カテゴリ:shinoBOOKS( 113 )

a0022014_22583775.jpg

Number最新号を買った。
表紙は東北楽天ゴールデンイーグルスの田中将大。
前から思ってたけど、田中って顔が獅子舞っぽい。

特集「その試合が彼らを変えた〜熱球物語」。
一流、もしくは一線級と言われる選手が、
プレーヤーとして何かを掴んだ瞬間はどこだったか。
切り口としては面白いですね。
サッカーだとこういうテーマ性のある記事はあまりないね。
これは、野球がなんだかんだと「個人競技」なのと無関係ではない。

ラインナップは表紙にもなっている東北楽天・田中、
ヤクルトの「ヒット打ち」青木、
最近デキ婚報道で渦中の北海道日本ハム・ダルビッシュ、
ジャイアンツ・阿部、タイガース・林、東北楽天・山崎など。
中でもダルビッシュのが興味深かったね。

確かに東北高校時代からその実力とルックスで注目はされていたが、
さてプロとなるとどうかという感じがしていたダルビッシュ。
そんな不安はどこへやらと、すっかり日ハムのエースとして君臨し、
チームの日本一にもエース格として貢献した。
日ハムのピッチングコーチは佐藤義則、
そして選手兼バッテリーコーチに中嶋聡という元オリックスコンビなのだが、
彼らのダルビッシュに対する評価がすごく高いのだった。
ちょっと、コメントをいくつか引用してみたい。

佐藤「ダルは気持ちが入っていると、とんでもないことをやるからね」
中嶋「先発の時は思いっきり投げてから出て行くことはないんです。
 でもこの日はブルペンでとりあえず作って、『次、行くよ』と
 言われた後の何球かを、思いっきり投げてから行ったんですよ。
 その時、とんでもなくすごいボールが来た。
 その時のボールの勢いは、自分が体験した中で3本の指に入るほどだった。
 気持ちの乗ったときの松坂大輔や、パ・リーグのセーブ記録を
 作ったときの平井正史よりも上だった」
中嶋「この潜在能力は半端じゃない。こりゃ打てんわと思いました」
佐藤「こんな投手は今までいなかった。天才だよ、天才」
中嶋「球種を順番つけろと言われた時、
 どれだろうなって悩むくらいのピッチャーになりましたね。
 全球種がウイニングショットになりうる。
 そんな投手はいい時の松坂大輔くらいしかいなかった」

うーん、なんか凄いですね。
普通、現在進行形で育てている選手に対して、
ここまで褒めることはしないと思うのですが。
まあ、こんなことで勘違いしないという信頼があるのでしょう。

ところで北海道日ハムで思い出したけど、
「白い恋人」の件ですが。
僕も大好きだっただけに残念です。お土産の定番だったよね。
「名物に美味いものなし」なんて言うけれど、
「白い恋人」や「萩の月」はすごく美味しいと思う。
しかし食べ物メーカーはなんというか、厳しいですな。
まあ人の口に入る物だから、とりわけ慎重にというのはあるけれども。
by shinobu_kaki | 2007-08-17 23:27 | shinoBOOKS | Trackback | Comments(2)
岩明均の「ヒストリエ」、単行本4巻で物語の冒頭につながった。
なるほどこーゆー経緯だったのかと、
もう一度1巻のアタマから読み直したりして。

「ヒストリエ」は謎多き実在の人物、エウメネスを主人公に描かれる。
wikipedia カルディアのエウメネス
アレクサンドロス大王の書記官を努めたと言われる人物で、
歴史家の筆によると、後年、親友でもあった隻眼のアンティゴノス
殺されてしまう運命の人である。

ところで物語の冒頭で、紀元前343年の若きエウメネスは、
ペリントスの商人を名乗る隻眼のアンティゴノスという男に出会う。
この時点でエウメネスは流浪の若者にすぎない。
アレクサンドロス大王ともまだ出会っていない(と思われる)。
前述したように、隻眼のアンティゴノスはエウメネスにとって運命の人物だ。

