内田樹「日本の教育システムの暗黙の合意」、そして年の瀬の挨拶にかえて。

いま読んでいる対談本、
内田樹と高橋源一郎の「沈む日本を愛せますか」からの引用。
コメントは内田樹のほうね。


近代日本でもっとも成功した教育システムっていうのは、
幕末の私塾なんだよ。
松下村塾とか、適塾とか、懐徳堂とかね。
全部個人が、自分の身銭を切って作って、
自分のやりたい教育を誰にも指図されずにやって、
そこから巨大なスケールの人たちが輩出されてきた。
だから、明治維新の段階では、
そういう私塾システムがどれだけ有効かっていうことは、
経験的にははっきりわかっていたはずなんだよ。
だって、元勲たち自身が全員そこの出身なんだからさ。
でも、まさにその人たちが維新後に支配者層を形成すると、
彼ら自身を育て上げたシステムを全部つぶしにかかったわけだよ。
もう「回天の英傑」なんかいらない、
これからあとは小粒なやつでいいんだ、って。
もう国家の大枠はできたから、
あとはその中でこつこつ働く秀才を育てようっていう。
(略)
スケールの大きい人間は絶対作らないというのが
日本の教育システムの暗黙の合意なんだよ。
そういう人間が出てこないように、出る釘を打ち、
イノベーションの芽をつぶし、ということをやってきた結果、
「こういう国」になったわけで。

内田樹(「沈む日本を愛せますか」より)


日本に突出した英傑が出てこないというのは構造上の問題である、
といった指摘。
この本は引用したい箇所が多いんだけど、
上記の部分が白眉というよりは今たまたま目についたのでといったところw

「整合性があって、大胆で、夢のあるビジョンを提示しなければ改革は無理」
としながらも、
今までの日本はそういう芽を時間をかけて丹念につぶしてきたのだから、
期待するのは困難でしょうということだ。
これはかなり寂しいけれど、的を射た指摘と言わざるを得ないのではないか。

でも組織体って確かにそうで、
「改革者」が現れるということは改革される主体が破壊されるわけだよね。
つまり現状を根本から変えてしまうリスクを当然冒すことになり、
そうなれば当たり前のように血が流れる。
現状の組織をキープしているヘゲモニーを握った人々が、
そんなことを願うわけもない。
彼らはぬるくゆるやかな現状維持を望んでいるはずで、
反逆の芽はとにかく危険分子として育てるわけにはいかないのだ。

そして同時に、近代国家としての日本の形は行き詰まり感がすごい。
小霜和也さんのブログにもあったように、
あまりにも人数の多い世代が若い世代を顧みていない。
僕はここで暴力的な衝突が起こってしかるべきというくらいな気もするのだが、
幸いそういう事件が激しく顕在化するには至っていない。
もちろんそんな暴力を肯定する気もないけれど。


とまあとりとめもなく書いてきて、いよいよ明日は大晦日である。
いろいろなことがありすぎて、正直2011年はもういいよという感じだ。
明日は朝から帰省の運びとなるので、年内のブログはこれが最後であろう。
今年はブログに手をつけなさすぎた。
2012年はいくらなんでももう少し書こうと思っています。

そんなこんなで暮れゆく今年、どうか良いお年をお迎えください。
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by shinobu_kaki | 2011-12-30 22:24 | 言葉は踊る。 | Trackback | Comments(0)

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