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失意。呆然。
負けたという結果を我ながら受け入れ難かったのか、
書こうと思いつつなかなか書けなかったね。


日本 0-0 パラグアイ
(PK 日本 3-5 パラグアイ)



雨。
雨で思い出すのは2002年、やはりベスト16のトルコ戦。
あの、ぼんやりとモヤがかかったような虚無感は忘れられない。

肌に感じるか感じないかくらいの小雨の中、
傘もささずに早足で、家に着いたのが後半30分あたり。
松井大輔はベンチに下がった後であり、
さらに阿部に代わって中村憲剛がピッチに入る。
スコアは道すがら携帯で確認してきていたから知っている。
0-0だ。

攻め込まれた危ないシーンはあったようだが、
南米の強豪パラグアイ相手にスコアレスで来たことで
実のところ「これはもう勝てるんじゃないか」という確信を感じていた。
もちろん理由などはまったくないが、ここまでの数試合を通して、
それくらい日本の調子は上向いているように見受けられたからね。
けが人もいない、コンディション上々の我らが代表を
すっかり頼もしい存在として僕は捉えていた。

正直に言って大会に入る前までのチームは、
今まで見た中で最も魅力を感じない代表だった。
それが予選ブロックの3試合を経て、
最も頼もしく魅力的な代表チームへと変貌を遂げた印象があった。
しかし決勝トーナメントでの敗退は即チームの解散を意味する。
だから日本には負けて欲しくなかった。
このチームがどこまで行くのかをもっと見ていたかった。

延長終了のホイッスルが鳴り、PK戦が始まった。

PKは敗者を決めるために存在するシステムである。
残酷なゲームだと思う。
5人ずつの選手が交互に蹴り合うのがルールだが、
決着がつかなければ永遠にやり続けなければならないのだ。
やり続ければいずれ誰かがミスをするに違いない。
スケープゴートが生まれた時、試合は終わる。

PKはキッカーが成功する確率のほうが高い。
それゆえPKを蹴る選手というのは、
「こいつが失敗するなら仕方がない」と味方に思わせる
信頼の厚い選手でなければならない。
日本は、PKの一番上手い遠藤が一本目を決めた。
2番手キャプテン長谷部も決めた。
そして3番手の駒野が外した。
4番手の本田は決めたが、
パラグアイは5人全員が決めたために勝負はついた。

これで終戦。

その事実が信じられない。
パラグアイは確かに格上の相手だったが、
勝てない流れでもなかった。悔しさの正体はこれか?
手の届くところにあったものを逃したという感覚。
もう少しやれたんじゃないかというもどかしさ。
人はまったくの絶望の中におかれると、
悔しさよりも違う感情が立つものだ。
それが悔しいと言うことは、惜しかったのだ。
勝てたかもしれなかったのだ。
しかし、勝者はパラグアイで敗者は日本。揺るぎない事実。
日本のワールドカップはここで終わってしまった。
いかに上り調子と言えど、いかに代表に愛着が沸こうと、
そんな感傷とは無関係に、夢は終わった。

選手に対する賞賛であるとか、
岡田監督に関する手のひら返しの謝辞であるとか、
そんなものは世のすべてのブログで、
既に書かれているのでここでは書かない。

少しスタイルの話をしようと思う。
岡田監督はワールドカップが始まる直前にチームの方針を変更した。
すなわち本田を前線に据え、ボランチを3人にしつつ、
両サイドに松井と大久保という「突破型」の選手を配した、
いわば「堅守速攻」へのシフトである。
それまでは田中達也に代表されるような、
チビッコFWの俊敏性を日本の強みとして闘ってきた。
しかし直前になって岡田監督はリアリストに戻ったのだった。
パスを回してボールをキープするスタイルでは日本は闘えない。
守りを固めて、チャンスと見るやカウンターを仕掛ける、
そこに活路を見出すという賭けに出たのだった。

結果は、とても上手くいった。

思えば過去の日本代表において、
カウンターサッカーを志向したチームというのは記憶がない。
98年は中田英寿・名波浩を中心とした「遅攻のメンツ」だったし、
02年のトルシエのチームのコンセプトは「出来るだけ前でボールを奪う」で、
そこから先の攻めは特別に鋭さを匂わせたものではなかった。
06年のジーコのチームはカウンターとは真逆の、
いわゆるポゼッションサッカーのチームで、
これは良い時は面白いようにボールが回るが
受けに回ると意外なほどのモロさを見せた。
「日本にカウンターの文化はない」という論説もあったように思う。

