おばあさんと華。



「美しい『花』がある。『花』の美しさというものはない」小林秀雄


昨日、朝の電車に乗ったら、
にこにこと非常に良い笑顔をしたおばあさんが座っていた。

隣にはおじいさん。老夫婦というやつだ。
おばあさんは座って正面を見ながら隣のおじいさんと会話していて、
ちょうど電車に乗り込んだ僕から見ると、
おばあさんがこちらを向いて笑顔で座っている、
という見え方になったのだった。

おばあさんはおそらく70歳は過ぎているだろう。
雪のような白髪に、深く刻まれた顔のしわ。
まじまじと見たわけではないから細かい顔の造作まではわからない。
品のよい身なりをしていたな、くらいの印象だ。

でもとにかく、そのおばあさんの華のある笑顔の印象が素晴らしくて、
これは顔の造作や年齢とは関係なく「美しいなあ」と思ったのだった。


ここ数年であらためて思うのは、
そのように顔に表れる人の魅力というのは、
造作そのものよりも「表情」にあるよなあということだ。
自分が年を取ったからかもしれない。
だけどやっぱりそう思わずにはいられない実感を得ているのも確かだ。

内面と外部は(特に近代に入って)切り離して考えられがちだが、
普通に思えば完全にセパレートされているわけがない。
言わば翻訳における誤訳のようなある程度の齟齬はあろうが、
感情や意思、そして品性といった内面は基本的に表情や仕草に表出される。
それはよほどのコントロールをもってしても完全には御しえぬものであり、
また人の魅力というのはそういった、
「どうしても表れる感情の断片」にあるのではないかと思ってしまうのである。


前述のおばあさんの表情は一瞬の印象だ。
だから彼女の内面まではわかりようがない。
だが主観として思ったのは、
良い表情をした老人というのはいいなあということだ。
いい顔をした人というのは
それなりにいい思いをしてきた人生のように感じられるし、
また、願わくば自分もそうなりたいと思えるからである。



関連エントリ(電車とおばあさん繋がりで):
おばあさんが座っている私に背中を向けて立っている!!
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by shinobu_kaki | 2012-01-06 12:24 | ライフ イズ | Trackback | Comments(0)

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