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中吊り広告比較。

電車に乗るとぶら下がってるアレ、ありますね。
そう、中吊り広告。
今日はこれらをいくつか集めてみました。
見比べるとそれぞれに性格があって面白い。



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ニューズウィーク日本版 阪急コミュニケーションズ

まず「ニューズウィーク日本版」。ジャーナリスティックなコンテンツの雑誌らしく、言葉もデザインも固めです。逆に、柔らかくする必要もないんですね。真面目な話には真面目なたたずまいが正しい。多くの文字情報を見やすく埋め尽くすという中吊りの王道にのっとったデザインと言えましょう。強いて言えばちょっとアイコンが少なすぎかな?右上の「緊急総力特集」だけですからね。アイコンがないとレイアウトに変化が出ませんが、逆にその「固さ」を狙ったのかもしれないですね。ちなみにレイアウト上部の不自然なスペースは、上からぶら下げる時に金具で挟む部分。この幅も決まっています。そこをよけてデザインするわけ。


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週刊ポスト 小学館

がらりと変わって「週刊ポスト」。いわゆるゴシップ週刊誌。色使いもぐっと派手で、なおかつ変化に富んでいます。飛ばし文字というかアイコンの数も多い。こなれている、作り慣れている感じがします。さらに左右の文字が外側に傾いており、限られた誌面の中で動きのあるデザインになっていますね。あと細かいところですが、一般的に文字がこれほど多い原稿においては助詞を小さくするというのがテクニック。例えば「住民税が10倍になった!」の「が」や「に」の部分。大事なのは「住民税」などのキーワードが目に入る事であって、助詞を小さくすればそのキーワードの文字を大きくするスペースもできる。何より見た目に変化がついて見やすくなる。だらだらとしたテキストは人はなかなか読んでくれないものなのです。


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週刊文春 文藝春秋社

さて「週刊文春」。色数が少ない事が他との差別化を生んでいます。これもひとつのスタイル。それぞれまったく同色の赤と後と緑、そして黒しか使っていません。それで誌面をきちんともたせているのはなかなか上手いという事。紙の色である白を効果的に使っているんですね。上で紹介した助詞を小さくするテクニックはここでも。「スキヤキ『を』準備『していた』」、「していた」で2段組にする、これも常道の中吊り的文字デザイン。達者です。上手いと思う。


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週刊新潮 新潮社

週刊新潮」。これについてはちょっと色々言いたい。というのは(手がけた方には申し訳ないけれども)デザインが下手すぎるのです。あまりやったことが無い人が作ってるのかな?と見るたび思っている。上の文春と比べると違いが非常に分かりやすい(色もほぼ同じだしね)。圧倒的に上手くない。もちろん中吊りはすべてびっしり埋めればいいってもんじゃないとは思います。単なる中吊りの様式美的なものかもしれないしね。にしても、週刊新潮のそれはバランスの取り方がメチャクチャ過ぎる。無意味な空きスペースが多すぎて、見ていて落ち着かないというか、ちょっと不快にすらなるのは僕がこういう職業だからでしょうか?とにかくこれはよろしくないと思う。直したい…。


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あるじゃん リクルート

ちょっと中吊りらしくない中吊り。「あるじゃん」。ロゴが下にあるところ、しっかりスペースを埋めているところが中吊りらしいけど。カラーゾーンをブロックのように使って、これはこれでキレイ。イラストとデザインが合っているし、色を使いすぎていないところもいい。よく見るとバックに色をいくつか使っているものの、文字自体は基本的に黒で統一されている。この引き算がナイス。センスがあります。ていうかリクルートの雑誌&広告はいつも出来がいい。


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pen 阪急コミュニケーションズ

あくまで落ち着いたシックな誌面。「pen」。ゆったりした写真にゆったりしたレイアウト、本誌のイメージに近いですね。これだけ写真が大きくつかえると文字に工夫を加える必要があまりない。実際、黒とピンクの2色しか使われていない。でも、全体的に寂しい感じはまったくしないでしょ?写真をメインに使えるとデザインが楽、という見本でもあります。


