創作における「優しさ」について。

対立のないお話を予定調和という。
予定調和のお話では、周りの登場人物がそろって主人公を応援し、
主人公は目的に向かって一直線に突き進む。
予定調和の別名をご都合主義とも言う。

シナリオ創作初期の頃は往々にしてこの予定調和に陥る。
そして悪いことに、予定調和に陥っていることにすら気がつかない。
予定調和に陥らないためには障害を作り出すしかないのだが、
障害を作り出すことは主人公をいじめることにつながり、
普通の神経をしていれば、これは楽しい作業ではない。
創作初期の人が予定調和に陥りやすいのは、
思い入れのある主人公をいじめたくないという優しさも一因になっている。
仮にいじめたとしても手加減をする。
気持ちはよく分かるが、しかしそれではドラマにならない。
心を鬼にしてでも障害を作ってやる。

ついでに言えば、主人公の邪魔をすることができないからと言って、
それはあなたが優しい人であることを意味しない。
むしろ反対である可能性もある。
障害を作りだすことは悪しき条件を作り出すこと。
悪しき条件が作り出せない原因に、悪しき条件、
言い換えれば「悪の世界」を知らない場合も含まれる。
もしそうであるなら、それは汚い世界(=否定的世界)に
目を閉じてきた結果であって世の中を一面からしか見てこなかった証になる。
そのような人に善の本当の意味が分かっているかと言えばかなり疑わしい。

新田晴彦「シナリオの書き方」(スクリーンプレイ出版)より
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Commented by TMZ at 2005-07-29 02:33 x
論点は異なるかも知れませんが、クリエイターとして同感する節がありますね。
個人としては、ONについてもOFFについても、レールが敷かれた予定調和ではなく、意外性を与えることを意識して行動することを心がけています。
Commented by わさ at 2005-07-29 13:48 x
なんか、仕事の話に置き換えながら読んでしまいました。。
つい最近ロジカルシンキングの研修を受けたせいなのか?!

とりあえず、一見問題の内容に見えるシナリオの中に穴、穴をつくことができるかどうか。
それって創るってことなのかしらー。とか。
Commented by shinobu_kaki at 2005-07-29 21:40
>TMZさん

どっか破綻は必要ですよね。
「退屈」は最悪ですから。

制作物においては、ものにもよりますが、
「固めすぎないで、どこか一箇所はずす」
ということが大事だとおもっとります。
Commented by shinobu_kaki at 2005-07-29 21:40
>わさり

つうか、その、
「ロジカルシンキングの研修」というのに
興味津々です。
by shinobu_kaki | 2005-07-28 20:58 | 言葉は踊る。 | Trackback | Comments(4)

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