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綺羅星と孤独の英雄。スペイン×ウクライナ観戦記

スペイン 4-0 ウクライナ

びっくりしたのは4点目である。
スペインのフォワード、フェルナンド=トーレスの得点だったのだが、
アシストをしたプジョルの動きに目を奪われた。
マルセイユ・ルーレット的な動きから左に全力ダッシュ、
そこにボールが来ると信じて…果たしてボールは彼のもとへ。
ヘッドで中央へ、そこへ高速で走り込んだトーレスがボレー。
目が覚めるほど鮮やかな得点を決めた。
特筆するべきは、アシストのプジョルはディフェンダー、
守りの選手ということだ。
彼はバルセロナでロナウジーニョのチームメイトでもある。

試合前、この組み合わせを楽しみに思ったのは、
チームカラーに鮮やかなほどの対比が見られたからだった。
自国のリーグも隆盛、次から次へと新しい才能が生まれ続けるスペイン。
ディナモ=キエフという名門クラブはあるものの、
ワールドカップは初出場、世界最高とも言われるフォワード、
アンドリュー・シェフチェンコという天才を得てやっと檜舞台に現れたウクライナ。
綺羅星のごとき才能が集うスペイン対たったひとりの英雄シェフチェンコ、
そんな構図がこの対戦には込められていたはずだった。
しかしサッカーはひとりではいかんともしがたい部分がある。
ウクライナはシェフチェンコに長いボールを入れようとするものの、
層の厚いスペインの守備を破るには至らない。
それどころか高い技術を持つスペインの中盤にボールを奪われ、
波状的な攻撃で大ピンチに陥るウクライナだった。
レバークーゼンでプレーしているという長髪の10番、
ヴォロニンだけはなかなか良かったけど。

ウクライナのようなワンマンチームは世界を見渡すと他にもある。
あのライアン・ギッグスを擁するウェールズ、
ミランのフォワード時代に欧州最優秀選手になったウェアがいたリベリア、
アヤックスで一時代を築いたリトマネンのフィンランド、
今回出場した中ではドワイト・ヨークのトリニダード・トバゴ、
イングランドのチェルシーで活躍するドログバのコートジボワール…
これらは、たったひとりの突出した圧倒的な才能を擁しながらも、
総合力で及ばない為に強豪と呼ばれるのをはばかれる、
スーパースターとその国々である。
こういう選手は個人としてクラブチームで活躍するしかない。
国の総合力が問われるワールドカップにはおよそ縁がないものなのだ。

シェフチェンコはまさにこういったタイプの選手だった。
つまり、世界を見渡しても圧倒的とすら呼べる実力を持ちながら、
その母国が弱いがために、今までワールドカップ出場を望めなかった不遇の人だ。
それが今回初めて出て来た。本人も待っただろうが何よりファンが待ちわびていた。
シェフチェンコという突出した個人がスペインに対して、どういった勝負を挑むのか…
そんなことを思いながら試合を見始めたのだが、
ちょっと総合力の差がありすぎたね。スペインは見事だった。

だが、これが最後まで続かないのがスペイン人のメンタリティでもある。
それがあるからスペインは一度も優勝していないのだ。
このままの勢いで最後まで突っ走るかというとそれは大いなる疑問だ。
スペインに覚えた印象は、みんな線が細いということだった。
サリナス以来のセンターフォワード、フェルナンド・トーレスはもとより、
エースのラウル、ルイスガルシア、セルヒオラモス、シャビアロンソ、ビジャ…
なんだかみんな細いのだ。技術はあるが力強さに欠ける。
スペインはいつもそこそこまでいくが(グループリーグ敗退もあるけど)、
今回はこの「細い」メンバーでどこまでいくのだろうか?
by shinobu_kaki | 2006-06-14 22:45 | さかー考

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