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フィガロ ジャポン 阪急コミュニケーションズ

対象年齢大人めの女性誌「フィガロ ジャポン」。要素が多い感じがしますが、やはり色を最小限に抑えてシックさをキープ。これは基本ですが写真と文字の色がマッチしています。考え方としては「写真の中にある色をデザインに使う事」。まあ見ればわかることですが、そうすることで印象にまとまりがでます。上の「pen」のようにあえてキーカラー(「pen」の場合ピンク)を設定することもありますけどね。ちなみに左に帯のように「フィガロ ヴォヤージュ」の告知が。これはよくやる方法です(上の「pen」でもやってますね)。この時に気をつけないといけないのは、中吊りは2つ並んで掲出されるものだということ。この帯の部分が隣にきた別の広告と混じり合ってしまって、どちらの広告についている帯告知なのかがばっと見わかりづらくなることがあります。しかも横に何が来るかなんて事前にわかりませんから、これはちょっとした賭けだと言えるでしょう。


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anan マガジンハウス

大きな文字を大胆に使用した「anan」。実物を見てないのでなんとも言えませんが、グレーの部分は銀色かな?やはりこれも色数は最小限ですね。あと人物写真を中心に出せるのは強い。デザインしやすそうです。ロゴがあって、キャッチがあって、サブ的なコピーがあって…要素の主従関係がはっきりしているとデザインはしやすいんです。なぜなら要素の優先順位を整理し、明確に効果的に伝える事が、こういったインフォメーション・デザインの本質だからです。よく見ると「!」マークがすべて斜めに。可愛いね。


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BRUTUS マガジンハウス

BRUTUS」はいつも特集を大フューチャーするというか、表紙に特集タイトルがドカーンと立てられるのが特徴。語りかけるようなコピー。書店で目立つ雑誌です。だから中吊りの作り方も、特集に寄ったものにすればいいわけです。あれこれ話題を詰め込む必要は無い。ちなみに「BRUTUS」「anan」のロゴデザインは伝説的アートディレクター、堀内誠一氏(故人)の手になるもの。未だに古びないのは凄い。


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Number 文藝春秋社

最後は「Number」。画像はワールドカップ総集編号。これだけ横に長いですね。中吊りワイド(もしくは中吊りダブル)と言われるもので、初めから横2連の長さのサイズで作られた中吊りです。気合い入れて告知したいものについてたまに使われるサイズ。2倍ですからね。そして「Number」は「BRUTUS」同様、各号のメインテーマが1つなので、このように大胆な誌面作りが可能です。そして「Number」は「スポーツグラフィック誌」と銘打つだけあって、写真がいつもとてもキレイなのです。この素材を使ってデザインできるデザイナーは幸せと言えるでしょう。


と、中吊りの色々を見てきました。
電車に乗る人にはおなじみの中吊りですが、
雑誌と言うジャンルひとつとっても、このように様々な種類があります。

当たり前ですが、中吊りは雑誌の広告であるから、
雑誌のトーン、性格、ポイントなどが雑誌のそれとブレていない、
そして離れたところからでも文字が入って目立つ事、
作る際にはそういったことが留意されます。

あと、中吊りの大きな特徴である「下にある雑誌名ロゴ」について。
たまーに「週刊ポスト」などでロゴが上にあるのも見かけますが、
やはりこれは下にあるほうが良いでしょう。
なぜなら、電車に乗って等間隔でずらり並んだ中吊りを見ると、
その奥のほうは手前の中吊りに隠されて上半分が見えないからです。
マガジンラックに置かれる雑誌は下半分が隠れてしまうため、
表紙の上半分にロゴと情報を集約すべし…というのと同じ理屈ですね。
デザインにはいつも理由があるのです。
by shinobu_kaki | 2006-07-23 10:55 | デザイナーという病

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by Shinobu_kaki
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