確かに今回の代表も、再前線を張ったのは本田であり、
彼は別に俊足で斬り込むというタイプではない。
そもそもが本職のFWでなくMFなのであり、
カウンターを仕掛けたとてスピードのある攻めに結びつかない。
そういう意味で中東的なカウンターサッカーではなかったものの、
松井や大久保のキープ力と突破力が絡み
(特に松井は今大会を通して非常に素晴らしかった)、
かつ中盤の長谷部や遠藤のフォローが連動した時の日本は、
非常に鋭い攻撃を見舞う事ができていた。
それもこれも本田の存在が大きかった。
岡田監督は本田の意外な得点力や点を獲りに行く貪欲さ、
そして何よりフィジカルの強さに託したのだと思うが、
僕にしてからが正直なところ、
「FWじゃない選手をFWに?何を考えているんだ」
と思ったものだった。FWなら本職が他にもいるだろう。
そもそもJの得点王の前田を選びもせずに、ここで迷走かよ、と。

しかし岡田監督は非常に強度のあるチームを作り上げた。
気持ちの強さがあり、経験があり、技術があり、
さらに前述したように魅力のあるチームだった。
この代表をもっと見ていたいという人は多かっただろう。

でも、日本のワールドカップを巡る冒険は終わってしまった。
岡田監督は辞任し、中村俊輔も代表引退を示唆した。
代表チームは解散する。そういうものだ。
4年後のワールドカップに向けて同じ監督、同じメンバーで
このままやればいいじゃないかと思う向きもあろうが、
そうではないのである。

かつて中田英寿がそうであったように、
本田圭佑が次の代表でも中心として君臨するのだろうか。
そもそも今回の代表で4年後に残る選手が何人いるだろう。
次回は次回で、今年の本田圭佑のようなニューカマーが現れないとは限らない。
そんなことは誰にもわからない。

しかし今回の代表は奇跡的に良いチームだったと思う。
見ていて頼もしかったし、完全に「自分のチーム」として応援できた。
敗退は残念だけれど、楽しませてもらった。
いい夢を見れたワールドカップだった。
次回はさらに進化を遂げた代表を応援できることを祈っている。

そして2010年のワールドカップはまだ終わらない。
お楽しみはこれからなのだ。

夢は終わったが、祭りはまだ続くのである。
by shinobu_kaki | 2010-06-30 16:14 | Trackback | Comments(2)
もう始まってしまった、
南アフリカワールドカップ決勝トーナメント。
遅きに失した感はありますが、
決勝トーナメント16カ国が出そろったところで、
ちょっと優勝予想のようなことをしてみましょう。
しかしこのベスト16の中に、
日本が入っているというのが素晴らしいね。


ウルグアイ×韓国
(終了)
ここはすでにウルグアイの勝利で決着。
ウルグアイは2トップのフォルランとスアレスの調子がよい。
というかこの2人はそれぞれ、
スペインリーグとオランダリーグの得点王だからね。
韓国も好チームでしたが結局2-1でウルグアイ。

USA×ガーナ
(終了)
いつもなんだかんだ上位に食い込む隠れた実力国USAと、
総倒れのアフリカ勢の希望の星ガーナの一戦は、
ガーナが2-1で勝っています。
危うくアフリカW杯のベスト8にアフリカが1つも残らない、
という事態になりそうでしたが回避。
ガーナはエッシェンがいないけど、FWのギャンが強力だ。

オランダ×スロバキア
 6/28 23:00
これはもうオランダに行ってもらわないと。

ブラジル×チリ
 6/29 3:30
戦術オタクの監督・ビエルサ率いる攻撃サッカーのチリですが、
今回は優勝候補筆頭の「堅実なブラジル」なので相手が悪い。
ブラジルの勝利と予想しますが、チリは今大会のベストチームかもね。

アルゼンチン×メキシコ
(終了)
アルゼンチンが貫禄の3-1勝ち。
ただテベスのゴールが明らかなオフサイドの疑いがあり、
後味は悪いです。今大会は誤審が多いね。

ドイツ×イングランド
(終了)
昨日の夜、前半の終わり近くまで見て寝てしまったけど、
ドイツの勝ちそうな気配で試合が進んでいた。
というかドイツは非常に好チームだと思う。
年齢層も若いし、もしかしたらファイナルまで行くかもわからん。
といいつつ違う予想をしますけど。
ところでこれもイングランドのゴールが誤審で認められなかったりして、
もう判定方法をどうにかせんといかんかもわからんねー。

パラグアイ×日本
 6/29 23:00
日本勝て!

