喪失の国・日本〜インド・エリートビジネスマンの「日本体験記」

今、通勤の時間に文庫でコレを読んでいる。

喪失の国・日本〜インド・エリートビジネスマンの「日本体験記」

編・訳者は日本人の山田和。
序文において山田氏はこう記す。「九億五千万分の一の確率の出会い」。
ニューデリーの本屋で見つけたヒンディー語で綴られた手製本。
そしてラージャスターンにて偶然出会ったのはその著者、シャルマ氏であった。
人口九億五千万人(当時?)のインドにおける奇跡的な邂逅であるという。
M.K.シャルマ。インドカースト最上級であるバラモンの家柄に生まれ、
エリートビジネスマンとして日本に滞在、そこで感じたあらゆる「文化的違和」。
「信頼が先行する、クシャトリヤ(武士)の国」と日本を定義づけている。

「(空港内の銀行で両替した)日本円はすべて紙の帯封でとめられ、
ホッチキスでとめられていないのはおどろきだった。
間から抜こうと思えば抜ける。誰もそういうことをしないのだろうか」

「日本では、請求書に悪意の数字がひとつもなく、
隙があればつけこむという邪心もなく、したがって、
あくせくした議論の必要がない。安全な国だと聞いていたが、
これは本当におどろくべきことだ。自分の荷物を置いたまま
傍を離れるという光景は、私にはとくに信じがたかった」

こういった具合である。まだ3分の1しか読んでいないが、本当に面白い。
しかし、ここまで読んだだけではあるが感じたことがある。

面白すぎるのだ。

この本はつまり、比較文化論について書かれたものである。
序文にあるように、初めて日本を訪れるインド人が感じた差異を、
つれづれなるままに綴っている、という前提である。
しかしそれにしてはあまりにも日本文化に精通しすぎている。
日本に詳しすぎるのである。微妙なニュアンスをあまりに的確に拾っている。
流麗かつ饒舌な筆致が逆に疑惑を誘うのである。

初めて日本に来たインド人の手記、ではなく、
インドに詳しい日本人の展開する異文化論、であればどうにか合点がいく。
これは怪しい。怪しいというか、確信をもって言える気がする。

この本は、フィクションではないだろうか。

シャルマ氏というのは山田氏の創作になる人物であり、実在しない。
氏の生まれ育った日本を、インド文化という鏡に写して記した…、
そういうカラクリであればちょうど良い気がする。
非難しているわけではなく、それくらい読み応えがあって面白いということです。
まあ、疑ってはいるわけだが(笑)

残り3分の2を読むのが本当に楽しみである。

「私たちはホテルの前からタクシーに乗り、
官庁街に隣接している『アカサカ』へ向かった。そこは政治家や企業が
接待に使う料亭やバーがひしめいている特別なところだという」

こんなくだりが出てくるのだが、読んで何かを思い出した。
そう、自分が昔に書いたコレです。→「雪国」
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Commented by kuro at 2006-01-12 00:45 x
面白そう。
内容的にも、そのフィクションかどうか、というのも。

と思っていろいろぐぐってみたら、
出版当初にいろいろ論議になったみたいね。
「第2の「ベンダサン」論争 インド人の「日本論」 訳者の自作自演か」
(産経新聞東京朝刊 2001.06.03)<日経テレコンより
あと、2ちゃん過去ログに記事内容も載ってますた。

その中で、疑問に思われる点がいくつか書いてあんだけど、
「インドの読者向けではなく、日本の読者向けに書かれている」
ってあるけど、そんな感じ?

まぁでも、面白いものは面白いで良いと思うが。
「ここがヘンだよ」の集大成的なモノとして。

今度探してみよ。
Commented by madameorange at 2006-01-12 01:27
この本、知人に3-4年前に激しく薦められて以来ずーっと読もうと思いつつまだ読んでいなかったものです!(びっくりして思わずコメント)
やっぱり面白いんですね。しかも文庫本になっているのはうれしいな。
私も近いうちに読んでみます。
インド人恐るべし・・・と思うことホント多いですし、嘘っぽくても(!?)そこがまた興味あります。
Commented at 2006-01-12 02:44
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by いづみ at 2006-01-12 11:28 x
>「(空港内の銀行で両替した)日本円はすべて紙の帯封でとめられ、
>ホッチキスでとめられていないのはおどろきだった。
>間から抜こうと思えば抜ける。誰もそういうことをしないのだろうか」

インドの空港内で両替する時は、必ず金額を確認する必要があると言われてるから、このズボラな私もいちいち枚数数えた記憶が。
2週間くらいの旅行だと、そういうのもいちいち楽しいけど長期で住むと疲れる国だと思う。

インドで居心地よく思えたのは、自分が痩せてて色白に思えたこと(今より実際痩せてたんだけど)。
インド女性は皆恰幅いいからね。それが美人の条件てのもあるけど。


Commented by shinobu_kaki at 2006-01-12 11:39
>クロさん

>「第2の「ベンダサン」論争 インド人の「日本論」 訳者の自作自演か」
(産経新聞東京朝刊 2001.06.03)<日経テレコンより

あわわ…なんか大ごとですな。

>「インドの読者向けではなく、日本の読者向けに書かれている」

そんな感じ、だと思うけれども、
僕は「インド人としての視点」をまるきり持っていないので、
なんともいえないのが正直なところ。

いや、もし自演だとしても、これだけ微細な比較というのは、
もう十分に面白い。
フィクションならフィクションとして、成立するものだと思うけれども、
そうしなかったのは事実だからなのか?

