表現の陶酔と理由、そしてシラフ性。


歌を歌ったり、音楽することとか、小説を書くなどもそうだけど、
普通の人の日常生活と結構かけ離れた、
言ってみればきわどいところで成立しているよね。
つまりこういった「表現」というものはね。

どれもしかるべき舞台、
フォーマットができて初めて許されるというか、
TPOをわきまえる必要があって、
そうでないとあまりにも異様になってしまう。
具体的に言うと、カラオケボックスやステージならOKでも、
満員電車でいきなり歌い出したり踊り出すと狂人に見えるでしょ。
そういうこと。

ちょっと話がずれるけど、「寄生獣」というマンガがあった。
その中で公園にライオンが現れて人を襲うエピソードがあったのだけど、
ライオンを目の前にしても人はあまり逃げないんだよね。
それはもちろん怖くないってことじゃなくて、
「え?これ本物…?」とか言いながら、
いるはずのないライオンが目の前にいることの辻褄を合わせようとする。
この描写はリアリティがあると思った。
もちろん、物語の中でその人はあっさり食い殺されてしまうわけだけど、
意外と人間ってこういう行動を取ってしまう気がする。

同じように、電車の中で人が歌い出したとしたら、
狂人と思うかもしれないけど「何かの撮影か?」とも思う気がする。
そうでないと、自分の中の「世界の秩序」が崩れる。
人間は理由もなしに人前でいきなり歌い出してはいけないものなのだ。
もちろん酔っぱらいが歌うようなケースはある。
だけどここで言う酔っぱらいは、一種の狂人状態と言ってもいいからね。

で、話を戻すと、上記の歌もそうだし、
物語を綴ることも考えてみればとても不思議だ。
第三者的に物語るっていうこと自体、ちょっとした神の視座なわけだよね。
じゃあそれを書いているあなたは何?という問いが生まれないほうがおかしい。
個人的に誰かに書いて伝えたいとか、目的を持った呪術性とか、
そういうのならわからないこともないけど…。
小説、物語。やっぱり不思議と言えば不思議だと思う。
なぜそれを書く人は、書いてしまうのか。書かずにはいられないのか。

なんでいきなりこういうことを思ったかというと、
「最後の瞬間に音楽を聴くとしたら何か」ということを時々思うわけです。
だいたい僕の場合はクラシックが浮かぶんだけど、
個人的にはショパンの舟歌が好きで、リストとか、でもやっぱりモーツァルトとか、
ラヴェルの「ボレロ」なんかもいかにもフィナーレな感じでいいな、とか思う。
でも、よく考えたらちょっと滑稽なのかもとも感じてしまう。
何か人生の出来事に対して音楽をつけるということがね。
それもドラマティックな音楽をつけようとする。
そうしたいと思うのは不思議だね。
生きてると、基本は無音でしょ。無音というか生活音だけだ。
そこに誰かのこしらえた、ストーリー性とイメージのある楽曲を持ってきて、
それに感情を乗せる。委ねる。重ね合わせる。
一般に多く行われていることだけど、
こう、シラフで考えてみるとやっぱり不思議だよ。

原始の歌い手、踊り手、そして語り部は、
少なからず呪術的なニュアンスを含んでいたというのは理解できる。
なぜならそれらの行為には「理由」が必要と思うからだ。
トラックバックURL : http://kakiwo.exblog.jp/tb/9264435
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by niko at 2009-11-18 12:58 x
いつも楽しく拝見させて頂いております。
本文の主旨と異なるかもですが、以前、本当に満員電車で歌い出した狂人が現れたときの、リアルな周囲の反応が興味深かったです。
ある人は激怒し、ある人は擁護する、二極化が起こりました。
もちろん、僕みたいな傍観者もいましたけどね。
ま、モラル的に怒られるべきなんでしょうけど(笑)。
Commented by shinobu_kaki at 2009-11-18 20:16
>niko様

どうもありがとうございます。
うーむ、それはなんとも言えない状況ですね…。
確かに「普通に」怒られるべきなんでしょうけど、
さて自分はどっちかと言われると即答に困りますね。
でもいきなり怒ったりしない(できない)とは思うなあ。
by shinobu_kaki | 2009-11-18 12:44 | ライフ イズ | Trackback | Comments(2)

移動祝祭日


by Shinobu_kaki
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31