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アップダウンの多い土地に住んでいる。
休日に時々自転車を漕いでは、
家のまわりのちょっとした自然に足をのばす。
自転車で坂道を立ち漕ぎするようなことも珍しくはない。
息を弾ませ走る。
今年の冬は特に寒かった。
ダウンの下の身体は熱くて指先は凍えるほど冷たい、という感じだ。
でも休日をルーティンにまかせて家に籠って過ごすばかりというのは、
自分の中で何かが余ってしまうような気がするのだった。

時々何日もかけて遠くへ歩いて行きたくなる。
自転車でもいいが、自転車と歩きではもちろん少し違う。
スピードや目線だけでなく、その最中の頭の中で考えていること、
その内容やリズムなどのあれこれが、決定的に違う気がするのである。
どちらかというと歩きのほうがモノを考えるのに向いている。
危険度が違うからというのもあるだろう。
足裏の刺激も関係あるかもしれない。
どちらが好きかと言われれば、歩くほうが好きと答えると思う。

今日は自転車でいつもと違う方向へと行ってみた。
坂道を上がり、冬なりに緑の豊かと言えるエリアをゆく。
風景の彩度は限りなく低い。
人通りはぽつぽつとある。
少し、寂しい。
緑の多い環境の中の住宅街。
このあたりの街が出来たばかりの頃は、
ピカピカとした素敵さばかりが際立っていたのではなかろうか。

だが人が歳をとるとともに、街も歳をとる。
建物は古く不便になり、風景に色褪せた陰を残す。
時々思うのだが、日本人は街や建物のグランドデザインにおいて、
経年劣化に伴う味わいという概念が抜け落ちているのではなかろうか。
古さとともに良さがでる、そんな街がもっとあってもいいのではと思ってしまう。
木造のいわゆる日本家屋ではそれができたのかもしれないが…。
住宅街の中の広場にあるスーパーが潰れていた。
競合は近くにないはずなのだが、売り上げが低迷したのだろうか。
住宅は数多い。人は少なくないのだ。需要がないわけではない。
こういうのは色々と考えてしまう。
少なくともこのあたりに住む人々の生活は、
ひどく不便になったであろうことが伺い知れる。

さらに自転車を進める。高台に立派な競技場があった。
午後の曇り空が風景を少しだけ暗くして、
その中でユニフォーム姿の選手たちがサッカーをしていた。
静かな自然の中に人工的な空間が突然姿を表すと、
奇妙な現実感の喪失を感じる。
ふと、ここはどこだろう、という感覚に襲われた。
人は何人も歩いているのだが知っている人は誰もいない。
まるで風景の一部だ。
シュルレアリスム系の絵にこういうのがあったかもしれない。
また夕方というのはそういう時間でもあるのだけれど。

冬の夕方の団地はやはり寂しい。
夜の校舎がそうであるように。
人がいるはずの場所に人の姿がないというギャップが寂しさを助長させる。
さらに走って大通りへ出た。
見慣れた風景へと戻ってきたわけである。
僕は少しほっとして、また少し暗くなった夕方の中を、
家族の待つ家に向かって自転車を漕ぎだした。
by shinobu_kaki | 2012-02-05 22:54 | チープ・トリップ | Trackback | Comments(0)

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