でも、一読をお勧めします。
Commented by shinobu_kaki at 2006-01-12 11:45
>madameorangeさん

ども。
ヨーロッパのメジャー国というのではなく、
「インド」というあたりが味わい深くていい感じです。

激しく薦める知人の方の気持ちがわかるかも…。
というか僕もこの場で記事にして、
すでに激しく薦めているという(笑)
Commented by shinobu_kaki at 2006-01-12 11:45
>鍵さま

ええと…あー、メールします。
Commented by shinobu_kaki at 2006-01-12 11:50
>いづみ

>長期で住むと疲れる国だと思う。

タイの料金値引き交渉とかもそうなのかもね。
最初はやり取り自体がなかなか楽しいのだが。

信用できない、と言えばそうなんだけど、
逆に責任は自分にあるという部分がとてもクリアであるとも言える…
本の中にあったのが、
「自分の過失で落としたものをあきらめずに、
警察に届けを出すというのも考えられない」といった感覚。
日本だと当然みたいに思ってしまうけれど、
人の「善意」を信じているというか…
同時に、どこに責任があるのかという意味では
とてもあいまいな構造なのかもしれない。
Commented by colorcube at 2006-01-12 13:04
おくればせながら、『あ、この話題いいね』と。

いまの日本は日本である事の自覚が不足しすぎております(気がします)。
kuroさんあたりそのへんリアルに体感されてるんだろうと察しますけどね(風)。
この本ってそういうことなのでしょうか?
Commented by シノブ at 2006-01-12 16:06 x
>colorcubeさん

他文化を意識するということは、
自らの文化を認識することですから、
そーゆー本かと言えばそうなのかもです。

くろさんは、住んで、
しかも仕事までしていたわけですから、
経験としてはかなりリアルでしょうねえ。
本書いてホスイ…
Commented by colorcube at 2006-01-12 18:28
>本書いてホスイ…
カレナラ、カケルハズ。
アナタモカケル、マチガイナクカケル。
Commented by kuro at 2006-01-12 19:12 x
いや、
本は書けないっすよ。ぼくは>いしさま、今年もよろしく
>シノブ氏は間違いなく書けましょうぞ。(変な語尾)

んー、何かあったかなぁ、と考てとりあえず思いついたのは、
香港人にとっては、日本人がこれだけじゃんじゃか生命保険とか掛けるのは、
ちょと違和感あるかも、と。
昔、向こうで保険屋さん(日本人)が、
「いんやもう、こっちの人に保険の勧誘の話しにいくと、
 『がうちょぁーっ(広東語間投詞)、そんな自分が死んだ後のハナシなんか聞きたくないっ、
 生きてるうちにどれだけ成功して(金儲けて)幸せに暮らすか、が全て。
 縁起でもないから止めてくれっ』ってって、話もろくすっぽ聞いちゃくれないんすよ」
って言ってたなぁ、と。

あと、香港人、とにかく矢鱈滅多ラ、冷房の温度設定が低い(下手すると10℃以下とか)。
でんこちゃんも寒さと怒りで震えること間違いなしなのですが、
香港人曰く「冷たい空気は新鮮である(生暖かい空気はよどんでいる)」と
みんな子供の頃から叩き込まれてるんだ、と。

バンコクは。 んー。
Commented by shinobu_kaki at 2006-01-13 18:35
>あずさ2号さまたち

本…ほめ殺し?(←懐かしいね) 
大人ってやあねえ(笑)

>そんな自分が死んだ後のハナシなんか聞きたくないっ、
>生きてるうちにどれだけ成功して(金儲けて)幸せに暮らすか、が全て。

なんか香港人に共感したッス。
でも、

>冷房の温度設定が低い(下手すると10℃以下とか)。

やっぱ香港には住めないと思ったッス…。
Commented by colorcube at 2006-01-13 18:58
保険の話めちゃリアリティー!
貯蓄意識無いしね、彼ら。ばんばん使っちゃう。
だから貧乏臭い服装のひとは貧乏だと断定するところあり。
ぼくはそう見られた(涙)
あ、話それました?
Commented by shinobu_kaki at 2006-01-14 16:31
>いしさん

>だから貧乏臭い服装のひとは貧乏だと断定するところあり。

うーむ…シンプルというかなんというか。
分かりやすい世界ですな。
by shinobu_kaki | 2006-01-11 23:30 | shinoBOOKS | Trackback | Comments(15)

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