スペイン×ポルトガル
 6/30 3:30
圧倒的な輝きを見せつけてEUROを制覇したスペインも、
このW杯では制裁を欠いていると言わざるを得ない状況。
ただ、見ているとやっぱりスペインは本当に上手いんだよね。
精神的な脆さのようなものを指摘されてもいるけれど、
それで言うとポルトガルのほうが精神的には脆かったりするので(笑)、
ここは順当に行けばスペイン勝ち抜けの可能性が高いです。

【ベスト8】

ウルグアイ×ガーナ
 7/3 3:30
難しいんだけど、ガーナかなあ。
ウルグアイは先に書いたように2トップが突出している。
正直言って今大会のガーナは、よくわからない。
大会主催者側としてはアフリカ勢にせめてベスト4に、
という気持ちはあるだろう。

オランダ×ブラジル
 7/2 23:00
決勝でもおかしくない好カード。
でもここはブラジルと思う。
というか今回、まともに予想すれば優勝はブラジルだと思うんですけど。

アルゼンチン×ドイツ
 7/3 23:00
やっぱりアルゼンチン、と言いたいところだし予想もそうなんだけど、
昨日の試合を見ていてドイツがここで消えるのはもったいない!
と思ったりする。予想以上にいいチームだったし、
バラックの不在なんか忘れてしまうくらいに選手のプレーが素晴らしい。
でもアルゼンチンには明らかに大会No.1というメッシがいて、
マークされていながらも次々決定期を作り出している状況を見ると、
アルゼンチンこそ勝ち抜くに値するチームなのでは、と思ってしまう。
ここは今大会のベストカードのひとつかもね。

日本×スペイン
 7/4 3:30
まあ日本の勝ち抜けを予想したわけですが、
これが実現したら鼻血が出そうなほど素晴らしい現実だな…。
日本の勝利を予想したいけど、
チーム力からすると明らかにスペインが数段上なので(だよね)、
ここはスペインの勝ち抜けが順当なところ。

【ベスト4】

ガーナ×ブラジル
 7/7 3:30
というわけで、ブラジルが決勝へ。
ここで番狂わせが起きたら面白いけどね。

アルゼンチン×スペイン
 7/8 3:30
スペインがどのくらい復調しているかにもよるんだけど、
アルゼンチンの勝ち抜けを予想したい。
この試合はFCバルセロナの中心選手が揃った一戦になる。
言わばバルセロナってのはスペイン代表+メッシ、
と言ってもそんなに過言じゃないからだ。
このカードはぜひ実現して欲しいね。

【FINAL】

ブラジル×アルゼンチン
 7/12 3:30
トルシエの予想と同じになっちゃうんだけど、
今回のワールドカップは「南米の復権」といった色が濃いし、
欧州以外の大会ではブラジルが残るというジンクス(?)も守られ、
大会No.1選手のメッシが最後まで見られるという要素や、
さらに厳格な鬼軍曹ドゥンガと、
一種のファミリーを形成しているマラドーナという監督の対比、
それらもろもろを考えても「順当」な組合わせはこれだろう。
で、普通に予想するとブラジルなのだけど、
ここはアルゼンチンが勝つという可能性もあると思う。

かつてアルゼンチン代表は、優秀な監督が厳格な規律のもと、
強烈な個性のスター選手たちをまとめるという構図で、
ことごとく途中で敗れてきたチームなのである。
そこへ今回のマラドーナの就任で、
結果的にまったく違うアプローチがチームに対してもたらされた。
すなわち「アイドル」としての監督であり、
アルゼンチンのような、選手ひとりひとりが十分に成熟した国では、
そんな監督が必要だったのかも、という可能性の検証になる。
実に4年前、我々はそんな監督が「サッカー後進国」においては、
明らかにミスキャストであるという事実を突きつけられた。
そう、アルゼンチンにおけるマラドーナ監督という「実験」は、
日本におけるジーコとは違う結果をもたらすのではないか、
そう思わせる今回のアルゼンチン代表なのである。

ところで今回のエントリは各試合の部分に、
自分の備忘録的な意味でも試合開始時間を書いてみた。
それで行くと、大会ベスト4以降はのきなみ3:30スタートである。
この時差は日本人にとってはつらいよね。
by shinobu_kaki | 2010-06-28 12:04 | さかー考 | Trackback | Comments(2)


日本 3-1 デンマーク



結論から言うと、最高の試合だった。

序盤の17分、本田が得意の無回転FKを約30mの距離から突き刺して1-0。
30分の日本の2点目も直接FK、今度のキッカーは遠藤だった。
蹴りたがった本田を「俺が蹴る」と押しのけたというから、
かなりの自信があったのだろう。
後半35分にはゴール前で長谷部が相手選手を倒してしまいPK。
少々厳しい判定じゃないかと思われたが、こういうのは仕方がないのだ。
川島が一度ははじくがキッカーのトマソンが詰めて失点。
これで2-1となり1点差。しかし日本は引き分けでもOKなのだ。
逆にデンマークは2点を取って勝たないと未来がない。
そんな中、後半42分に日本がとどめを刺す。
本田がゴール前に迫りキーパーの動きを見て岡崎にパス。
これを岡崎が流し込んで3-1。決着だ。

