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「マンガの深読み、大人読み」

マンガが好きである。
僕は小さいころから藤子不二雄で育った子供だったし、
キャラクターの似顔絵もよく描いた。
「少年ジャンプ」等を書店に行ってはいそいそと買い、
そのうちにいわゆる「箱モノ」を卒業して、
(※箱モノ…ジャンプやマガジンなど、背が分厚く閉じられているもの)
「ヤング○○」の青年誌へと移行した。
今はマンガ喫茶という便利で快適なものがあるので、
ちょっとした街歩きの休憩的に、小一時間利用したりしてる。
出没頻度としてはやっぱり恵比寿の漫喫が多いけれど、
この近辺では渋谷センター街のHMVの上の「BAGUS」が快適さでは群を抜くため、
渋谷に行った時などはちょくちょくマンガを読みに行く。
ちなみに最近お気に入りは「ヒカルの碁」。
思いっきり少年ジャンプだやね。

マンガは記号だ。
そのすぐれた伝達性ゆえに文章に比べても理解が容易であるため、
若年層つーか子供にも広く受け入れられやすい。
そのせいか「マンガは子供の読み物」という通念が、
世間一般の常識とされてきた。
いわゆる「電車でマンガを読む大人はハズカシイ」というやつだ。
確かにスーツ姿の部長然とした紳士が、
例えば「ヤングサンデー」あたりをニヤケながら読んでいたら。
ヤングサンデーならまだしも、
それが「コロコロコミック」だとしたら。
ややもすれば「なんか、ヤバイ人」として忌避されてしまうかもしれない。
目撃した人から、ていうか僕のようなやつに、
翌日のブログに記事として書かれてしまう可能性もある。
対象年齢が明らかに小学生といった漫画誌は避けたほうが無難であろう。
さて、僕はいったい何の話をしていたのでしょう。

……!(´∇`)

思いだしたので話を戻す。
マンガは子供が読むもの、という理解は正確ではない。
大人が読んでも面白い。マンガを作っているのは他でもない大人なのだ。
その制作者側は、理解力に乏しい子供を想定して作ってはいない。
そこには大人の読者の目に耐えうる作画であるとか、
映画顔負けの練られたストーリーであるとかを志向する、
レベルの高い、戦略的なオトナの仕事現場がある。
映画顔負けの、と書いたが、
マンガが映画の焼き直し的なメディアだとは思わない。
マンガにはマンガの、長い年月をかけて積み上げられた方法論があり、
マンガにしかできない表現技法もまた存在する。
映画が全てにおいてマンガに勝っているのなら、
マンガの原作に映画化した作品は、すべてマンガを超えてしかるべきなのだ。
しかしそれはなかなか上手くいかないばかりか、
原作のマンガ作品をおよそ超えられない事例ばかりが目立つ。
マンガ家というのは巨大な、素晴らしい才能なのだ。
映画化の上手くいかないケースというのは、
映画制作者が、そのマンガ家の才能に遠く及ばないことが多いからではないか。
例えば今回の「デビルマン」のようにだ。

とはいっても現代はマンガ家ひとりではなく、
編集サイドも一丸となってストーリーを、マンガを組み立てる時代だ。
大ヒットとなった「金田一少年の事件簿」や「名探偵コナン」などにおいて、
ストーリーが多数の編集者&原案者によって練られていたことは有名である。
しかしこれは、今に始まったことというわけではない。

…長くなっちゃった。どうしよう。
本題はこれからなのだが…。

まいっか。

マンガ家であり、マンガ評論家として活躍している夏目房之介氏。
夏目漱石の孫にあたり、「BSマンガ夜話」などにも出演している氏であるが、
彼の著書、彼の視点がめっぽう面白い。
最近上梓された「マンガの深読み、大人読み」
コンテンツは後ほど列挙するが、
白眉と呼んでさしつかえないのがやはり第2部、
「『あしたのジョー』&『巨人の星』徹底分析」。
作画の川崎のぼる氏は当然として、
当時の編集者、アシスタントなど周辺を攻めたインタビュー。
作家本人だけではわからない、多角的な意見がむちゃくちゃ面白い。
そう、マンガはたったひとりで作られているわけではないのだ。

この本を読み終わって、「あしたのジョー」が読みたくなった。
僕はまだこの名作を読んでいなかったのである。
というわけで本題がえらく短くなってしまったが、
マンガ読みにはとてもオススメの一冊。
もちろん夏目氏独特の、作画の変遷からの作品分析も冴え渡る。

最後にコンテンツを列記して終わろうと思う。


「マンガの深読み、大人読み」_a0022014_2040896.jpg

「マンガの深読み、大人読み」(イースト・プレス) 夏目房之介

[目次]
1部 マンガ読みの快楽
手塚治虫は生きている
鳥山明『DRAGON BALL』試論 「強さ」とはなにか?
ねこぢるのうつろな目
僕はチャーリーと同世代
浦沢直樹は若い頃から「大人」
『クレヨンしんちゃん』は正統派だ マンガにおけるませガキ論
いしいひさいちの極意
永井豪 大ゴマ使いの形而上学
マンガの未来都市 その希望と絶望
マンガと科学?
黄表紙をマンガから見る

2部『あしたのジョー』&『巨人の星』徹底分析
『巨人の星』論
『巨人の星』関係者に聞く
川崎のぼるさん(マンガ家)
高森篤子さん(原作者・梶原一騎夫人)
宮原照夫さん(連載当時「週刊少年マガジン」副編集長)
根岸勲さん/山田啓志郎さん/阿久津勝さん(担当編集者)
かざま鋭二さん(マンガ家/川崎のぼる元アシスタント)
『あしたのジョー』論
『あしたのジョー』関係者に聞く
ちばてつやさん(マンガ家)
宮原照夫さん(連載当時「週刊少年マガジン」副編集長)
古屋信吾さん/栗原良幸さん(担当編集者)

3部 海の向こうから読むマンガ
日本マンガは世界を制したか
東アジアのコミック事情と可能性 貸本マンガのルーツを求めて
日本マンガという文化
長い自註 まとめとしての「日本マンガ文化論」自評
by shinobu_kaki | 2004-12-27 20:40 | shinoBOOKS

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