中吊り広告比較。

電車に乗るとぶら下がってるアレ、ありますね。
そう、中吊り広告。
今日はこれらをいくつか集めてみました。
見比べるとそれぞれに性格があって面白い。



a0022014_10525175.jpg

ニューズウィーク日本版 阪急コミュニケーションズ

まず「ニューズウィーク日本版」。ジャーナリスティックなコンテンツの雑誌らしく、言葉もデザインも固めです。逆に、柔らかくする必要もないんですね。真面目な話には真面目なたたずまいが正しい。多くの文字情報を見やすく埋め尽くすという中吊りの王道にのっとったデザインと言えましょう。強いて言えばちょっとアイコンが少なすぎかな?右上の「緊急総力特集」だけですからね。アイコンがないとレイアウトに変化が出ませんが、逆にその「固さ」を狙ったのかもしれないですね。ちなみにレイアウト上部の不自然なスペースは、上からぶら下げる時に金具で挟む部分。この幅も決まっています。そこをよけてデザインするわけ。


a0022014_10531755.jpg

週刊ポスト 小学館

がらりと変わって「週刊ポスト」。いわゆるゴシップ週刊誌。色使いもぐっと派手で、なおかつ変化に富んでいます。飛ばし文字というかアイコンの数も多い。こなれている、作り慣れている感じがします。さらに左右の文字が外側に傾いており、限られた誌面の中で動きのあるデザインになっていますね。あと細かいところですが、一般的に文字がこれほど多い原稿においては助詞を小さくするというのがテクニック。例えば「住民税が10倍になった!」の「が」や「に」の部分。大事なのは「住民税」などのキーワードが目に入る事であって、助詞を小さくすればそのキーワードの文字を大きくするスペースもできる。何より見た目に変化がついて見やすくなる。だらだらとしたテキストは人はなかなか読んでくれないものなのです。


a0022014_10533398.jpg

週刊文春 文藝春秋社

さて「週刊文春」。色数が少ない事が他との差別化を生んでいます。これもひとつのスタイル。それぞれまったく同色の赤と後と緑、そして黒しか使っていません。それで誌面をきちんともたせているのはなかなか上手いという事。紙の色である白を効果的に使っているんですね。上で紹介した助詞を小さくするテクニックはここでも。「スキヤキ『を』準備『していた』」、「していた」で2段組にする、これも常道の中吊り的文字デザイン。達者です。上手いと思う。


a0022014_10534531.jpg

週刊新潮 新潮社

週刊新潮」。これについてはちょっと色々言いたい。というのは(手がけた方には申し訳ないけれども)デザインが下手すぎるのです。あまりやったことが無い人が作ってるのかな?と見るたび思っている。上の文春と比べると違いが非常に分かりやすい(色もほぼ同じだしね)。圧倒的に上手くない。もちろん中吊りはすべてびっしり埋めればいいってもんじゃないとは思います。単なる中吊りの様式美的なものかもしれないしね。にしても、週刊新潮のそれはバランスの取り方がメチャクチャ過ぎる。無意味な空きスペースが多すぎて、見ていて落ち着かないというか、ちょっと不快にすらなるのは僕がこういう職業だからでしょうか?とにかくこれはよろしくないと思う。直したい…。


a0022014_1054372.jpg

あるじゃん リクルート

ちょっと中吊りらしくない中吊り。「あるじゃん」。ロゴが下にあるところ、しっかりスペースを埋めているところが中吊りらしいけど。カラーゾーンをブロックのように使って、これはこれでキレイ。イラストとデザインが合っているし、色を使いすぎていないところもいい。よく見るとバックに色をいくつか使っているものの、文字自体は基本的に黒で統一されている。この引き算がナイス。センスがあります。ていうかリクルートの雑誌&広告はいつも出来がいい。


a0022014_10542318.jpg

pen 阪急コミュニケーションズ

あくまで落ち着いたシックな誌面。「pen」。ゆったりした写真にゆったりしたレイアウト、本誌のイメージに近いですね。これだけ写真が大きくつかえると文字に工夫を加える必要があまりない。実際、黒とピンクの2色しか使われていない。でも、全体的に寂しい感じはまったくしないでしょ?写真をメインに使えるとデザインが楽、という見本でもあります。


