映画「蠅の王」、そしてワールドカップ。

中上健次の小説の作中にも登場してくる、
ここのところにわかに気になっていた「蠅の王」。
有名なのはもちろんウィリアム・ゴールディングの小説なのだが、
TSUTAYA DISCASで映画のほうを借りてみた。
監督ハリーフック。1990年の作品。

陸軍学校の生徒達を乗せた飛行機が太平洋上に墜落した。
海に投げ出された24人の子供達はゴムボートでなんとか島にたどり着く。
しかしそこは無人の孤島、救助される望みはない。
リーダー・ラルフのもと、少年達は協力して火を起こしたり、
木の実を採ったりして生き延びるためにひとつになって行動する。
しかしそれも初めだけだった。
ある時、島に野豚がいることを発見した少年達の何人かは、
ジャックを頭とする狩猟隊として木を削った手製の槍を持つようになる。
武器を手にしたことでその心に攻撃性が芽生えたかのように、
彼らはどこかの原住民のようなペインティングを顔に施し、
秩序派であるラルフのもとから独立しやがて敵対するようになっていく。
ジャック達は狩猟で得た豚の肉を餌に、ラルフのもとにいた少年達を引き込む。
移ろいやすい意志しか持たない少年達はまるで集合的自意識のようだ。
徐々に膨れ上がったジャックの一派はたき火を囲んで一種の興奮状態に陥る。
そこで悲劇が起こる。それはあってはならないことだった。
しかし秩序という名の人間性をもはや失いつつあったジャック達は、
すでに恐ろしい精神領域へと足を踏み込んでいた…。

よく言われるように、「十五少年漂流記」のシチュエーションと、
「バトルロワイヤル」の狂気を併せ持った一作。
ウィリアム・ゴールディングはノーベル文学賞を受賞している大作家だ。
タイトルの「蠅の王」とは悪魔「ベルゼブブ」のこと。
ジャック達が野ブタの首を切り取り掲げ、
彼らが「怪物」と呼んだ島の闇に存在する恐怖の幻想に捧げた、
そのブタの首にはびっしりと蠅がたかり、
少年達はそれを「蠅の王」と呼んだ…と小説にはあるらしいが、
映画にはその名前はまったく登場しない(小説は未読である)。
ゆえに映画を観ただけでは「蠅の王」が何を意味するかがわからない。
だが「閉鎖された空間において、人が人間性を失う過程」というモチーフの、
これはひとつの定型・王道である。そこにこの作品の価値がある。

悲劇は続き、ラルフは孤立してしまった。
そして少年達は最後にどうなってしまうのか…?
それは本作をご覧いただきたい。
エグい描写もある。その手のものが苦手な方は注意だ。


話変わるけど、ワールドカップが始まりましたね。
いまのところ見たのはイングランド×パラグアイ、
オランダ×セルビア・モンテネグロの2戦。
イングランドもオランダも優勝を狙うチーム、慎重な滑り出し。
イングランド。ベッカムは貫禄が出たね。ルーニーが早く見たいな。
センターフォワードのクラウチ、2メートルの身長でやけに細いと思ったら、
体重がベッカムより少ない69kg!折れないか心配です。
オランダ、伝統的なスピードウイング・ロッベンがやはりいい。
ダイジェストで見たきりだが、コートジボワールのドログバ、
強いし速いし上手い驚異的な運動能力。
コートジボワールは前回のセネガルに続いてアフリカ旋風を起こすか。
アーセナルを率いる名将、アーセン・ベンゲルによると、
今回の優勝候補はブラジル、イングランド、そしてフランスだそうですが。

明日の夜はいよいよ日本の登場、相手はオーストラリア。
今の日本はいまいち読めない。相手との相性で強豪にも弱小にもなる。
博打打ち・ヒディングの策にハマってあえなく沈むのか、
それとも速いパス回しで圧倒するのか。どちらもあると思っている。
一つ言えるのは、明日は勝たねばならない、それだけだ。
対クロアチア、対ブラジル…かなわない気もするがいける気もする、
これはまったくわからない。ホントにわからない。もう観るしかない。
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Commented by sasa at 2006-06-12 08:28 x
ドラゴンヘッドのトンネルん中で、あの少年が顔にペイント始めたとき
蠅の王じゃん!って思ったよ。
Commented by colorcube at 2006-06-12 15:33
>今の日本はいまいち読めない
ほんと、ほんと(ってサッカーよくわかんないけど)

観るしか無いね、観るしか・・・

ちなみに(あの)18番では貸し切り完全予約制になるらしいね、今夜とか。(4,000円ってたかくね?)
Commented by shinobu_kaki at 2006-06-13 00:21
>ささ

ドラゴンヘッドは読んでないだよ。
ササは「蠅の王」も書籍で押さえていたんでしょうね。
Commented by shinobu_kaki at 2006-06-13 00:24
>いしし

あの狭い18番で4000円…観戦環境的にちょっとねえ…

はあ…負けましたねえ。
Commented by あい at 2006-06-13 00:24 x
> 博打打ち・ヒディングの策にハマってあえなく沈むのか、

沈んじゃいましたね…。
実は後半はのんきにコンビニに行ってました=非国民?
多分点を入れられたとき、通りまでため息が聞こえてきました。
帰ってきたら、2点入れられてた。

お昼のいいともで、SMAPの香取くんが見た試合は絶対負けないと言っていて
今日はどうするんだ、なんて言われてました。

きっと行かなかったからだ。クロアチアは行くそうです。
Commented by shinobu_kaki at 2006-06-13 00:28
>あいさん

>帰ってきたら、2点入れられてた。

コレセツナス

これ、香取観てなかったの?
ダメじゃん…クロアチア戦は来るのね?
恵比寿で観るその一戦は勝てるのね?
Commented by sasa at 2006-06-13 00:28 x
え、そうなの意外>ドラゴンヘッド


しかしニッポン後味悪~。
この後にミルコとノゲイラが待っていると思うとねえ
Commented by shinobu_kaki at 2006-06-13 00:45
モチヅキミネタローは読んでなかったりする。
そう、食わず嫌い。

5分で3失点だってよ…
川口はよかったのに…途中まで。
飛び出してゴールを開けちゃあなあ。
by shinobu_kaki | 2006-06-12 01:14 | 人生は映画とともに | Trackback | Comments(8)

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