しかし、こういうシーンがある。第1巻の82ページ。
「アンティゴノスさん」とエウメネスが呼ぶのだが、返事をしないアンティゴノス。
とぼけた表情で振り向くと、「君は…なぜわしの名を知ってる?」という。
エウメネスが彼の名前を知ったのは、直前に街の近衛兵に、
アンティゴノスが自ら自分の名前を名乗ったからなのだが、
すぐに返事をしない、というコマをわざわざ挟んでいるのは伏線のようにも見える。
つまり、アンティゴノスというのは偽名で、実は別人ではないかという説だ。
そして物語に意外性を求めるならば、このペリントスの商人を名乗るアンティゴノスは、
やはり隻眼と言われたマケドニア王フィリッポス2世、つまり、
アレクサンドロス大王の父親ではないかという疑いがあるんだよね(某所による)。

確かにフィリッポス2世も、作中のアンティゴノスと同じく右目が不自由だし、
「うさんくさい商人」が実はマケドニアの王という意外性も面白い。

でも、エウメネスの生涯により深く関わってくるのは、
「本物の」アンティゴノスのほうだから、アンティゴノスを名乗るこの男は、
本当にアンティゴノスであったほうが面白いかな(ややこしくてすみません)。

ちなみにバルシネという女性のキャラクターがとても魅力的。
バルシネはメムノンの妻で、後にアレクサンドロス大王の妾となる女性である。
大学者・アリストテレスがしばらく考えてから答えた「謎解き」を、
一瞬にして理解してしまう聡明さを持った女性、というエピソードが描かれている。
物語中のバルシネの年齢はまだ20歳。

こうなるとまったく気になるのが、英雄アレクサンドロス大王の造形だ。
33年ほどの短い生涯の間に、未曾有の大帝国を打ち立てた男である。
どれほどの凄みを持って描かれるのか、とても楽しみに待っている。

それにしても岩明均は遅筆だ…単行本1巻出るのに1年、というペースだからね。
作者存命中にアレクサンドロスは出るのだろうか?…お願いしますよホント。
by shinobu_kaki | 2007-08-10 08:37 | shinoBOOKS | Trackback | Comments(2)

世界旅行(仮)。

帰ってきた。晩飯中。

ここんとこ、週末は図書館で本をまとめ借り。
「完訳・紫禁城の黄昏(上・下)」
「持統天皇と藤原不比等」
「淀川長治のシネマトーク」
「関羽伝」
「家康はなぜ江戸を選んだか」
「山名文夫のグラフィックデザイン」
「その他の外国語」
図書館だと元手がかからないので、
内容が外れだと思っても悔しくない。

あとブックオフで買った村上龍「天使のパス悪魔のゴール」、
これは序盤読んでつまんねえなと思ったが、
(そして実際に中盤はすっとばして読んでないのだが)、
物語ラスト3分の1ほどのユベントス戦の試合描写が良かった。
これは長大ながらかなりハイテンションで熱く、
サッカーを「描写」したひとつのコンテクストとして、
ちょっとやっぱり上手いねと思った。ドライブ感があるよね。

図書館からは音源、つまりCDも借りてきている。
今回はピアソラ、ピアノトリオなどに加えて、
ワールドミュージックを何枚か。
ジプシー・ヴァイオリン、バリの舞踏歌劇、そして二胡。
今はちょうど二胡の音を流しつつこれを書いている。
僕のとって音楽は主にバックグラウンド、つまり風景であるので、
こういう世界旅行は非常に良い感じである。

しかし映画が借りっ放しだ。
「解夏」「半落ち」、いつ観ようかだな。
by shinobu_kaki | 2007-08-08 23:08 | shinoBOOKS | Trackback | Comments(2)
「コミックボンボン」が休刊だそうである。