マン・オブ・ザ・マッチは本田圭佑。
これは誰も異論がないところだろう。
よくボールに絡み、キープもできていた。
ゴール前での冷静さが光ったし、何より1点目のFKは、
さながらクリスティアーノ・ロナウドを彷彿とさせるものだった。

本田だけでなく、
日本代表は本大会に入ってからのコンディションが良い。
松井も大久保も非常に動きに切れがある。
特に松井はそのテクニックを存分に発揮していて、
いい選手とは思ったけどここまで凄いの?という感じだ。
さらにDFの2人はハイボールに絶対的な強さを見せていて頼もしい。
長友も素晴らしかった。相手のエースを潰すという重責を担っていて、
今のところそのミッションはほぼ完璧に遂行されている。
長友には海外移籍のオファーも届いているという話である。
そして日本の生命線の中盤3人、長谷部・遠藤・阿部はベストだ。
中村俊輔・中村憲剛・稲本潤一という実力者たちですら入る隙がない。
ゴールマウスを守る川島は集中力がずーっと持続しているようで、
何度も日本の窮地を救った。第三のGKだったことが悪い冗談みたいだ。

褒め過ぎかな。

でもそれぐらい素晴らしい試合を日本はやったと思う。
戦前、ベントナーがどうとかロンメダールがどうとか言っていたのに、
彼らの存在感はどこかへすっかり消え去っていた。
それぐらい日本は強かった。
デンマークは総じて足も遅く、鮮やかな連携はあったけれど怖くはなかった。
あ、唯一、トマソンの侵入は危険を感じたけれど。

これでベスト16は確定した。次の相手はパラグアイ。
今回は南米勢の調子が非常に良いので怖いが、
次の試合でパラグアイを退けるというのは決して不可能な話ではない。
もしそんなことになれば日本は初めてのベスト8だ。
日本プロサッカーの歴史を考えれば十分過ぎるほどの戦果と言える。
まあ少なくともそんな夢を見られる場所には来たというわけだ。

今回の日本代表を見て思うのは、
メンバーが、自分たちのチームに対して、
何か誇りのようなものを感じているように見えること。
キャプテン長谷部ら選手たちの顔つきを見ていても、
頼もしいのだ。こちらまで嬉しくなる。

自分たちの組織に誇りを持つ。
これほど素晴らしいチームマネジメントの成果があるだろうか。
この部分が今回のフランスにはなかった。イタリアにもだ。

組織の話で言えば、本田の存在は面白い。
例えば98年W杯の中田英寿は最年少ながら、
そのパーソナリティで完全にチームをリードしていた。
中田は行動も思考も本物のプロフェッショナルのそれであり、
平たく言えば「シャレにならない」雰囲気を漂わせていた。
本田は、少し違う。
ビッグマウスで異端児でやんちゃではあるが、それと同時に、
年相応に素直な部分があるのではと思わせる。
要は、なんだかんだ可愛がられているんじゃないかということだ。
この生意気な「若造」を、代表のベテランたちは、
自分たちが「大人」になって神輿に担ぎ上げているような、
そんな感覚で接しているのではないかと思うのだが、どうだろうか?

最後に。
こういうことを言うのは良くないかもしれないが、
もう日本は十分に結果を出したと思う。
次にパラグアイに負けてもあれこれ言う人はいないだろう。
でも、だからこそ、もう一つ上へ行ってみて欲しい。
日本は色々な意味でまだ余力があるように見受けられるし、
試合をしながら進化していってるような、
そんな得がたい上昇気運のようなものを感じるのである。

このチームは、まだ行ける。
だったら行けるところまで行こうじゃないか。
by shinobu_kaki | 2010-06-25 12:42 | さかー考 | Trackback | Comments(6)

森博嗣「小説家という職業」より引用。


(小説の)最大のアピールポイントは、
「その世界をたった一人の人間が創り出した」という「凄さ」だろう。
読み手の心に響くのは最終的にはこれである。
映画も音楽も漫画も、新しい作品になるほど、この「凄さ」が失われている。
大勢の英知を集め、最新技術を駆使して生産された作品が、
メジャなジャンルでは幅を利かせている。
グループで力を合わせて作り上げる美徳は、
もちろん賞賛に値するものだけれど、その対極にある個人の技、
個人の思考、というものに触れる機会もまた、
人間の心を揺さぶる一つのベクトルである。
小説ほど、受け手に個人の「才能」と「頭脳」を感じさせるものは、
おそらくないだろう。もしあるとしたら、
それは専門的な研究あるいは学問の領域になる。
否、研究・学問領域でさえ、
既に純粋に個人から発するものは少なくなっているのだ。
人は、結局は「人に感動する」ものである。
それは、自然の中にあって、最も自分自身に近い存在だからだ。
人間の行為、その行為の結果がもたらしたものを通して、
その人間の存在を感じる。はるか昔の人よりも、
同時代に生きている人の方が、存在を感じやすい、
というのも「近さ」のためだ。

