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とろける焼肉「ジャンボ」

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「オモテとウラそれぞれ3秒でひっくり返してくださいね」
3秒って…ほとんど生じゃないですか?
「この肉は、それが一番美味しい焼き方なんです」

はるばるやって来たのは、江戸川区篠崎。
都営新宿線の瑞江駅で降り、タクシーで1メーターほど。
商店街のはずれにある、予約必須の焼肉店「ジャンボ」
さやさんのブログを読んで前から行きたいと思っていたのだった。

隠れた超人気店ということで、電話で予約を忘れない。
当日予約だったが、幸運にも席があるとのことだ。
電車に揺られて東京横断、肉を求める旅に出る。
土地勘のない瑞江駅、じたばたせずにタクシーを拾うが賢明だ。
運転手に「新町商店街方面」と行き先を告げるが、ひょっとしてと思い、
「焼肉屋のジャンボに行きたいんですが」
「ああ、わかりました」流石。

「はい、ここだよ。イッテラッシャイ」
瑞江のタクシーはフレンドリーだ。
狭い階段を昇ると、入口。まだ一組しか見当たらない。ガラガラの店内。
ホントにここ?
予約した旨を告げると席に通された。間違いないらしい。

店に入って驚いたことがいくつかある。
まず、メニューが極端に少ないこと。
「ロース」「カルビ」「ホルモン」など、
ごく必要最小限な肉の種類が書かれているが、
もうすこし何かあってもいいんじゃない、と思うほど少ない。
あと、酒の種類も豊富とは言いがたい。
「ビール」「ジュース」「ウーロン茶」などがあるが、
「マッコルリ」だの「焼酎」といった酒は見当たらない。
ちなみに「焼酎」はメニューに載ってないだけであって、
店内にボトルが置いてあるので頼めば出してくれる。
そしてガラガラの店内、備え付けのテレビを食い入るように眺める店主と店員。
客からの注文がなく、特に用がない時、彼らは普通にくつろいでいるのだ!
もちろんひとたび声をかければ「はいよっ」と威勢よく応対してくれるのだが、
これはなかなか新鮮だった。

注文に入る。
さやさんのとこでちらっと「レバ刺しが美味いらしい」の一文を読んでいたので、
キムチとともに手始めにさっそく頼む。
レバ刺しはにんにく醤油をたっぷりつけて頂きます。

ンマーイ!(←藤子不二雄A風に)

臭みのないレバーがするりと口に入る。
ニンニクのほのかな香りと相まって素晴らしい。

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さて、問題は肉である。
メニューが少ないというのもあるが、どのへんが美味いのか。
さやさんブログには「ザブトン」という肉はとろける美味さ、とあった。
でもそれは後にまわして、そうね、ロースから攻めてみよう。

ここで冒頭の「3秒ロース」の登場となるのだった。
いくらなんでも3秒って…。
おそるおそる3秒ずつ焼いてみる。ぜんぜん赤い。レアである。
小市民的に不安を感じ、小さく5秒とか焼いてみた。それでもまだぜんぜん赤い。
タレをちょっとつけて食べてみる。

ン、ンマーイ!!

すすすすんごく柔らかい。口の中で肉がすっと切れる感じだ。
食べて、顔色の変わったこちらを察したのか、
はたまたずっと見ていたのか(ヒマだしね)店主が声をかけてきた。
「お兄ちゃん、美味いだろう!」
うん、美味いー。すんごい柔らかいんですけど。
「でもこの肉、ウチのロースの中では一番下のクラスなんだけどな」
自慢好きの人らしい。ドーダドーダ店主なのだ。
なんというか、自分の店の肉に誇りを持っている感じである。
しかしこれで一番下とは。なんかこの店、ヤバイゾ!(←クッキングパパ風に)

ガラガラの店内に、時をおいて何度か客が入ってくる。
「予約されてますか?」「いえ、してませんが…」
すみませんが、週末はもう予約でいっぱいでして、申し訳ございません。
見渡す限りガラガラだが、見えない客で満席の店内。
なんとも不思議な光景なのだ。

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じゅうじゅう焼くとクルリと丸くなる、コリコリしたホルモンを食べていると、
先に来ていた客が帰るところで、店主と言葉を交わしているのが聞こえた。
「いやー、今日の肉は凄かったねー。
今までザブトンが一番だと思ったけど、こっちのほうが凄いかもわからん」
「そうだろう!あれはなかなか入らない肉なんだよな。今日はラッキーだよ、ワハハ」
耳をダンボにして聞いていると、肉の名前は「カイノミ」というらしかった。
さっそくインプットをする。カイノミ、カイノミ、カイノミ…。

そうなると行動は早い。「カイノミください」
カイノミというのはバラ肉の一部で、少し霜降りになった非常にやわらかい肉。
「貝の身」に似ているからカイノミ。本日のラッキー肉。
これ、時間は?「3秒です」

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さっとあぶるようにして口へ運ぶ。
もう、なんか、あれですね、あまりに美味しい肉だと、
一枚一枚食べるごとに「儀式」のような。
喋ったりだとか他のアクションを一切休止して、
肉を焼いて食べるという行為に集中してしまうのだった。
そのカイノミ。

…ン、ン、ン、ンマーイ!!

トト、トケルー!!

脳内の辞書変換機能が壊れるかと思いました。
とにかく柔らかくて、じゅわっとしていて、かといってしつこくなく、
とにかく「とろける」。
口の中に含んだカタマリがみるみる小さくなるような。

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ドーダドーダ店主もこれは特に自信があるのか、
テーブルまでやって来て「美味いだろう!」と自慢するのだった。
もう大変ですよ、とワケのわからない感想が出てしまう。
でも本当に大変なのだ。とろける肉とはこういう肉を言うのだ。

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途中で頼んだテグタンも美味く、
正直もうお腹と気持ちが満足感でいっぱいで、
当初の狙いであった「ザブトン」まで行き着かなかった。
しかし、前の客がこぼした「ザブトンよりもカイノミ」という言葉に拠って、
今日はラッキー肉であるカイノミを最上としておくのだ。

後日(というか今日)知ったのだが、
行き慣れている人はメニューなど見ずに、
今日のオススメをお任せで出してもらうそうだ。
そのほうがよっぽど良い肉にありつけるらしい。
メニューがそっけない理由はここにあったのだった。

帰り、店の人が「すぐ拾えますよ」と言ったタクシーはなかなか来ない。
土地勘もない街、寒空に途方に暮れていると、
たまたま通りがかったおじさんが、帰るついでに駅まで送ってくれるという。
サザエさんに出てくるみたいな、白い札のついた帽子をかぶった八百屋さん。
ふってわいた厚意に甘えることにする。
やっぱりあそこの肉を食べに来たのか、すごい人気だからね…。
さっき食べた肉の詰まったお腹を抱えて座る助手席、
夜の川沿いの道を八百屋のトラックはゴトゴト駆けていったのだった。



焼肉ジャンボ
住所:東京都江戸川区篠崎4-13-19
TEL:03-3679-8929(ヤキニク)
定休日:火曜日
営業時間:17時〜24時
by shinobu_kaki | 2005-01-17 12:43 | 最初の一皿、最後の一杯

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by Shinobu_kaki
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