松井秀喜はどうして落ち着いているのか?

松井は囲み取材はもちろん1対1で話を聞いてもなかなか本心がつかめない。
ただ、彼には誰にも話さない特別な使命感といったものを持っているような気がする。
それは野球でなにかなしとげるといったアスリート的なものなのかもしれないし、
もっと人生論的なものなのかもしれないが、
とにかくほかのひとにはないなにかを隠し持っているように思えてならない。

阿部珠樹のスポーツ観戦力向上講座
「松井秀喜サヨナラ弾、我慢強さに感心」より


松井秀喜は驚くほど地味だ。

星稜高校時代は1年から4番、甲子園では「怪物」の名を欲しいままにし、
ドラフトでは1位指名で4球団競合の末に巨人に入団、
数年後には巨人の不動の4番打者として十分な活躍を見せた。
入団からの10年間で332本塁打、シーズン平均33本強なのだから立派なものだ。
ニューヨーク・ヤンキースに入団してからは中距離打者といった風情だが、
マッチョ揃いのメジャーの猛者の中にあっては仕方がないだろう。
それでもあのヤンキースにおいて中軸を打ち続けているし、
それなりの成績を残してもいるのだ。素晴らしいキャリアと言わざるを得ない。

これほど華やかに見える松井秀喜の野球人生なのだが、
トータルに見える印象としてはどうしても地味なのである。

それは多分に、松井自身の落ち着いた佇まいにあるのだろうと思う。
どこかやんちゃで子供っぽく、
ストリートっぽいファッションにも違和感のないイチローとは好対照だ。
松井秀喜はあろうことかポロシャツが似合うのである。
しかも20代の前半の頃からそうだった。
チャラチャラしたところはなく「求道者」然としていた。
そう、松井は若い時からあの落ち着きを持った男だったのだ。

阿部珠樹の感じた「誰にも話さない特別な使命感」とは何だろうか。
もちろん正確にではないが、なんとなく分かる気はする。
松井の父は宗教法人の司教であり、その思想のもとで秀喜少年は育っている。

宗教とはロジックというかストーリーというか、「仮説」でもいいや、
ある仮説でもって世界を捉えているものだと僕は思っている。
それは「生」の迷いを払拭するためであり、安寧を獲得するためでもある。
僕なんかはそんな仮説の「ジャンプ率」にちょっと踏み込めないなと思う。
丹念に話を聞いていると、どこかで無理が生じているように感じられるのだ。
だが信仰というのはそういうものであろう。
言ってみれば「理屈じゃないのヨ」ということなのだ。
もし理屈、ロジックだけで積み上げられた信仰があるとするならば、
それはたちまち破綻を見せるだろう。
ロジックというのは「絶対的正解」などではない。
どんなものでも対立する概念というのは提示しうるし、
どんなものでも見方によっては綻びを指摘する事が可能だからだ。

まあ、この話はちょっと松井と離れてしまうのでここまでにするが、
なんだっけ、そうそう、
松井秀喜にはどこか「宗教者」にも似た信念を感じるのである。
人間一人が生きる事よりも大きなビジョンをイメージしながら生きると、
どうしてもああいう落ち着いた人になるんじゃないだろうか。
一種の諦観と覚悟とを持っている感じがするね。

あと、日々アフォリズムのような、
人生訓示を考えながら生きている人のような気もする。
こういう揺るぎのない人(またはそう見える人)は他人に安心感を与える。
野球選手じゃなかったら精神科医なんかいいかもしれないね。
自分の担当医がイチロータイプだったらちょっと微妙に思うかもだし。
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Commented by あちゃ at 2009-07-22 20:34 x
>あと、日々アフォリズムのような、
人生訓示を考えながら生きている人のような気もする。
こういう揺るぎのない人(またはそう見える人)は他人に安心感を与える。
野球選手じゃなかったら精神科医なんかいいかもしれないね。
自分の担当医がイチロータイプだったらちょっと微妙に思うかもだし。


すいません。サイコーにえらそうですが、
僕がKHAKI DAYSに出会った2004年10月末頃の、
シノブさんの物腰は柔らかいですが、ものすごく切れ味鋭いナイフのような筆で、かかれていたブログを思い出しました。
いえ、最近も大好きです。ただアフォリズム関係はへったかなぁって。
勝手な予想、お子様が与えてくれる日々の刺激が、
シノブさんにとってのアフォリズムなのではと。
すいません。また勝手な予想で。

いやー、どちらかというとサッカー日本代表のビッグファンであるシノブさんから、
なんだかんだいっても、日本の国技といっても過言ではない、
野球評が聞けて、読めて、僕個人としてはハッピーです。

イチローは、医龍でいえば、天才麻酔科医です。
Commented by shinobu_kaki at 2009-07-23 00:48
>あちゃくん

2004年の記事をさかのぼって確認してしまいました(笑)

もうずいぶん前ですよね。
あの頃はブログ始めて面白くて仕方がなかったし、
良くも悪くもノって書いていた気がします。
それゆえにちょっと恥ずかしいところもあるのだけど(笑)

あれから時が経ち、結婚して子供が生まれ、
やっぱり違って来たことは多いです。
まず、あんなに人生の楽しみとしていた外食をしなくなったし、
深く酒を飲むこともほとんど無くなった。
友達と遊ぶこともあまりしなくなったしね。
端から見るとつまらない人生になったように見えるのかもしれないけど、
変わるべくして変わって行ったのだと自分では思っています。
というか、自分が家庭を持てるなんて前は思ってなかったからね。

