夏のこと。

晴れ女、を言い換えると「高気圧ガール」になるだろうか。

もうすぐ梅雨が明ける。夏が来るのだ。
夏が暑いのは太平洋高気圧が日本列島上空に張り出すからだ。
南からの熱を含んだ空気が、上からガバーッと日本にかぶさるのである。
列島上空に大量の熱風がびゅうびゅうと吹き込む様子をイメージすると、
それだけでも夏が3割ほど暑く感じられる気がする。

子供の頃はクーラーがなかったので、暑い夜には蚊帳を吊っていた。
まるで昭和の家庭だった(まあ、実際に当時は昭和時代だったのだが)。
甚平のような寝巻きを着、花火の後には冷やした西瓜を食べ、
家中の窓を開けて夏の夜の蚊帳にもぐりこんだ。
それが田舎の小学生のいつもの夏の風景だった。
そして翌日は早起きをして、朝6時からのラジオ体操に向かう。
健康的・牧歌的な少年時代。

田舎の闇というのはまさに漆黒で、
せいぜい遠くに外灯の明かりが頼りなくあるのみだ。
手をのばしたその指先すら見えないほどの暗闇。
昼間とはまるで違う様相を呈する夏の夜は、
果てしなく深く巨大な穴が空いているような、
まるでこの世のものでもない何かが潜んでいるような、
恐ろしい想像力を膨らませるものがあった。

僕は田舎の闇が怖かった。
テレビで見た「お化け」や絵本で見た「妖怪」の存在すら思わせた。
想像力が恐怖を生む、ということを知った。
毎日見ているはずの寝床の天井のしみ、
タンスの木目ですらも何かの目に見えて恐怖した。
今思うと滑稽なのだが、その目のように見える部分に、
小さく白いテープを貼ってもらったことがある。
親にだ。自分では怖くて貼れなかったのだ。
しかしその対処法は一種強烈な違和感を生み、
むしろ違った怖さを感じさせることとなったのだった。

夏は夜、と昔の人は書いていたが、
僕の夏のイメージには確かに夜が色濃くある。
夏の朝も好きだ。暑くなるだろうと思わせる、
しかし爽やかで、まだ何も損なわれていない朝の空気が好きだった。
それを言うなら昼だって嫌いじゃない。
きっと、それほど暑くなりすぎない東北の夏というのが良かったのだ。
ひと夏でふりしぼりきる蝉の音。
ほうほうと、遠くて近いやまばとの声。

そんなわけで、僕の夏のイメージカラーは黒、
または重めのブルーである。
青というより蒼。
鬱蒼とした緑にあたたかい湿気を含みながらも、
じりじりと照りつける蒼くて黒い昼の影だ。
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Commented at 2006-07-27 00:39 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by shinobu_kaki at 2006-07-27 09:34
>鍵様

なるほど…そうですね、なんとも言いがたいところです。
なんだかんだ言っても家族ですから、
良い思い出の歴史もたくさんあるわけですしね。

※一度書きこみましたが、
鍵様のコメントへのお返事としては軽すぎたかなと思い、
ここに書き直しました。
by shinobu_kaki | 2006-07-26 17:14 | ライフ イズ | Trackback | Comments(2)

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