ア・バオア・クー

一番探したのが最後のほうに出てくるメカや要塞の名前でもあるんですね。
ア・バオア・クーについては、ボルヘスの「幻獣図鑑」を見つけた時に、
絶対にこの中にある!と直感しました。そこでこの言葉を見つけたわけです。
(略)フィクションとしてのリアリズムを完結していくためには、
そういう異質な名前を入れていかなれけば絶対にダメなんだという認識ですね。
富野喜幸(由悠季)「思考としてのガンダム」より

ア・バオ・ア・クゥー(A Bao A Qu)とは、
インド・ラジャスターン地方にいると伝えられている幻獣である。(wikipedia)


僕も小学生の時にガンダムを観ていた世代で、
3部作あった映画も、ラストの1本は映画館に観に行った。
最初に作ったプラモデルはシャア専用ザクだった。
つまり、まあ「ガンダム世代」といった部類に属していると言っていいと思う。

ガンダムが画期的だったのは、それまでの勧善懲悪アニメとは一線を画し、
相対的な立場までも表現した人間ドラマだったからである。
その後「ヤマト」「エヴァンゲリオン」へと連なって行くこの系譜は、
「ガンダム」によって突然この世に生み出された。
しかし当時の子供相手に少々難しかったのも事実のようで、
テレビシリーズのガンダムというのは実は打ち切られたものだったらしい。
(全52話の予定が全43話に短縮)。

ちょっと話がそれたが、名前の話。
ガンダムにおけるネーミングの奇妙なリアリティというのは、
僕も当時から惹きつけられ、ぐっときていた。
前述の「ア・バオア・クー」もそうだし、戦艦「グレートブリテン」、
金平糖と呼ばれた「ソロモン」、ジオン軍の中枢たるザビ家の一族、
そしてシャルル・ゲンズブールから連想したというシャア=アズナブル…。
どれもとても味わい深い。

そして鈍重でクラシックなジオン軍のネーミングが、
全体的に濁音で支配されているのはなんだかそれらしい。
ザク、グフ、ドム、ズゴック、ゲルググ、ビグザム、ガルマ=ザビ、ドズル=ザビ…
思えばほとんどが濁音だ。濁音は屈強さ、邪悪さを感じさせる。
敵キャラながら圧倒的な人気を誇った「シャア」という名前も、
その造形と一匹狼のエースというしなやかさを感じさせて良いと思う。
物語の終盤に突然登場するインド系のニュータイプの女性、
「ララァ」はふわっとした神々しさを感じさせるし、
何より富野喜幸がもっとも苦労したという主人公の「アムロ」という名前が絶妙だ。
アムロという名前には、未熟だが、未来と可能性を感じさせる、
ニュートラルな若者らしさがあるからだ。

かつて蓮実重彦が、村上龍の「五分後の世界」に出てくる、
「向現」というドラッグの名前を絶賛し、
あの小説の成功はこのネーミングの素晴らしさによるものだ、
と言ったことがあったが、ガンダムの成功要因のひとつには、
このネーミングの絶妙さがあると思って疑わない。

ネーミングについては昔、エントリを書いた。
音や言葉の持つイメージ喚起力というのは凄いから、
ネーミングがそのキャラクターの性格や言動を導きだす、
というのは、これはもう絶対にあるよね。

自分自身の名前が例えば「剛造」ではないだろうというのは、
もちろん今でも確信を持って言える。名前とは、本当に面白いもんである。
トラックバックURL : http://kakiwo.exblog.jp/tb/8849438
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
by shinobu_kaki | 2009-08-23 08:46 | 言葉は踊る。 | Trackback | Comments(0)

移動祝祭日


by Shinobu_kaki
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31