(引用ここまで)


よく「最近の作品は小粒になった、昔の作品は凄かった」と言われる。
もちろん細かい部分でのクオリティに関しては、
技術の発達とともに現在のほうが精緻で繊細でテクニカルに出来ており、
そういった意味で進化しているとは言えるだろう。
しかし「昔の作品は凄かった」と言われる理由のひとつとして、
上記の引用にある「一人の人間を感じるということ」が
状況的・システム的に失われている、ということがあるのも確かだ。

特に映画や漫画作品などは、昔に比べ合議制の色が強くなっているようだ。
つまり一つのプロジェクトに関わる人間の数が増えている。
それは雇用を生むことに他ならないし、
ビジネスにおけるリスクの排除という観点からも自然な傾向かもしれない。
つまり、人数をかけて分担するほうが個人の負担は減るはずだし、
何かトラブルがあった際に責任を取る人間が増える。
そういった様々なメリットと引き換えに、
個人の世界観を色濃く投影する、
上記で言う「凄み」を作品に込めることが必然的に難しくなる。
例えば永井豪の圧倒的名作「デビルマン」は、
今の時代のシステムでは生まれなかったかもしれないのだ。

作品のクオリティを支えるのは整合性とディテールだが、
インパクトをもたらすのはある種の「逸脱」である。
しかし合議制においては「逸脱」は修正されてしまう傾向にあるので、
言わば角の取れたバランスの良い作品が量産される。
バランスの良さは、裏を返せば「つまらなさ」と呼ばれるものであり、
当然そこに「逸脱」は見られない。

もちろん昔が良くて今がダメだというわけではない。
そんな話は古いタイプの人間の回顧癖に過ぎない。
言いたいのは、平均化される傾向というのは必然的な流れであり、
そして世のニーズが「今と一番遠い部分」にあるものだとするならば、
求められているのは個人の創作力であるということ。
つまり「その人の作品でなければならない」という、
オリジナリティの部分なのだということだ。
by shinobu_kaki | 2010-06-24 08:30 | 言葉は踊る。 | Trackback | Comments(0)

【MEMO】保険について。


以下、メモとして。
後田亨「生命保険の罠」より

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by shinobu_kaki | 2010-06-23 11:46 | エウレーカ! | Trackback | Comments(2)

日本 0-1 オランダ



曰く善戦、曰く惜敗。
だけどそれは正しくないと思う。
確かに日本はよく守ったし、最小得点差の敗戦にとどめ、
次のデンマーク戦で引き分け以上であればトーナメント進出という、
悪くない状況をつくりだしたのは素晴らしかった。

でもオランダはやはり圧倒的に強かった。
まだ、日本が勝てる相手ではない。
少なくともオランダは、相手がブラジルであろうとどこであろうと、
常に互角に戦ってそして勝利する、
そんなポテンシャルを持ったチームなのだ。

もちろん惜しい場面もあった。
特に後半の最後、闘莉王が前線に上がりパワープレーを仕掛けてからの、
岡崎の残念なシュートなどひっくり返って悶絶した。
でも、ゲーム全般にわたり、果たして攻撃の形ができていたか?
と問えば答えはNOだったと思う。
松井の突破には可能性を感じるものの、
それ以外は日本の得点パターンが見えてこないのだ。

日本の守備はカメルーン戦に続いて良かったと思う。
攻撃力では世界一、二を誇るオランダが、
後半の開始から猛烈に攻め込んできたのだからある程度は仕方がない。
もちろん失点は残念だったけど誰が悪いということではないのだ。
スナイデルはああいったミドルシュートが得意で、
日本も当然それは研究済みなのだが、
例えスナイデルをマークしたとて、
きっとオランダは他の誰かが決めただろう。

それを踏まえて個人的に残念だった点が2つ。

1つ目は駒野のキックの精度。
右サイドバックの駒野はいい上がりを見せたが、
キックの精度が低くチャンスに結びつかなかった。
チャンスが少なかったこともあって余計にそう思うのかもしれないが、
見ていて非常にストレスを感じてしまった。

