2010年 11月 12日
「香水の歴史」
娘が生まれてから、いやもっと正確に言うと妻が妊娠してから、
以前のように香水(フレグランス)をつけることがなくなった。
香水もつけはじめは適量がわからず、
思えばいくらなんでもつけすぎだろうという感じで、
平気で会社に行ったりしていたものだ。
あれは同僚も迷惑だったであろう。
たまたま見つけたサイトだが、
憂愁書架 「ロジャ・ダブ『香水の歴史』」というページがあった。
少し引用してみると、
一般に近代香水は、1882年のウビガンの「フジェール・ロワイヤル」と1889年のゲランの「ジッキー」からはじまるとされています。それまで、香水といえば、単純な花の香りをもとにして、樹脂、木材、それに動物の匂いを混ぜ合わせたものでした。
しかし、香水の世界を本当に変革したのは「ジッキー」です。フランス革命からちょうど100年後、パリ万国博を記念してエッフェル塔が建てられた年にこの香水は登場しました。まさに革命的な代物で、さわやかで甘いフローラルの香りしか知らなかった人々に衝撃をもたらしました。(略)トップノートはラベンダー、ベルガモット、ローズマリー、バジル、ローリエ、奇妙にもハートノートがほとんど欠落し、ベースノートはシベット、サンダルウッド、シナモン、それにバニラで、これにより初めて香水が、レモンやペチュニアの花束という具象から離れて、観念的でセクシーなものになったとロジャ・ダブは書いています。
僕が好きなのは上記にもあるサンダルウッド系の香水で、
いわゆるお香っぽい香りである。
サンダルウッドをベースに、しっくりくる香りを探して
都内の店をウロウロしたこともある。
それとバニラ。
家でもよくお香を焚いていたのだが、
その時の一番お気に入りの香りはバニラであった。
上記のサイトによると、
<サンダルウッド(白檀)> オリエンタルノートには欠かせません。最高品質の白檀はインドに生育する樹齢30年以上のもので、伐採は政府によって厳しく規制されています。この原料は、一瞬香っていたはずなのにいつのまにか消えている、というように嗅覚を「だます」ため非常に使用が難しいとされています。
さらに、
<バニラ> 熱帯に生育するラン科の植物 vanilla planifolia の種子から採取します。緑色の莢から香りを採りだすまでに24ヶ月を要します。香りは力強く、温かみがあり、オリエンタル調の香水には絶対に欠かせません。バニラの香りは性的快楽を高める媚薬ともいえ、サフランと並んでもっとも高価なスパイスです。
とある。
要は、オリエンタルノートが好きなのだ。
実際につけてみて、今までに好きだった香水のベストは、
「HELMUT LANG EAU DE PARFUM」
である。
残念ながら取り次ぎの関係で、日本ではもう手に入らない。
あまりに忘れがたかったために、
ネットで取り扱っている個人業者を捜し、
1ボトル送ってもらったくらいである。
ただ、その時のものは生産から何年経っていたものかは知らないが、
かつて僕がつけていた時のような香りとは、
少々違って感じられたのだった。
そしてそれが、自分にとっての最後の1本となった。
僕は正直、鼻が良いとは言えないほうなので、
(もともとアレルギー性鼻炎持ちなので鼻をやられている)
正直にいって繊細な香りはわからない。
ただ、香りほど好みの出るものはないと思っている。
香りは何よりも生理的に訴えかける。
我慢できない香りは、本当に気持ちが悪くなるし、
好みの香りには無条件に魅かれてしまうというのも事実だ。
またフレグランスをつけるとしても、
もっと娘が大きくなってからだろうけどね。
「長い時が流れ、人が死に事物が壊れ散り果てて何ひとつ残らなくなっても、味と香りだけは残る。それは何よりもはかないのに何よりも私たちの心に残り、何よりもつかみどころがないのに何よりも忘れがたく、けっして私たちを裏切らない。それは魂のように、すべてが朽ち果てた後も記憶に残り、私たちを待っている。味や香りのエッセンスのほんの小さな一滴からも、記憶の壮大な建造物が浮かび上がってくる」(マルセル・プルースト『失われた時を求めて』)