a0022014_10543646.jpg

フィガロ ジャポン 阪急コミュニケーションズ

対象年齢大人めの女性誌「フィガロ ジャポン」。要素が多い感じがしますが、やはり色を最小限に抑えてシックさをキープ。これは基本ですが写真と文字の色がマッチしています。考え方としては「写真の中にある色をデザインに使う事」。まあ見ればわかることですが、そうすることで印象にまとまりがでます。上の「pen」のようにあえてキーカラー(「pen」の場合ピンク)を設定することもありますけどね。ちなみに左に帯のように「フィガロ ヴォヤージュ」の告知が。これはよくやる方法です(上の「pen」でもやってますね)。この時に気をつけないといけないのは、中吊りは2つ並んで掲出されるものだということ。この帯の部分が隣にきた別の広告と混じり合ってしまって、どちらの広告についている帯告知なのかがばっと見わかりづらくなることがあります。しかも横に何が来るかなんて事前にわかりませんから、これはちょっとした賭けだと言えるでしょう。


a0022014_10545886.jpg

anan マガジンハウス

大きな文字を大胆に使用した「anan」。実物を見てないのでなんとも言えませんが、グレーの部分は銀色かな?やはりこれも色数は最小限ですね。あと人物写真を中心に出せるのは強い。デザインしやすそうです。ロゴがあって、キャッチがあって、サブ的なコピーがあって…要素の主従関係がはっきりしているとデザインはしやすいんです。なぜなら要素の優先順位を整理し、明確に効果的に伝える事が、こういったインフォメーション・デザインの本質だからです。よく見ると「!」マークがすべて斜めに。可愛いね。


a0022014_10551656.jpg

BRUTUS マガジンハウス

BRUTUS」はいつも特集を大フューチャーするというか、表紙に特集タイトルがドカーンと立てられるのが特徴。語りかけるようなコピー。書店で目立つ雑誌です。だから中吊りの作り方も、特集に寄ったものにすればいいわけです。あれこれ話題を詰め込む必要は無い。ちなみに「BRUTUS」「anan」のロゴデザインは伝説的アートディレクター、堀内誠一氏(故人)の手になるもの。未だに古びないのは凄い。


a0022014_1055348.jpg

Number 文藝春秋社

最後は「Number」。画像はワールドカップ総集編号。これだけ横に長いですね。中吊りワイド(もしくは中吊りダブル)と言われるもので、初めから横2連の長さのサイズで作られた中吊りです。気合い入れて告知したいものについてたまに使われるサイズ。2倍ですからね。そして「Number」は「BRUTUS」同様、各号のメインテーマが1つなので、このように大胆な誌面作りが可能です。そして「Number」は「スポーツグラフィック誌」と銘打つだけあって、写真がいつもとてもキレイなのです。この素材を使ってデザインできるデザイナーは幸せと言えるでしょう。


と、中吊りの色々を見てきました。
電車に乗る人にはおなじみの中吊りですが、
雑誌と言うジャンルひとつとっても、このように様々な種類があります。

当たり前ですが、中吊りは雑誌の広告であるから、
雑誌のトーン、性格、ポイントなどが雑誌のそれとブレていない、
そして離れたところからでも文字が入って目立つ事、
作る際にはそういったことが留意されます。

あと、中吊りの大きな特徴である「下にある雑誌名ロゴ」について。
たまーに「週刊ポスト」などでロゴが上にあるのも見かけますが、
やはりこれは下にあるほうが良いでしょう。
なぜなら、電車に乗って等間隔でずらり並んだ中吊りを見ると、
その奥のほうは手前の中吊りに隠されて上半分が見えないからです。
マガジンラックに置かれる雑誌は下半分が隠れてしまうため、
表紙の上半分にロゴと情報を集約すべし…というのと同じ理屈ですね。
デザインにはいつも理由があるのです。
トラックバックURL : http://kakiwo.exblog.jp/tb/3998524
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by 李花 at 2006-07-23 21:32 x
おもしろいですね。さすがその道のシノブさんの考察。
コンサートのチラシなどもいろんなのがありますが
レイアウトやロゴってちょっとしたことで印象がガラっと変わってしまうものですね。
Commented by ayano at 2006-07-24 09:50 x
ためになりやした。
Commented by COLORCUBE at 2006-07-24 11:58
ほほ〜〜〜!
そういうお仕事なのね。ってあらためておもったすよw
Commented by shinobu_kaki at 2006-07-24 14:44
>李花さん

電車の中でも飽きないです、こういうこと考えてると。
でも色々と思うことありすぎると、ちょっとストレスフルでもあります(笑)
Commented by shinobu_kaki at 2006-07-24 14:44
>あやーの