2つ目は中村俊輔だ。
永きにわたって日本の中心として君臨した選手とは思えないほど、
昨日は、相手にとって怖さのないプレーヤーに過ぎなかったと思う。
何しろゴールに向かう意識がみじんも感じられなかったのはキツかった。
もちろん攻めのイメージは彼なりにあるのだろうとは思うが、
昨日の俊輔にがっかりした日本人は多いのではないだろうか。

後半の岡崎と玉田の交代も、
それ自体はメッセージ性のある良い采配だったと思う。
中盤の長谷部を下げてFWを増やす、
つまり「攻めろ」という監督の指示が明確に伝わる交代だった。
ただ攻めのコンビネーションが上手く機能せず、
得点を奪うには至らなかったのが残念だが。
さらにエトーを抑えた長友を、途中出場のエリアに当てたのも良かった。
今大会の長友はコンディションも素晴らしく、
「サイドのエースキラー」としてスピードのある守備を見せていた。

さて、ここにきての岡田監督のチーム作りを見て思うのは、
コンビネーションを重視する日本的文脈から外れた選手を重用してるということ。
本田に前線を託したのもそうだし、
松井はもとより大久保も日本的文脈から言えば異端の選手だ。
長谷部のキャプテンシーと自信はドイツで培ったものだし、
闘莉王なんかは明らかにそうだよね。
「攻撃力や強さというプラスも多いけど、ミスというマイナスも多い」
それが闘莉王の属性で、日本人にこういったタイプはなかなか生まれない。
これらの選手と、従来の日本的繊細さを持った選手を組み合わせた、
それが岡田ジャパンの(現状における)完成型となっている。

状況だけを考えれば、前述したように悪くない。
デンマークに引き分けるというのはインポッシブルなミッションではない。
全ては初戦、カメルーン戦の勝利が生んだ余裕である。
あとオランダね。
彼らが2点目を取りに来なかったのが結果的に大きかった。


ちなみに日本×オランダ戦(TV朝日)の平均視聴率は43%だったらしい。
これはカメルーン戦の45.2%よりも低いが、
僕みたいにBSに切り替えた人も多かったんじゃないか。
松木安太郎氏の解説があまりにも耳障りだったので、
途中から切り替えたんだよね。解説というか、あれは応援だよなあ。
by shinobu_kaki | 2010-06-21 12:10 | さかー考 | Trackback | Comments(2)

Pass the baton.


今までの人生で、謝りたい人はたくさんいるし、
きっと本当に会って謝らなければならない人もいるだろう。

もしかしたら、謝ってもらわなければならない人も、
決して少なくないかもしれないけどね。

しかし過ぎてしまったことは取り返しがつかない。
これは誰にも言えることだ。

時間というものはリニア(一直線)なのだし、
「もうひとつの選択肢」というのはありえないのだ。
そんなものはそもそも存在しない。

だから、自分にとって謝らなければならない人々についても、
勝手ながら、今の自分と、これからの自分にとっての、
言わば「糧」とさせていただくしかない。

「恩」というやつもそうだ。

主に師弟、そして親子の関係に見られることだが、
「恩」を「成長」で返すというのは非常に健全だと思う。
その人自身に同じ形で返してしまうと、そこで輪は閉じてしまう。
だからまた別の誰かに繋いでいく。渡していく。

そもそも自分に「それ」を渡してくれた人だって、
もともとは誰かから託されたはずなのだ。
それを自分に渡してくれたと考えるならば、
違う誰かに繋ぐというのが自然というものであろう。

つまり平たく言うと、
「先輩におごってもらったら先輩におごり返すのではなく、後輩におごるべし」
ということですね。


閉じっぱなしではいけないのだ。
惜しみなく与えよう。

もちろん財布や、気持ちの許す限りだけどね。
by shinobu_kaki | 2010-06-16 10:50 | ライフ イズ | Trackback | Comments(0)


日本 1-0 カメルーン



美しい試合ではなかった。
日本は鮮やかなボール回しと言うにはあまりにもぎこちなかったし、
何よりカメルーンの出来の悪さにどれだけ助けられたかわからない。
それでも日本は現実的な目標としての「勝点3」を手にし、
これ以上ない形でワールドカップのスタートを切ることができた。

カメルーンは世界的にも有名な選手が何人もいるチームで、
特にFWのエトーは世界屈指の点取り屋として名を馳せている。
そのエトーが、昨夜はまったく怖さを見せることなく終わってしまった。
これはマッチアップした長友が非常に上手くやったこともあるが、
カメルーンは全体的に個々の動きも連動も鈍く、
コンディションが明らかに悪いと言わざるを得なかったのである。
そう、退屈な試合だったのだ。
おそらく日本人以外の人々にとっては。