野球はもともと好きなんですよ、実はね。
ご存知のように、かなりサッカーに傾倒してはいるけれど。

で、イチローは朝田じゃないのね(笑)
Commented by あちゃ at 2009-07-23 01:32 x
>で、イチローは朝田じゃないのね(笑)

なんというか、やっぱり朝田のような外科医は、
野球で言うとピッチャーな気がします。

今年で言うと、一押しは、涌井。
ちょっとダルビッシュに比べたら少し華に欠けるけど、
なんだかよくわかんないですけど、モノスゴイ投手な気がします。

僕の中で、なぜ、天才麻酔科医なのかというと、
医者の世界で、最初から、麻酔科医を志す方っているのかなって。
でも、どんなスゴイ腕を持っている外科医でも、
その術中を支えてくれる、最高のパートナーが必要。
そうするとキャッチャーとって思う方いるけど、
キャッチャーってやっぱり守りだけのイメージなんです。

イチローは、ピッチャーに対して今でもコンプレックスを持ってること。
そして、ライトから相手バッター、ランナーをにらみつけ、攻めていること。
レーザービームなんて攻撃する人の言葉だし。

コンプレックス&攻撃的性格&世界最高峰の安打製造機 = 天才麻酔外科医

なんだか、天才外科医よりも天才麻酔外科医の方が、
いい意味で闇がありそうで。イチローのSM好きのイメージとシンクロ。

あっ、天才外科医は、野茂秀雄ですよ。HIDEO NOMO!!!
Commented by あちゃ(追記) at 2009-07-23 05:38 x
イチローは、野球&ベースボールにおいて、新たにイチロースタイルを自ら構築したことによって不世出のスーパースターになったと思います。
ただし、これは、あくまでも日本人にとって。
WBCで2度優勝したということで、世界一という印象をより大きくしたからもしれませんが、やはり、野球の華は、ピッチャーであり、ホームラン。

ホームランアーティスト・ノーヒッター・ハマの大魔神・抑えの切り札・サヨナラホームラン・完投・完封・完全・三冠王・ホームラン王

えー、てきとーに、ホームランバッターとか
ピッチャーに関する用語を集めてみたのですけど
それだけで、僕には、華のある言葉だと思えるのです。

一方でイチローを表現するときにつかわれる言葉
安打製造機・盗塁王・強肩・走・攻・守・三拍子・一番ライト・最多安打・エリア51・レイザービーム・振り子打法・200本安打・

なんというか職人的な気質に関係するような言葉が並びます。

なので、天才外科医ではなく、天才麻酔外科医。

野茂さん、デビューからすさまじく、そして、下野に下っても、
また復活。
これぞ、国境なき医師団所属の朝田です。
Commented by shinobu_kaki at 2009-07-23 08:07
>国境なきあちゃくん

朝田って非常に類型的な天才タイプとして描かれているでしょ。
つまりシャープで、ここぞのスピード感がすごい。
生活パターンはルーズで無頓着、というのも天才ぽくていい。
で、個人的には野茂は鈍くて重い気がするのね。
野茂は確かにルーキーイヤーから圧倒的な成績でデビューしたけど、
それでもあまり天才って感じがしないのは、
あの鈍重さ、愚直さのせいと思います。あと体型ね(笑)
頑にストレートとフォークだけで小細工なしで行く投球スタイル、
非常に野茂らしいというか、それが野茂のアイデンティティでもある。

よくわかんなくなったけど(笑)まあ、印象の捉え方の話ですね。
野茂に「天才」という言葉は似合わない気がする、良い意味で。

イチローは確かに職人ですね。
一番の功績は「内野安打をショーにまで高めた」ということかな。
シングルヒットを見て満足するのって篠塚以来かもしれん。
あと守備ね。項目だけ上げると非常に地味な部分で勝負している選手。
だから「芸」の人なんでしょうね。
Commented by あちゃ at 2009-07-23 08:47 x
確かに言われてみると野茂じゃないかも。

僕は本当の全盛期をしらないからなんともですが、
そういう意味では昭和の怪物江川卓(プロ通算9年で135勝)
朝田といっしょでよくしゃべるところが、なんとなく。

あとは、メージャーに行く前の切れ切れの石井和久か
90年代を代表する今中慎二。

あとは、江夏。球歴的には彼だけど、
いまじゃちょっとというか実際に悪い、ちょいデブ親父だからなぁw
Commented by shinobu_kaki at 2009-07-23 11:43
>あちゃくん

予想外に長くなった「朝田」論争(?)
確かに朝田はよくしゃべりますね。
模倣不可能な突然変異的天才の朝田よりも、
「凡才」を標榜する霧島のほうにシンパシーを感じるワタクシです。
Commented by あちゃ at 2009-07-23 11:54 x
確かに(笑)

医龍マンガも好きですが、ドラマも好きでした。
大塚寧々が色っぽくてたまらない天才麻酔科医でした。
アベサダヲは、変態麻酔科医(だからこそ天才ともいえる)を熱演してましたね。
by shinobu_kaki | 2009-07-22 14:41 | 言葉は踊る。 | Trackback | Comments(8)

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