「コミックボンボン」は講談社発行の少年漫画誌で、
小学館「コロコロコミック」のライバル誌と言われた。
僕は小学生の頃、贅沢にも両方とも買ってもらって読んでいた。
個人的には「コロコロ」のほうに思い入れがある。
その理由としては、僕の好きだった「ドラえもん」がコロコロの看板だったこと、
さらに当時大好きだったオモチャの「チョロQ」を強力にフューチャーしていたこと、
どちらかと言えばコロコロのほうが全体的に楽しい雰囲気に満ちていたこと、
そして今思えば恥ずかしいのだが、当時の巻末の読者ページにおける、
キャラクター公募で自分の描いたキャラクターが採用されたこと、である。
(ちなみに採用の報酬は「連載漫画キャラの顔が印刷された特製定規」だった)。
これらの要素を踏まえ、小学生当時の僕はコロコロのほうが好きだった。

今思えば、ボンボンには紙面に横溢するマイナー感があった。
対してコロコロは(金看板のドラえもんの影響もあろうが)、
ピカピカとしたメジャー感にあふれていた。
分かりやすい色使い、迷いのない方向性、屈託のない元気さ、
コロコロを指し示す記号は常に「ポジティブ」であったと思う。
それに対してボンボンはどこかネガティブというか、
少しくすんだような色使い、2番手の悲哀か、ニッチなマニアックさを思わせた。
もちろんこれは、ボンボンが「休刊」の憂き目をみたという、
今回のニュースを知ったからこそ思うことかもしれない。
いわく、人は結果に対して原因を探してしまうものだからだ。
とは言えコロコロのほうが「王道」を歩んでいたのは間違いのないところであろう。

僕が読んでいた当時のボンボンは、「プラモ狂四郎」が看板だったと記憶している。
ガンプラと呼ばれた「機動戦士ガンダム」のプラモデルを使用した漫画で、
主人公たちがシミュレーションマシンによってプラモの世界に入り込み闘うという、
非常にガキンチョ、じゃなかった「男の子好き」のする漫画であった。
Wikipediaのコミックボンボンの項で連載作品一覧が確認できる。
ざっと見てみると、ボンボンに覚えている作品はほとんどなかった。
「やっぱ!アホーガンよ」ってあったなあ。でもあとはホントに覚えてないや…。
対してコロコロコミックのほうは、かなり知っている。覚えている。
コロコロ隆盛については、ポケモンを取り込んだのが大きかったみたいね。
僕はさすがにポケモンが流行った時期はもう読んでいませんけど。
あとコロコロは、読者コーナーにスチャダラパーや天久誠一を使ったりしていて、
いちいちセンスがいいというか目の付け所がいい。
そもそもホビーとのタイアップという部分を見ても、
コロコロはいわゆる一般的な漫画誌とは一線を画す(ボンボンもそうだったけれど)。
なんというか「ホビーブームの仕掛け役としてのメディア」という、
単なる「読み物」に留まらない、ちょっと不思議なポジションの「雑誌」なのだ。

ボンボンのことを書こうとしたのに、いつの間にかコロコロの話になってしまった。
ボンボンで忘れられない漫画といえば、そうだなあ、
…あ、絵柄もタイトルも作者名も覚えていないんだけど、
どうしても忘れられないセリフが昔のボンボンにあった。それは、

「むっ、朝っぱらから焼肉!」


というものである。
でも正直、こういうセリフだったかすら覚えていない。
でも確かにあったはずである。朝っぱらから焼肉。どんなだ。
読んでからおそらく20年以上が経つ今になってからも、
僕の脳に残る無駄なメモリーのひとつとして消えてくれないのだが。
by shinobu_kaki | 2007-07-18 15:18 | shinoBOOKS | Trackback | Comments(3)

雨上がりの図書館。

連休中日の日曜は前半が嵐、しかし後半は台風一過。
風はまだ強く吹き荒ぶものの外を歩く人もちらほら。
僕などはもう引きこもりを決め込んだ日だったが、
それでも出不精の逆、外出なくして休日なしという体質であるため、
ほんの少しでも外へとばかり家の近くの図書館へ出かけた。

図書館は前に来た時に比べると台風の影響か人は少なく、
それでも見渡す限り10数人が独特の静けさで本を閲覧している。
雑誌のコーナーで何冊かパラパラと目を通すと、書籍の棚へと移動。
ここはそれほど広くないため蔵書の数もそれほどではない。

