陽気なギャングが地球を回す。

 週の終わりをどこに設定するか、というのは人によって違うと思うのだが、平日のワーキングデイと土曜日曜のいわゆるプライムデイを意識の上で明確に分けている僕にしてみれば、金曜の夜というのはやはりひとつの区切りである。ただし金曜が一週間の終わりの日というわけではない。月曜日の朝が週の始まりという認識でいる。それならば日曜で一週間が終わるということになる。が、気持ちとしては金曜が最終日だと書いた。では土曜と日曜はどうするのか。つまり僕の中ではその2日はまったくの別ものである。これは昔からそうだった。仕事の意識が強すぎて、仕事のない日が「安息日」であるという気持ちが大きいのだろうか。

 先週はまるまる夏休みで、パスポートのいらない外国であるところの沖縄にいた。そんなちょっとした楽園的な場所を放蕩していたせいか、この仕事始めの一週間がとても長く長くロングに感じられた。しかも徹夜をしたせいで慢性的に眠い。眠かったのだが本もよく読んだ。昨日の帰りの電車の中で伊坂幸太郎の「陽気なギャングが地球を回す」を読み終わったばかりである。そして今は「陽気なギャングの日常と襲撃」を読んでいる。なんというか、ハマったわけだ。面白い。

 伊坂作品の特徴はその軽妙な語り口と気の利いたダイアローグ、そして時系列の組み替えによる立体的な構成にある。これだけ見るとクエンティン・タランティーノの脚本のようでもある。タランティーノのそれは登場した当時、とある雑誌のレビューで「ぼくらの時代の脚本」と言われた。要は「クール」だったわけである。伊坂幸太郎の小説をいくつか読んでも斬新さは感じない。感じないが、知っている手法をいくつも混ぜ込んでミックスしてぐつぐつ煮込んで味を整えたシチューのように、折り重なる味の彩りがとても華やかで楽しいのだ。

 「陽気なギャング〜」に関して言えば時系列的な工夫は皆無なのだが、他の作品に比べてダイアローグ、つまり会話が作品全体のリズムを刻む存在として機能している。しゃべくりを聞いている間に物語が進行している感じだ。グルーブがあるのである。それが読んでいて楽しい。特に成瀬のキャラがいいね。世界一かっこいい公務員だ。響野の「ロマンはどこだ」という口癖もMADでいい。映画版のキャスト、成瀬が大沢たかおで響野が佐藤浩一というのは意外だったけど。佐藤浩一は成瀬だとばかり思っていた。ちなみに僕が読んでいて思い描いた「脳内キャスト」、なぜか成瀬は元日本代表のサッカー選手、山口素弘だった。なぜ山口だったのかはよくわからない。僕の中のどこかに「冷静」のイメージモデルとして彼がいるのだろう。

 物語は四章立てで、とりわけ第四章の疾走感と爽快感は見事だ。度重なるピンチ(実はそんなにないが)にも「こいつらがこっぴどい目に遭うわけはない」と思いながら読んでいた。小説の中の人物にすっかり感情移入していたわけである。これは幸せな読書体験と言えると思う。というわけで僕はこれから「陽気なギャングの日常と襲撃」の続きを読むことにしよう。

 そして一週間がもうすぐ終わる。
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by shinobu_kaki | 2006-09-15 21:36 | shinoBOOKS | Trackback(2) | Comments(0)

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