伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」

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伊坂幸太郎の「オーデュボンの祈り」を読んだ。

なんというか非常に荒唐無稽な話で、
と書くと実もフタもないのだけれど、
仙台沖の誰も知らない島で繰り広げられる出会いと冒険は、
「未来の見えるかかし」の存在が象徴するようにファンタジーである。
そして読み終わるのが惜しくなるほど、十分に面白かった。

伊坂幸太郎は1971年生まれだからほとんど僕と同い年である。
ネットに落ちている噂では「村上春樹に文体が似ている」
ということだったのだが、
実際に読んでみると、なるほど会話は似ているところはある。
しかし伊坂は村上ほど“湿って”いない。
そういう意味ではこの2人はそれほど似ていない。

村上春樹の小説にないものは「元気」だと常々思っている、
というのは嘘で今思いついたのですけど意外に当たっている気がする。
この「オーデュボンの祈り」には後半にかけて畳み掛ける元気があった。
次々と消化される伏線があった。スピード感があった。
そして分かりづらい箇所もなかった。とても楽しめたと思う。
文庫がなぜか見つからず、書店を探しまわった甲斐はあったのだ。

それにしても本作のタイトルだが、
この内容で「オーデュボンの祈り」というのはいかがなものか。
というのは、あまり物語の根幹に「オーデュボン」は関わってこないのである。
まあ、こういうのはキャッチーで素敵なタイトルであればよくて、
そこは作家のセンスの見せ所なのだからそんなの自由なのであろう。

作品タイトルのつけ方で言えば、
藤沢周はやっぱりすごくセンスがいいと思う
(小説の中身はそれほど好きではないが)。
村上龍は単純に上手い。
村上春樹は名曲の名前をそのままもってきたりしてズルイ。
中上健次や宮本輝は、普遍的だがスケールがあってイイ。

まあ、どうでもいい話だが、センスは大事だと思う。
センスは生理的な印象に関わるもので、
ここが合わないと読者も付き合うのがつらいからだ。
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Commented by colorcube at 2006-08-28 19:38
奇しくも同じ日に別の人(http://rocketwrit.exblog.jp/)の全く違うコメントを見るのは、小説はその読み手によって違って良いということだけが判ったです。
取り急ぎヨマニャいかんです。はい。
Commented by shinobu_kaki at 2006-08-28 19:41
>十八番氏

読みました。面白いね。
やっぱ人によってちがうね。
僕はけっこう読めたけどね。
「重力ピエロ」も読んでみようと思ったもの。
Commented by HIRA at 2006-08-29 02:05 x
わたしも村上春樹は暗いと思います。それも、わたしの大好きなカフカをタイトルに使用するのは反則だと思ったばかり(w)。
Commented by shinobu_kaki at 2006-08-29 06:45
>HIRAさん

しかしあの「暗さ」が、世界的人気の秘密なのでしょうか。
他になかったくらい、現在進行形で世界中の人に読まれている、
初めての日本人作家という書かれ方をしている記事があった。

でも、春樹氏はビートルズとビーチ・ボーイズに
いくらか払った方がよいかもしれませんね(笑)
by shinobu_kaki | 2006-08-28 17:15 | shinoBOOKS | Trackback | Comments(4)

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