夏の最後の蝉爆弾。


雨の日曜日、夕方。
折からの厚い雲は時間の感覚すら覆い隠すようだった。

ふと、リビングの窓に何かが当たった気がした。
茶色い落ち葉のようなもの。
ただ動きの鋭さから、それが落ち葉ではないのだろうと思われた。
リビングの窓から娘とベランダを覗き込む。

蝉であった。

ここのところ、蝉爆弾もすっかりなりを潜めていたので安心していたが、
久しぶりに蝉が身のまわりに姿を表したわけであった。

細長い棒状のものを見つけ、仰向けに倒れた蝉をつついてみる。
少し、動いた。
死んではいない。ただ、相当に動きは鈍い。
もう瀕死の状態だろうな、と思った。
棒を蝉の身体に沿わせると、手というのか足というのか、
もぞもぞとしがみつくようにする。
なんとなく愛おしくなって、強く払う様なことはせずに、
なるべく棒にしがみつかせることはできないだろうかと考えた。
弱った蝉は、溺れた者が見えない水中で必死につかまるものを探すように、
一生懸命に棒にばたばたと足を絡ませる。

つかまれ、ほらつかまれ。

思わず声を掛けたくなる様ながんばりを見せる、蝉。
やがて蝉はしっかりと棒にしがみついた。
よし、よし。

僕はそのままベランダから外へ放るつもりで棒を外に伸ばした。
その瞬間、蝉はにわかに飛び立ち、
先ほどまでの弱った姿が嘘のように、
ベランダからまっすぐ離れるようにして力強く飛び去って行った。

僕はしばらくその軌跡を呆然と眺めていた。
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by shinobu_kaki | 2013-09-08 17:49 | ライフ イズ | Trackback | Comments(0)

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