地元の郷土史をめくる。この近辺から縄文土器および弥生土器出土。
図書館の目の前には古墳があるらしい。
引っ越してこの土地に住んでもう1年と4ヶ月。
地元のことは意外に知らないものである。
もっとも古墳などに興味があるわけではないのだが。


本を3冊借りてきた。
「図説・天才の子供時代」、
「ぐっとくる題名」、
「李白」の3冊。

a0022014_9493171.jpg

「天才の〜」は副題に「歴史の中の神童たち」とある。翻訳ものだ。
昔から天才譚が好きな僕である。
筆頭はやはりモーツァルト。幼少から発揮されたその才能と作品、
人間としてのアンバランス性や35歳での早逝という幕引きに至るまで、
まさに完璧な「神童」のロールモデルであると言える。
ちなみに本書によるとベートーベンですら「神童」のカテゴリに入らない。
才能の「完成」が遅いからである(「開花」ではない)。
フランツ・リストは入る。ショパンもメンデルスゾーンも入る。
そしてウェーバー、シューベルト、アリアガも入るが、
彼らに共通するのは30代までにみな亡くなっていること。
もちろん天才は音楽だけのものではなく、ピカソに代表される絵画の世界、
数学者のガロア、詩人のランボオ、ビクトル・ユゴーなど。
「早熟でなければ天才でない」ならば天才は作品の犠牲者のごとくだ。
それにしてもこの本、普通に買ったら5,000円以上するようだ。ビバ図書館。

a0022014_9513340.jpg

「ぐっとくる題名」は非常に好みだった。
「やぶから棒ですまないが、『ゲゲゲの鬼太郎』の
ゲゲゲとは何かを、説明できる人はいるだろうか」
こんな話から本書は始まる。
なんというか、一事が万事の言葉通り全編この調子である。
ロジック編、マインド編、現場編の3カテゴリからなる本書は、
世にあまたある優れた(または優れていない)タイトルのつけられ方について、
なぜこのタイトルでなければならなかったのかを検証するものだ。
「ゲゲゲの鬼太郎」「無能の人」はなぜ「の」なのかという「助詞の使い方」、
「部長島耕作」は良いが「取締役島耕作」はダメだという「韻とリズム」、
「少年アシベ」「ディグダグ」に見られる「濁音と意味不明な単語」、
「ツァルトゥストラはかく語りき」などの「古めかしい言い方」、
「長めのいい部屋」「百年の誤読」は良く出来た「パロディの題名」、
言いかけてやめてみたり(「光ってみえるもの、あれは」)、
逆に言い切ってみたり(「これからはあるくのだ」)、
やけに長かったり(「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」)。
そして最後の「現場編」において作者のブルボン小林が実は、
奇妙なタイトルで芥川賞を受賞した作家と同一人物であると分かるのだ。
僕なんかはまったく知らなかったのでこれにはちょっとやられましたね。

a0022014_9561348.jpg

「李白」は、彼の漢詩を紹介・解説しつつその生涯に触れる本である。
(上の画像は単なるイメージです。李白を描いたと言われる画)
中国の詩人は数あれど、もっとも親しみ深いというか、
杜甫や陶淵明などと並んでもっとも「メジャー」なのが李白だろう。
酒や飲み屋の名前にもなったりしているから(李白の字は「太白」)、
内実は知らなくとも一番有名な詩人ではないだろうか。
酒飲みでルーズという伝説も李白の印象にとって良いほうに働いている気がする。
人々が芸術家に抱く潜在的(もしくは顕在的)イメージとして、
「キチンとしていて欲しくない、社会不適応者であってほしい」
という無責任な期待感があるからである。そうでしょう?
李白の人気の一部は、このダメ人間的なスペックにあると思う。
前の2冊から読み始めているのでまだこれは拾い読み程度。

あと図書館から借りてきたのはCD。
久石譲、シェリル・クロウ、トム・ウェイツ、ホリー・コール・トリオ、
それにジョン・コルトレーンの「ラッシュライフ」。
iTunesへとダウンロードし我が家の音楽ライブラリへと。
昨日は「本屋がパラダイス」みたいなことも書いたが、
図書館もいいよね。これからもっと活用しようと思ったのだった。