おそまつさまっした。
Commented by shinobu_kaki at 2006-07-24 14:45
>いしさん

こういう仕事なのでございますよ。はい。
Commented by kuro at 2006-07-24 20:29 x
んー、
『週刊新潮』については、やや異論が。
デザインが優れていないことはその通りだと思うのですが(って、あーたプロだし)、
ただもうこれはこれで、立派なブランドアイデンティティになっている、
というか。
この読みにくさ(使用フォントも含め)が、かえって何て書いてあんのか、
「読ませてしまう」というか、
写真と見出しの絶妙な食い違い加減が、「この人がそんなヤバいことをしでかした…?!」
と思わせてしまう、誤解醸成確信犯的なそのポジション取りとか、
ある意味、車内で見てて飽きない。

論調はまったく好きではないけれど。*

表紙(というかそもそも雑誌タイトル)からしてまったくもって一定しない、
読売ウィークリーとかより、相当できあがってると思います。

少なくとも、中身についての意志、主張を感じますな。
(*くり返し)。
Commented by nmnl-aya at 2006-07-24 23:33
おもしろく読ませていただきました。世の中ってデザインにあふれてますよね。逆に言えば何にでもデザインってつきもの。shinobuさんのような見解こそできませんが、私もいろんなデザインに目がいってしまう。特に自分好みの、ぐっとツボに入るデザインには感動すら覚えます。
Commented by shinobu_kaki at 2006-07-25 00:31
>くろさん

その意見、ヒジョーに興味深く頂きました。
これはこれで、という意見を求めていたのです。
なぜなら、これほどの大手のマス広告において、
誰もダメ出しをしない、その理由を知りたかったからです。

「これはこれで読ませる」という意見があるなら、
それはそれで異論はございません。

デザインって面白いねー。
その一点でございます。
Commented by shinobu_kaki at 2006-07-25 00:32
>nmnl-ayaさん

そう、世の中はデザインで出来ていますよね。
Commented by best_tieup at 2006-07-27 06:55
 いつものことながら、参考になりました。中吊りって、確かに雑誌関係が多いですよね。ところで、中吊りの効果ってどう測るものなのでしょう?それと、雑誌の中吊りは文字数が多いかと思うのですが、やっぱり中吊りは”読ませる”方がよいのですか?雑誌以外なら必ずしもそうではない・・・ということでしょうか?
Commented by shinobu_kaki at 2006-07-27 09:44
>best_tieupさん

コメントありがとうございます。
中吊りをはじめとした広告の効果というのは非常に難しいところで、
これは数字に出しづらいものですね。
例えばある日新聞で、フェアの来場告知を大々的にやったとして、
それでかなりの来場があったなら、これは効果があったといえる。
告知媒体が新聞だけだったなら、新聞広告のみの効果ですしね。
でも、雑誌は「店頭で表紙を見て買った」という人もいれば、
「毎週買ってるから今週も買う」という人もいるし、
「友達に勧められて買った」というケースもあり、千差万別。
中吊りの役割としては、
「今、この雑誌がこういう特集で出ている」ということを
世の中に知らしめる一助になればいいという話であって、
中吊りを見たから買ったかどうかは計れません。
雑誌によってはアンケートで、
「この雑誌を何でお知りになりましたか?購入のきっかけは何ですか?」
みたいに、読者の声を募る場合もありますね。

Commented by shinobu_kaki at 2006-07-27 09:44
>best_tieupさん(つづき)

中吊りが「読ませる」ほうがいいのかどうかですが、これはわかりませんね。
ただ、雑誌の魅力は「自分に興味のある特集や記事があるかどうか」
ということに尽きたりしますよね。
ならば、その内容のどれかに興味を持ってもらえるよう、
なるべく多くのコンテンツを告知してあげたい、
勢い文字が多くなっていくということではないでしょうか。
Commented by Lena at 2007-08-31 18:36 x
週刊新潮の中吊りにツッコミを入れてる人はいないのか!?と
前から気になっていたので検索したらこのページしか見つかりませんでした。
やっぱりヒドイですよねえ。
Commented by shinobu_kaki at 2007-09-02 00:08
>Lenaさん

どうも。
いや、明らかにできてないだろうコレ、と常々思っていましたので、
同意していただいて嬉しく思います。
森羅万象有象無象落ちているネットでも、
これを指摘している人って少ないのね。
それともみんな大人で、思っても言わないっていうことかなあ。
by shinobu_kaki | 2006-07-23 10:55 | デザイナーという病 | Trackback | Comments(15)

移動祝祭日


by Shinobu_kaki