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松本隆「歌うこととそのバックグラウンド」

 昔の多くの歌詞は花鳥風月を美しいと褒め称えていたり、
失恋したから悲しくて泣いていたりとか、
そんな単純なものばかりなのが不満だった。
もちろんそれでも同情で泣けるんだけど、
そこからどうやって立ち直るかとか、
凹んでもそれでも「生きたい」と思ったり、
人を傷つけてしまったけど傷つけた方も痛かったりとか、
人間はもっと複雑な生き物だと思う。
そういう複雑な人間をリアルに描きたい。

 でもそれを歌うのがアイドルだと、
人間的にまだ成熟していないので、あまり複雑なことは歌えない。
だからサビの部分はインパクトのある言葉を使って、
フレッシュさで押してしまったりする。
しかも長さは2分半という制約があった。
僕が歌謡界に入ったばかりの頃はそんな仕事ばかりしていた。

松本隆(作詞家)


今日のAVANTIより。
全体的にはちょっと主旨の違う発言ではあるけれども。

歌に限らず、ある言葉を人が発する時に問われる一つの要素として、
「説得力」がある。
つまり言っている内容に見合った「人物」かどうかが問われる。
そこに乖離というか、似合わなさがあると途端に人にはバレてしまう。
上記の松本隆の言に沿えば、
「未成熟なアイドルに複雑な人間像は歌えない」のである。
これはちょっと示唆的だよね。
言葉は一種、その人そのものであると思うけれども、
借り物の言葉というのは通用しない、ということだ。

ちなみにスポーツ選手でもなんでも、
一流の人の発言というのは総じて、実を伴って聞こえる。
つまり彼らは「自分の言葉」を獲得していると言えるだろう。
逆に言えば、自分の言葉を獲得した瞬間が、
その人が一流になった瞬間なのである。
さっき「言葉は人そのもの」と言ったのはそういうことだ。
by shinobu_kaki | 2006-05-27 21:35 | 言葉は踊る。

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by Shinobu_kaki
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