嵐は東へ去り、青空来たる。
待っていたかのように蝉が鳴き出した。
もう雨は完全にあがったようだね。

さあ、今夜はサッカーアジアカップ、ベトナム戦ですよ。
by shinobu_kaki | 2007-07-16 09:22 | shinoBOOKS | Trackback | Comments(2)
a0022014_9463386.jpg

突如日本サッカー界に現れた奇妙なフランス人監督、トルシエ。
「言っていることに一貫性がなくて支離滅裂」だの、
「通訳のダバディよりサッカーに詳しくない」だの言われながらも、
2002年のワールドカップで日本をベスト16に導いた功労者。
トルシエの名前は今でもスポーツ誌のインタビューなどで時折見かける。
そして、トルシエのインタビューはいつも面白い。
その面白さの秘密は3つのポイントにまとめることができる。つまり、
「話が具体的」で、「姿勢としてはあけっぴろげ」であり、
さらに「対象(サッカー)に対する愛情に満ちている」ということだ。

本書は時節柄「オシムジャパンよ!」というタイトルになってはいるが、
副題に「日本サッカーへの提言」とあるように、
「トルシエ以後」の日本サッカーについて書かれている。
書かれているというか、トルシエのインタビューを聞いている感覚である。
まずジーコが率いて惨敗を喫した2006年ドイツワールドカップについて検証し、
ジーコのチーム作りと自分のそれとを詳細に比較して、
中村俊輔という選手について、さらに中田英寿という個性について語る。
そして後半はオシムジャパンの現状と懸案、可能性について。

なにしろおしゃべりなあのフランス人の言葉を、
ひたすら途切れずに聞いているかのような一冊である。
そしてディテールはあくまでも、トルシエらしさに満ちている。
例えばこんなフレーズだ。
「あのドイツ人のような名前のブラジル人…そう、ビスマルク」
「それから中村憲剛だ。彼が俊輔と血の繋がりがないと聞いて
ちょっと驚いている。顔つきから何から、他人にしてはよく似ている」
こういったどうでもいい部分に、トルシエらしさがよく出ていると思う。

インタビューが面白いということについては、
現役選手でありながらセルティックの中村俊輔がそうである。
俊輔のインタビュー、サッカーに関する語りについては定評がある。
映像で見る態度などはそっけないが、面白いことを言っているし、
あらためてテキストにすると非常に読ませるということがわかる。
選手として云々に関係なく、今すぐにそっちの仕事ができるくらいだと思う。
by shinobu_kaki | 2007-06-13 09:47 | shinoBOOKS | Trackback | Comments(0)
アニメ化もされた話題作、と言っていいのかな?
色んなサイトで高評価だったこともあり、一度読んでみたかった。
この度、漫画喫茶で1巻から8巻まで一気に読破できた。

アフタヌーンという雑誌は全体的にマイナー臭が漂う。
メジャー的、つまり、誰にとっても分かりやすく面白いというには、
ちょっとだけ何かが足りない作品が多いんだよね。
岩明均の「ヒストリエ」は盛り上がりと掲載率(!)が足りないし、
黒田硫黄「あたらしい朝」は親切さというかサービス精神に欠ける。
「プラネテス」を書いた幸村誠の「ヴィンランド・サガ」は、
いかにも世界観がマニアックすぎる、とかね。
しかしこれらに共通するのは、ちゃんと読むと「すごく面白い」ということだ。
作家としての資質がすばらしくあるんだよね。
だからこそメジャーに、ポップにならないということでもあるけれど。

ひぐちアサ「おおきく振りかぶって」もそんなアフタヌーン誌の中の一作。
高校野球を舞台にした漫画で、作者のひぐちアサは女性である。
この人、正直絵はあんまり上手くない。何が上手くないって、見づらいのだ。
あと人物の描き分けが出来てないので、脇役の区別が難しい。
しかし丹念なドラマの構築と、興味深く示唆的な蘊蓄のインサート、
そして何より「この人野球がホントに好きなんだなあ」と思わせる何かが、
ビシビシ感じられるわけです。「想い」があるっていうのかな。伝わるものがある。