前半39分、この日キレキレの松井大輔が
シルキーな右足のフェイントから左足でクロスを上げると、
弧を描いたボールはカメルーンディフェンスの頭上を飛び越えて、
ファーにいる本田の足元にぴたりと収まる。
それを本田が左足で「入ってろ!」といった風情で蹴り込んだ。
これが日本の先制点となる。

本田圭佑は困った男だ。評価が難しい。
フリーキックが上手いだけのビッグマウスかと思いきや、
(ブレ球のシュートが打てるという触れ込みが最初にくる選手だった)、
オランダに渡りゴールを量産するタイプに路線変更、
ロシアのCSKAモスクワに移籍するや欧州CLにタイミングよく出場、
スペインリーグの上位を張るセビージャ相手に直接FKを決めるなど、
なんだかんだと無視のできない結果を残し、
ついにワールドカップに代表レギュラーとして出場するに至った。
しかも永きにわたって日本の中心に君臨してきた中村俊輔との、
「二者択一」の争いを勝ち抜いてしまったのである。
本田はカメルーン戦後のインタビューで自分のことを
「(強運を)持ってる」と言っていたが、
ここまで来ると確かに持ってるのかもしれない。
ビッグマウスも結果を出せば普通の口、というわけである。

チーム全体の話をすると、
今回の試合は日本のコンディションの良さが目についた。
特に両サイドの松井と大久保はキレキレで、
相手選手に囲まれてもなかなかボールを取られない。
取られた時はカメルーン選手のファウルになった。
遠藤・長谷部・阿部という中盤を構成する3人も強固だった。
左サイドの長友はエトーを良く抑えたし、
CBの「でかい奴2人」は壁のようにボールを跳ね返した。
GKの川島はヒリヒリと集中力があり、
入っていてもおかしくないシュートを止めるなど活躍した。

この週末にはオランダとの第2戦が待っている。
オランダという国はいつも戦力的には優勝候補と言われながら、
大会の長丁場の間にチームが空中分解するなどして、
なかなか決勝まで進むことがかなわないでいるチームだが、
予選ブロックだから流す、ということをあまりしない。
(だから優勝まで至らないのだと言う人もいる)
おそらくガチで来るだろう。
「容赦しない」ということでは世界一怖いかもしれない。
スペックで見たら勝ち目があるとは言いがたい。

でもセルジオ越後も言っていた、
「(日本の)このチームでどこまで行けるか見てみたい」と。

MFの本田が1トップの位置に入る「0トップ」システムを採用する日本。
日本は本田のチームというわけではないが、
最前線の彼の出来がチームの結果を左右することも確かだ。
本田の「生意気」がどこまで通用するか、
楽しみな今後の試合である。


しかし昨日の勝利は嬉しかった。代表には素直にありがとうを言いたい。
by shinobu_kaki | 2010-06-15 15:08 | さかー考 | Trackback | Comments(6)

雨の月曜ですね。
どうやら関東もこれで入梅。
およそ30日におよぶ「Fifth season」梅雨の幕開けです。

昨日は夕方からにわかに体調が崩れ始め、
僕にしては珍しく頭痛がひどく、
夜ご飯もろくに食べられないまま8時台に休ませてもらいました。
起きたら朝4時半。
頭痛薬と休養が効いたのか、
体調はうんと良くなっていたけれど、
それでもまだ調子としてはどこかふわふわとしておぼつかず、
いつもの月曜日の低いテンションと相まってイマイチな感じです。

でも今夜はワールドカップ日本×カメルーン戦もあるしね。
夜に向けて上げて行きたいところ。
でも、余計に下がるような結果になったらどうしよう…。


閑話休題。
以下は田口ランディのブログより。


 新しいものを否定しないし、新しいツールには興味はあるが、
 体験的にそれをすべて取り入れていくと、破綻すると感じている。
 少なくとも私はそうだ。アナログで育った世代だからしょうがない。
 自分のやり方を模索する半年だったが、
 なにが向いていてなにが限界でなにを身体が求めているか、
 おぼろげに納得してきた。

 Randy Taguchi's News「日々雑感 梅雨のはじまり」



新しいことを始める、新しい技術に順応することはその人を活性化させる。
なぜなら人間は、新しい状況に慣れようとする力を持っているからである。
逆に言えば、毎日まったく同じルーティンの生活を繰り返すと、
細胞は活性化しない気がする。だって、する必要がないからね。
だから常に負荷をかけながら日々を変えてゆくのが望ましいが、
当然負荷がかかるということは苦しいことなので、
同じようなことをしていくほうがラクだということになる。

