水原 秀策「サウスポー・キラー」

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読み進めるのがとても楽しかった。
野球ものミステリーの良作、と言って差し支えない。
第3回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。

当初は「スロウ・カーブ」というタイトルだったらしい。
改題して正解だと思う。
まず「スロウカーブ」という言葉はどうしても、
故・山際淳司氏の「スローカーブを、もう一球」を連想させてしまう。
そしてこの小説の主人公である沢村投手について、
スロウカーブというボールはあまり似合わないのである。

沢村航は日本プロ野球の人気球団所属の左投手で、
所属する球団名はオリオールズという名前になってはいるが、
モデルは間違いなく読売ジャイアンツだ。
おまけに監督は、ひらめきときまぐれの采配で知られ、
かつて球界の宝とまで言われた天才肌のスター選手とくれば、
これはもう長嶋茂雄である。
球界の盟主・オリオールズの若きエースである沢村だが、
性格はあくまでもクールで、思ったことをそのまま口にするため、
内外に敵を作りやすい性格。こういう人っているよね。
そんな沢村がある日、自宅マンションの前で見知らぬ男に暴行を受ける。
心当たりのまったくない沢村。その後球団に怪文書が送り付けられる。
内容は「沢村投手が暴力団と癒着している」というものだった。
そしてマスコミには「沢村投手が八百長を行っている」という文書が…。
罠にはめられた沢村、彼はその性格から、
犯人に対して真っ向から戦いを挑むことを決意するのだった。
しかしそこには綿密に計画された恐ろしい陰謀が…という話。

全編通して感じるのはちょっとした爽やかさである。
それは、ミステリにつきものの「殺人」や「死体」が出てこないこともあるし、
主人公の沢村のクールで一本気な性格のせいもあるだろう。
それに「スポーツもの」という題材がさらに爽やかさを増幅させている。
ある瞬間に現れる「秘密」はそれほど驚くほどのものではないにせよ、
ほぐれた紐を解きほぐすのにも似た快感はきちんと味わえると思う。

そして飽きさせない。見どころとなるシーンがたくさんあるからだ。
特に、最後のクライマックスともいえる試合のシーンはいい。
こういった、ストーリーの「核」となるモチーフがあると、
プロットは作りやすい気もするね。面白かった。おすすめです。

特に、クールでクレバーでスマートな実力派、
という沢村のキャラクター造形が良かった。
実際にいたら鼻につくかもしれないけどね。
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by shinobu_kaki | 2007-01-28 16:52 | shinoBOOKS | Trackback | Comments(0)

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