スポーツにおけるメンタルトレーニングに着目している点など、
三田紀房「甲子園へ行こう!」を彷彿とさせなくもないけど、
「大きく〜」のほうがのびのび描いている分の親近感はあるかもね。
全体的につくりの粗っぽい漫画だと思う。ただ、それがある種の魅力になっている。
のびのび描いていると思わせる筆致が、
高校野球という刹那的な輝きをもつ題材と相まって、実に清々しい一作である。
なるほど、これはジャンプなどシビアな漫画誌ではあり得ないだろうね。
だって色んなところを編集者に直されてしまうだろうから。
そういう意味でも幸せな漫画だとは思う。アフタヌーンの編集体制は知りませんが。

最新8巻、桐青高校戦のクライマックスの盛り上がりは異常。
わかっていつつも手に汗握ってしまう。すごい面白かった。
ていうか高校野球のクロスプレーってずるいよ。絶対盛り上がるもの。
しかし主人公の投手・三橋(みはし)、
これが実際にいたら確かにいじめられっ子になるかもなあ(笑)
キャラ造形がちょっと子供っぽいけど、少年漫画だからね。
あと、全体的にBL(ボーイズラブ)っぽいという指摘があるんだけど、
それはこの作者が女性だからじゃないかなあ。というのは、
女の子で仲が良かったりすると、手をつないで歩いたりするじゃない。
さすがに男同士でそれはしないけどさ。
そんな女性特有の「親しみ」の距離感のようなものが、
この漫画における少年たちの「近さ」となっているんじゃないかと思うけど。

ともかく興味ある人、ぜひ読んでみてください。
損はしないと思うよ。

a0022014_11493570.jpg

おおきく振りかぶって wikipedia
by shinobu_kaki | 2007-05-28 11:51 | shinoBOOKS | Trackback | Comments(0)

本を買い込んで。

日曜日に渋谷へ出かけ、本を何冊か買ってきた。
パルコブックセンターはLIBROになったんだね。
それにしても相変わらず本屋はワンダーランドというべき知の宝庫で、
どんな人でも一生かかっても読み切れないほどの書籍が、
あろうことかリアルタイム更新を繰り返しながら増殖し鎮座している。
休日にふらりと本屋を訪れるたびいつも軽い高揚を覚える。
良い本に出会うことは面白い人に出会う事と同義だ。
大げさでなく一冊の本が人生を変えることもある。
そんな淡い期待を心の底に秘めながら、人は本屋を訪れる。

地下沢中也「預言者ピッピ」
見城徹「編集者という病」
KINOvo.2「思考としてのガンダム」
伊坂幸太郎「チルドレン」

これらを一度に買い、そのうち伊坂幸太郎以外は全て読んだ。
通勤の電車で、昼メシのテーブルで、少しずつ、しかし一息に読み切った。
今回の本はどれもアタリで、それぞれ非常に面白かったね。
特に「編集者という病」は、読むと体温が3℃ほど上がる感じだ。
まとめて書くのはもったいないので一冊ずつ感想戦と行きたい。
書けたら、だけどね。

あ、あと映画「スクール・オブ・ロック」も凄く良かった。
観ると元気になる映画。ジャック・ブラックはいいなあ。
最後のステージのシーンだけ3回も観てしまった。
これも書きたいね。曲がずっと頭を回っている。

♪教師のペットでいたけりゃ  何もかもあきらめな
 ロックは意味なし リズムなし 遅刻せずに学校へ…
by shinobu_kaki | 2007-05-23 02:03 | shinoBOOKS | Trackback | Comments(0)

いますぐ欲しい本メモ。


現代俳句表記辞典

最近、身の回りで松岡正剛が何度か話題に出た。
それは同年代ではなく、社長やその先輩にあたるお客さんたちの会話でである。
お恥ずかしい話だが、松岡正剛が有名な人だなんてちっとも知らなかった。
前に偶然、「千夜千冊」のウェブサイトを発見して興奮したのも記憶に新しい。
その時はこんなのウェブで、つまりタダで読んでいいの?!と思ったのだった。
ウェブサイト「千夜千冊」での最新レコメンドがこの一冊。
日本語に関する表現の多様性の面白さ。


