自分という医者。

「ワシはいつもこんな想像をするんだ」
「風で白いカーテンが揺れて…窓の外に若葉が見える。
老いて動けなくなった私はその病室に寝ていて、
窓の外の若葉の精気を苦々しく見ている」
「体中が痛むが…もうすぐこの痛みを取る最後の手術が始まるんだ」
「やがて時がきて、私の手術をする医者が現れる」
「その医者は“私”なんだ」
「『金儲けが一番』『仕事は生活のために稼ぐだけ』
『下手でも心がこもっていればいい』…」
「そう思って生きてきた人間の前にはそれぞれ、
そういう価値観を持った医者が現れる」

加藤元浩
Q.E.D.-証明終了- 31「目の中の悪魔」より




これは「価値観は自分自身に返ってくる」という話ですね。

例えば、陰で人の悪口を言う人間は、
自分自身が陰口を叩かれているかもしれないという呪縛から逃げられないし、
例えば、浮気をした人は、
自分のパートナーにも浮気をされるかもしれないと考えざるを得ない。
例えば、海の中でつい用を足してしまった人は、
ほかの誰かも自分と同じように海を汚しているかもしれないと思う。

それに対して「そんなこと考えた事もない」「自分と他人は同じじゃない」
という人は、普段から自分だけが特別だと思っていると公言するようなもの。
自己認識がアンバランスで独りよがりだということになる。
なかなかやっかいな「自己を映す鏡」である。

こういうの読むと、
人が見てなくてもちゃんとしようと思うのだけど、
なかなか難しいですやね。

「Q.E.D.-証明終了」は一応、第一話からずっとカバーしている。
アニメ化もされた。
正直マンガの絵としては物足りない部分もあるのだが、
基本的に1話完結の練られたミステリーで、よく考えられている感じがいい。
単行本の累計発行部数が300万部を超えているとかで、
それなりに売れている人気作品のようである。

ちなみにこの31巻では、僕の好きなロキとエバのコンビが登場するが、
初期に比べて二人ともキャラクターが(その造形とともに)微妙に変わっている。
ロキはもともとの不敵さがなくなって脇役というか小物っぽくなり、
「魁!男塾」でいうところの富樫や虎丸的な「リアクション業」になってしまった。
エバは憂いを秘めた穏やかな佇まいが魅力で、インド系ということもあり、
「機動戦士ガンダム」のララァ・スンを彷彿とさせる少女だったのだが、
その物静かな、綾波レイ的な思慮深さはすっかり薄れ、
わりかし普通に元気で、時々うっかりした発言もするというタイプになっている。
主人公の二人を際立たせるための正しい処置といえばそうなのだが
(とにかく主人公の燈馬君は知的ではあるが華がないのだ)、
このへんは、ずっと読んできた読者としては寂しかった。
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by shinobu_kaki | 2009-03-13 12:59 | 言葉は踊る。 | Trackback | Comments(0)

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