中途半端が良くないと言われるが、極端なのもよろしくない。
例えば同じルーティンを過ごすことも上記の理由で良くないし、
あまりにも日々違いすぎることをするのも上手くない。
それまでの経験、知見を活かせずに、
一生「何もかも素人」で終わる恐れがある。
つまり仕事において、他人に長じることができない。
世の中の仕事は、それをする人がある程度成熟することで
順調に機能するようにできているものが多く、
それゆえに研修プログラムが存在するのだが、
右も左も分からない人が最前線に放り込まれる状況は事故のもとである。

今まで何を食べてきたか、日々何を食べているかで、
人体の組成が決定的に違ってくるように、
人間の精神的組成というものがあるとすれば、
その内容は過去のインプットによるだろう。

人それぞれ、人の数だけタイプがあるとすれば、
インプットの数や種類やプロセスは同じものは2つとない。
それを一番よく知るのは本人であるはずだ。
(もちろん自分自身のことは近すぎて見えないということもあるが)。

自分のカラダは自分でマネジメントするのが肝要であり、
それには自分自身に対して耳をそばだてる必要がある。
離れすぎても聞こえないし、近すぎても聞き取りづらい。

自分に対する適度な距離感。
これはけっこう難しい。
by shinobu_kaki | 2010-06-14 12:40 | 言葉は踊る。 | Trackback | Comments(2)

中田英寿×本田圭佑対談


「異端児」対談、中田英寿×本田圭佑はこちらで。

【中田×本田対談】中田「ドイツの時は、選手の気持ち・姿勢が足りなかった」


印象として感じたのは、中田ってこんなに優しかったっけ?ということ。
まあ、現役辞めて「旅人」になって何年も経ってますからね、
フィールドという戦場を離れたのだから丸くなってしかるべきということはある。

それにしても、中田の言葉が非常に素直だったのが新鮮だった。
中田の発言をすべて追っているわけではないですけど、
ここまで率直に後悔めいたことを明言したのは初めてじゃないか?というぐらい。

そして本田は、今までいかに中田に憧れ、自分と重ねあわせ、
ロールモデルとして励みにしてきたかがわかるような態度ではあった。
本田にしてみれば念願の対談だったんだろうね。

中田英寿は日本サッカーの歴史において、
もっとも素晴らしいキャリアを歩んだ選手の一人だと思うが、
彼の素晴らしさは(監督や他の選手たちほとんどが言う事なのだが)、
そのクレバーさにあった。
中田は超絶技巧の持ち主と言うわけではない。
おそらくボール扱いの上手さでは中村俊輔や小野伸二に到底かなわない。
だが選手としての中田は、彼らよりも一枚も二枚も上だった。
その理由は「何をするべきかがわかっていた」というところにあると思う。

中田「ボクはドリブルでフェイントをする選手じゃないから、
ボクはそれよりも、スピードの緩急で相手の前に入り込んでいくプレーを、
で、相手を後ろから追いつかせないっていう」


だから格好良く言えば、意志の強さだよね。
中田はその意志の強さでもって、可能な限り身体を鍛えたし、
自分の強みを活かす事を考えた。
ベルマーレでも、ペルージャでも、ローマでも。
そして勿論日本代表でも。

代表選手としての中田のピークは98年フランスだったと思う。
奇しくも今と同じ岡田監督の率いたこのチームだが、
当時の代表は間違いなくこの若き司令塔のチームだった。
トルシエの代表の時は、
中田はひとつの「扱いづらいピース」という感じだったからね。

そして本田。
今回のW杯の日本の秘密兵器的な扱いだが、
FW起用などの岡田采配の報道を聞くと「?」と思う事もある。
確かにオランダとロシアで実績を残しつつあり、
欧州では名前も売れ始めているこの選手だが、
代表での過分な扱いはどうなのだろうと思ってしまう。
今まで時間をかけて、本田を重用したチーム造りをしてきたわけではない。
それがここにきて急に代表チームの先頭に立たせようとされてるような、
過去数年間の「積み上げ」はどうなっているの?
と思わせられる最近の展開なのだ。

この2人を見て思うのは、
こうして言葉を書き起こしたものを読むと、
その感覚が非常にまともであり、オーソドックスなものであるということだ。
しかしそれが、日本的文脈の中に入ると、
「異端児」として扱われてしまう土壌がある。実に不思議である。
個人主義者のように言われがちな彼らだが、
きっとこれでも非常に「日本的」だと思う、まだぜんぜんね。


さて、そろそろW杯が始まる。
まさに「前夜」という感じだ。
日本はまだ、前回の惨敗のトラウマから立ち直っていない。
もちろん過去は過去であり、チームも別物だ。
それでも一矢報いて欲しいというのが、
代表ファンとしての正直なところだ。
もう、待ったなしである。
by shinobu_kaki | 2010-06-10 07:21 | さかー考 | Trackback | Comments(2)

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by Shinobu_kaki
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