地下沢中也「預言者ピッピ」(「兆-sign-」より改題)

雑誌で何話か読んだだけだが、可愛い絵柄に反してシビアな内容。
なかなかひんやりと怖かった記憶がある。
ずっと単行本が出ないものかと待っていたのだった。


2冊とも、早速明日にでも買ってこようかな。


あと、なんとかして単行本化して欲しいのは、
「cut」(ロッキング・オン)に連載していた小西未来の「映画の科学と学習」、
「AERA」(朝日新聞社)連載の「現代の肖像」。
この2つは即買いです。ちょい高くても買う価値があると思う。
でも「現代の肖像」はかなりの長期連載だから、
単行本化したらちょっとした全集のようになってしまうかもだ。
by shinobu_kaki | 2007-05-19 16:57 | shinoBOOKS | Trackback | Comments(0)
a0022014_8301025.jpg

漫画雑誌「モーニング」の全盛期はたぶんずっと昔だと思うけど、
(個人的には「REGGIE」「オフィス北極星」がやってた頃がそうじゃないかと思う)、
なんだかんだと今でも元気な雑誌ではある。
なんだかんだと話題作を輩出し、
なんだかんだとドラマ化されている作品も多い。
ことに、漫画を原作とするドラマが盛んな今日においてはね。

表紙&巻頭「神の雫」。ワイン漫画である。
日本でもなかなかの人気である本作だが(単行本の表紙が派手だ)、
いま韓国では日本を追い抜きそうな売り上げを誇るそうだ。
韓国の新聞「中央日報」の一面に、漫画として初めて採り上げられた。
天才的なテイスティングとデキャンタージュの腕を持つ主人公、
神崎雫の存在感が薄いのがいいのかもしれない。
少なくともライバルの遠峰一青のほうがキャラが立ってはいるよね。
キャラの描線も実にあっさりとクセがないのだが、
それはきっと登場人物たちよりもワインが主役だからだろう。

なかいま強がモーニングにいるのはなんか違和感がある。
(おそらく)ボクシング漫画「ライスショルダー」。
父親を捜す為に兄弟と上京した巨体で怪力の女の子が主人公。
田舎弁をあやつるギャグがこの作者っぽい。
「うっちゃれ五所瓦」「黄金のラフ」も好きなのだが、
この人のテイストはけっこう独特で、死ぬほど可笑しい瞬間もあるが、
あまりに長く続くと味に飽きてしまうこともある。
「ライスショルダー」はまだ乗り切れてない感じがする。
もっと面白いのを書ける作者だと思っている。

モーニングの看板「バガボンド」。
言わずと知れた大人気作、単行本は僕も買っている。
画集を出すほど達者な絵で描かれる剣豪・武蔵と小次郎。
十分に面白いし、素晴らしいと思うのだが、
井上雄彦は時々分かりづらい表現をするよね。
なんというか、アップにすべきところではない箇所でアップにしたり、
すんなり来てほしいところですんなり絵が来ないというか、
映画で言えばカメラの使い方が違っている気がするのである。
それがこの人の個性と言えば話は終わるのだけど、
絵がすごく上手くて魅力的なのだからもったいないなと、
実はいつも密かに思っている。

「専務 島耕作」。インド篇。
この島耕作は「課長 島耕作」の島とは別人ですね。
「課長〜」はすごく良かったが(傑作だと思う)、
なんだか今や不思議な漫画になっている。

「ジパング」。かわぐちかいじ。
好きな人はモーニングの中でも一番好きな作品なのだろうが、
なぜか僕は読めないんですよね。不思議と。

「ひまわりっ」。読んでません。

「ディアスポリス」。モーニングらしい作品という気がする。
原作というか脚本のリチャード・ウーは、
浦沢直樹とのタッグでも有名な長崎尚志氏。
野心作だと思うけど、これもなぜか読まずに飛ばしてしまう。

「チェーザレ」。惣領冬美。
単行本のシンプルな装丁から、この作品を長大なものにするという
作者の意志が感じられて良い。
いつも思うのは「チェザーレ」じゃないんだ、ということ。チェーザレ。

