稲尾和久逝去に寄せて。

今朝の新聞のスポーツ欄は、
もと西鉄ライオンズの投手、稲尾和久逝去のニュース一色だった。
いや、ウソ。
「我那覇ドーピング問題」とかもあったけど、
まあ斯界への貢献度から言っても稲尾逝去がトップニュースだったよね。

稲尾が活躍したのは昭和50〜60年代なので、
僕はリアルタイムでその活躍を見ているわけではない。
時折テレビで流れる古ぼけたVTRでその投げる姿を一瞬かいま見るか、
解説者としてのスーツ姿をちらほらと見かけるばかりだった。
身体はずんぐりと大きいが、サイのように目が小さく、
往年の大エースというよりは八百屋のご主人といった風情でもある。
(実際にあだ名は「サイちゃん」だったらしいけど)

稲尾はもともと学生時代は無名であり、
バッティングピッチャー、つまり打者の練習用の投手として入団したという。
しかし初年度のキャンプから頭角をあらわし、
最終的には21勝6敗、防御率1.06(2007年現在パリーグ記録)という
抜群の成績で最優秀防御率と新人王の両賞を獲得した。
1961年のシーズン42勝、日本シリーズの通算11勝は、
現在でも破られていない記録となっている。
つまり「良いピッチャー」というだけでなく、
「勝てるピッチャー」だったということ。
これは古今東西変わらない「エースの条件」だと思う。

それでふと思うのだが、
稲尾は僕らの時代の投手で言えば誰にあたるレベルなのだろうか?

稲尾を一言で形容するなら、
「西鉄ライオンズ黄金時代を支えた大エース」となるわけだが、
そもそも近年のプロ野球で「黄金時代」と呼べる時期のあったチームは少ない。
90年代の西武ライオンズがそうだけどね。
1986年から1994年までの9シーズンで8度のリーグ優勝、6度の日本一。
チームのメンバーもほぼ固まっていて、その安定感と隙の無さから言っても、
間違いなくプロ野球過去最強チームの一角に数えられる。
じゃあその当時の大エースは誰か、というとこれが微妙で、
東尾修、渡辺久信、工藤公康、郭泰源と、
成績は非常に優秀ではあるけど唯一無二の大エースという感じではない。

安定感という意味ではジャイアンツの斎藤雅樹も凄かったが、
サイドスローという投球スタイルのせいか、
稲尾のような「頼れる剛腕」という形容が似合わない。
実際に日本シリーズなどの勝負どころでは斉藤は弱かった。

「黄金時代のエース」というポジションがそもそも見当たらないのであれば、
いち投手としての存在感で比較できる者はいるだろうか。
チームは決して最強ではなかったが、「剛腕」といったタイプの投手で、
比類のないインパクトを遺した選手と言えば野茂英雄がいる。
単純にインパクトという意味では稲尾以上かもしれない。
村上雅則は別として、メジャーに正面から乗り込んで活躍した最初の選手。
ドジャース時代の1年目、オールスターに先発したあの印象が強烈。
それ以前に日本プロ野球での成績がとにかく凄い。
プロ1年目に17奪三振の1試合奪三振数日本タイ記録(当時)を記録、
最多勝利、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率と主要四冠を獲得。
さらにベストナイン、新人王、沢村賞、そしてMVPにも輝いた。
ルーキーのくせに圧倒的な成績はまさにトルネード(竜巻)のようで、
さらに1990年~1993年の4年間、最多勝利と最多奪三振のタイトルを独占。
昔、恵比寿のスポーツジムで、オフに帰国中の野茂を見かけたことがあるが、
腕も胴回りもものすごくがっちりしていて太く、さすが野茂と思った記憶がある。

他にも今「剛腕」といえば何といっても松坂大輔がいる。
スライダーが得意なタイプであることや、
打席に立たせても結果を出してしまうあたりは稲尾的でもある。
今は才能の突出した選手はメジャーリーグへ行ってしまうので、
日本に残りつつチームに君臨するというタイプが出てこない。
(ソフトバンクの斉藤、中日の川上などはいるが)。
体制が違うのだから「昔の選手は偉大だった」とひと括りにはできないが、
それでも当時の仕事量を見ると、稲尾のタフさに驚嘆せざるをえない。
だって1シーズン42勝なんて、今はもう考えられないっしょ。

今朝の日経に当時のチームメイト、豊田泰光がコラムを寄せていた。
それによると稲尾氏曰く「コントロールは指先の記憶」。
つまり頭でなくて指でその感覚を覚えている、それがコントロールの秘訣である。
稲尾の剛腕は飽くなき反復練習による繊細な技術を伴うものだったのだ。

最後に、「商工会議所だより」という渋いサイトから、
稲尾和久のインタビュー。
TOP STORY 稲尾和久


ご冥福をお祈りいたします。
(文中敬称略)
トラックバックURL : http://kakiwo.exblog.jp/tb/6437576
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from 平太郎独白録 親愛なるア.. at 2008-05-07 13:08
タイトル : 創って欲しいな稲尾賞
親愛なるアッティクスへ 福岡ドームのスーパーボックス、ついに、今年一杯で廃止だそうですね。 跡は一般席に改造されるのだとか・・・。 まあ、さもありなんでしょうか。 発想自体が、完全にバブルの発想でしたし・・・。 でも、これで、他球場並みに4万人を超える収容能力を持つことが出来るわけで、後は、問題はホークスがそれに相応しいゲームをしてくれるか・・・でしょうか。 ところで、先日、日本人初のメジャーリーガーとして知られる、マッシー村上こと、村上雅則氏が、新聞に記事を寄せておられたのを...... more
by shinobu_kaki | 2007-11-13 13:48 | エウレーカ! | Trackback(1) | Comments(0)

移動祝祭日


by Shinobu_kaki
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31