないの山内君
 
 あと数年で死ぬって分かってて…どうしてそんなに強くいられるの」


「…戸川君、ジェットコースターに乗ったことある? 

 あれって実際乗ってる時間はほんの何分かでしょ?

 だからってあれに乗ってる最中に

 あと何分しかない あと何秒で終わっちゃうって

 そんなことばかり考えてたら

 何のために乗ったかわかんないよね

 
 何のために生まれてきたかわかんないじゃん

 そんなヒマないよ」



 井上雄彦「リアル」第4巻より




かつて、「死から逆算して生きたい」と思ったことが何度もある。
「人間はすべて生まれながらの死刑囚」といったシニカルな言葉もあるように、
永遠に生きる人など誰もいないのだから、
余命を知ってしまった人が残りの時間を大事にするように、
健常な自分もそんなふうに生きていくことは可能なはずだと思っていた。
でもおそらく、今、そんなふうには生きられていない。
足りないものは実感なのだろう。もっといえば想像力。
「if」を、よりくっきりとした現実的な可能性のひとつとして
捕らえられるかどうかだ。

もちろんそれは、「生を焦る」「生き急ぐ」ということではない。
走り抜けることは悪くない。
今の自分を、自分の時間を、自分のすることを、自分の愛するものを、
ちゃんと見て、この手で触って、可能な限り大事にすること。
考えること。粗末にしないこと。
「後悔したくない」とはみんな思うことだが、
100%後悔なし、というのはきっとありえない。
自分のすることを愛すればこそ、
そして大事なものを残して逝くことになればこそ、
「もっと」という後悔はおそらく絶対についてまわる。
だから、必要なのは、覚悟だ。

「本気で」というのが大事だし、「精一杯」というのが肝心だし、
「前へ」という意識が必要だ。
いわゆる「愚痴」と言われるもの、「人と比べて云々」であるとか、
「人のすることが」どうこう、「人の言うことに」右往左往…、
そんなことに捕らわれている時間というのは実にもったいない。

誰にとってもきっと、本当は、そんなヒマないのだ。
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Tracked from パンがないから、お菓子を.. at 2004-11-22 18:43
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Commented by junco at 2004-11-20 16:53 x
初めまして。juncoといいます。

>誰にとってもきっと、本当は、そんなヒマないのだ。

何だかしみました。そして、しみたっていう気持ちを忘れたくないなと思いました。
良い記事を読めて良かったです。ありがとうございました♪
Commented by みさ at 2004-11-20 22:35 x
やっと週末です。
うれしいです。

2年ぐらい前に忙しくて
通えなくなったヨガをまた
はじめることにして、今日で2回目。
スッキリして、気持ちいい~。

ミスチルの桜井くんがBank Band名義で
歌った中島みゆきの「糸」
とてもよかったです。

 縦の糸はあなた 横の糸は私
 逢うべき糸に 出逢えることを
 人は 仕合わせと呼びます
Commented by ユウイチロー at 2004-11-21 02:48 x
どうも(笑)
とにかく生きてるうちにいろんなことをしてみたい。いろんな人と会ってみたい。その気持ちが強いです。
人見知りする性質で初対面の人が大勢いる場って本当言うとすごく苦手なのですが、なんでもやってみたい!という好奇心が僕を後押ししています。

Commented by shinobu_kaki at 2004-11-22 11:05
>juncoさん

いらっしゃいませ。
みかちのとこでお見かけしてます。
こちらでははじめまして、ですね。

毎日いろんなものを見たり読んだりすると、
忘れていたものをふと思いだしたりします。
忘れることは悪くはないというか、
忘れなければやっていけない部分はあるけれども、
自分にとって大事と思うものは
なるべく忘れたくないと思っています。

僕が「しみた」気持ちを分かっていただいた気がして、
こちらも嬉しく思いました。

ぜひ、また遊びに来てくださいね。
Commented by shinobu_kaki at 2004-11-22 11:10
>みささん

ヨガ、僕の周りでも始めた人が何人かいます。
本当にすっきりするらしいですね。
身体に気持ちがいいことをするのって大事ですよね。
僕も週末、ジムで走ってきました。
汗をかくと、気持ちがちょっと浄化されるような気がします。

Bank Bandって、
桜井氏も参加してるんですね。知らなかったな。

>逢うべき糸に 出逢えることを

「くるみ」でも書かれていたモチーフですね。
アルバム「シフクノオト」を創ったときのインタビューで、
「くるみ」の「掛け違えたボタンホール」の部分の歌詞、
桜井氏本人が、
ここしばらく書いた曲の中でも凄く気に入っている、
そういう話を読みました。彼の今のテーマなのかも。
Commented by shinobu_kaki at 2004-11-22 11:14
>ホ…ユウイチローさん

どうもです(笑)
僕も以前、人が大勢いる場ってすごく苦手で。
(今でも得意ではないですが)
それでもユウイチローさん言うところの好奇心、
それがかろうじて勝っている状態だから人に会えるのだと思います。

人に会うと何かが起きます。
それは時にはストレスだけれども、会わないと何かは起きません。
いい人に会えるのは幸運だと思います。
そこに賭けている、そんな気持ちでいます。

しかしユウイチローさん、スーツ似合いますよね(笑)
Commented by あちゃ at 2004-11-22 13:27 x
>誰にとってもきっと、本当は、そんなヒマないのだ。
そうだなって思いました。

僕、「一生懸命頑張る」ってことばが、大嫌いだったのですけど、最近は、いいかなって思うようになってきました。一生懸命頑張るってことは当たり前だとおもっていたし、やるべき事を、一生懸命頑張るっていう人多かったから。でも、本当の意味で。一所懸命頑張るって使ってる方もいるから(一所懸命の方が好きです。←ひねくれ者)、いいかなって。

あーでも、糸井さんの影響でしょうか、一生懸命よりも、精一杯って言葉が好きですね。
Commented by shinobu_kaki at 2004-11-22 13:54
>あちゃくん

>「一生懸命頑張る」ってことばが、大嫌い
>一生懸命頑張るってことは当たり前

あちゃくんは言葉に対して真摯なんですよね。
一「所」懸命、「領地を死守する」みたいな意味で、
もともとの言葉はこちらだったようだし、いいのでは(笑)

精一杯。
「一所懸命」よりも「自分の身の丈に見合った」という
虚偽でない感じがしますね。
「懸命」って字のまま「命を懸ける」だし、
ちょっとカラッ滑りな感じもする。
Commented by あちゃ at 2004-11-22 15:56 x
この記事いいなぁっておもったので、僕のブログで紹介させて貰いました。
Commented by shinobu_kaki at 2004-11-22 16:06
>あちゃくん

トラバありがとう、こちらも返してみました。
今日は「あちゃくん祭り」ですね(笑)
Commented by えいこ at 2004-11-22 18:49 x
コメントしようとしたらすごく長くなったので、TBさせていただきました。
「生を焦る」「生き急ぐ」側の人間の気持ちとか、いろいろと。
Commented by shinobu_kaki at 2004-11-22 19:09
>えいこちゃん

トラバありがとう。
こちらもコメントさせてもらいました。

記事、すごく良かった。
そうだよね、あの年代なんだものね。
by shinobu_kaki | 2004-11-20 14:08 | 言葉は踊る。 | Trackback(2) | Comments(12)

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