「イカロスの山」。塀内夏子。
「堀内」ではない。「塀内」。女性らしくさらっとした絵柄だが、
この人は漫画の上手い人だと思う。読ませる。
あと、基本的に善人しか出てこない作風の人ではある。
ずっとスーパーな存在として描かれていた平岡の、
突然の滑落(?)。これで平岡が死亡という展開ならびっくりだね。
物語的にはもうひと転がりある気はしているけど。

「とりぱん」。読んでません。

「GIANT KILLING」。ちょっと前から始まったサッカー漫画。
面白い。親しみやすい絵柄も好み。
サッカー監督が主役の漫画というのはなかなか旬な感じだ。

「ジナス」。吉田聡。
時々載っているけど、よく分からない漫画。
読んだり読まなかったりだけど、
個人的には吉田聡の絵柄が好きではない。

「カバチタレ」。じゃなかった「特上カバチ」。
ナニワ金融道の遺伝子を引き継いだアレです。
ただしナニワ金融道とはまったくの別物。
身につまされるエピソード満載。お金で不幸になる人たち。
みんな仲良くできんもんかねえ。

「エレキング」大橋ツヨシ。
長いこと続けられてる4コマギャグ漫画家は大体そうだとおもうけど、
この人は特に天才的に面白いね。
昔にくらべると、「AERA」に連載されていたりして一般受けする感じになった。
時々ものすごくツボにはまったり、感心したりしている。

「ドラゴン桜」。いよいよセンター試験終了。
どうやら2人とも足切りの対象となる点数か。
順調に来ていると思いきや、最後に試練が待っている…のか?
これ、最初はまったく違う漫画だったはず。
人気と需要が漫画そのものを変えてしまうのだ。

「はるか17」。山崎さやか。
この人も漫画が上手い。読ませる。
連載開始からの数話なんて、本当に引きが上手くてびっくり。
主役は女性(はるか)だけれど、色気のある女性としては描かれていない。
「萌え要素はほとんど無いが、読ませる」というのが
非常にモーニングらしい漫画だと感じるね。

「ナースあおい」。こしのりょう。
これもある意味、とてもモーニングらしい漫画だと思う。
「ブラックジャックによろしく」の後の「医療現場ドラマ枠」。
地味ながら、しっかりしたストーリー。ドラマ化もされましたね。

「実録!関東昭和軍」。田中誠。
「ギャンブルレーサー」の人の高校野球漫画。
ネットでの人気は高いようだが、その作風ゆえいつも巻末近くにある。
個人的には、まあ読んでいるけどねという感じ。
というかキャラが誰が誰だかよくわかりません。

「ムーたち」。榎本俊二。
鬼才の一言。

「クッキングパパ」。うえやまとち。
「ウマイゾ!」と言えばこの漫画。
それにしてもパパのあごはなぜ鉄人28号なのだろうか。
息子もいずれああなるのか?

「へうげもの」。山田芳裕。
戦国時代を見届けた数寄者・古田織部の物語。
これは後で単行本でじっくり読みたい。

「モダンタイムズ」伊坂幸太郎。
こないだから始まった連載小説。びっくりした。
伊坂は好きな作家である。
漫画誌に書くなんて、フットワーク軽いなあ。
ギャラはいくらなんだろう、とか思ってしまった。


なんか辛口の感想が多いように感じるかもしれないけれど、
モーニングは基本的にとても面白い漫画雑誌と思う。
実験的な作品を載せるキャパシティはあるし、力のある作家も多い。
それにしても「蒼天航路」が終わってしまったのは痛いなあ。
まあ、10年もやってたわけだから、いつまでも連載しているわけにもいかないけれど、
あの「蒼天航路」の歴史ものという題材、パワー、けれん味、
それらすべてがモーニングという雑誌の重層的な魅力を支えていたと思うのだが。
by shinobu_kaki | 2007-04-13 09:18 | shinoBOOKS | Trackback | Comments(8)

移動祝祭日


by Shinobu_kaki
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30