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震災夜行自転車旅団(催行人員一名)

マピオンに「キョリ測」というページがある。
地図上にポイントすることで、A-B間の距離を測る事ができる。

※余談ですけど「はかる」って漢字が多くてクラクラしますね。
計る、量る、測る、図る、謀る…予断終わり。

マピオン キョリ測(ベータ)



ある夜の話をする。

あの、2011年3月11日の忌まわしい震災の日、
僕は青山から妻子の待つ家まで会社の自転車で帰った。
自転車はスポーツタイプでなくどこにでもあるママチャリで、
変速機もついておらず、チェーンは錆びていて、
しかもタイヤの空気すらきちんと入っていなかった。
でもいつ電車が動くかわからなかったし、
妻と娘が何しろ心配だったので、強行軍を決め込んだのだった。

僕は2時間半ほどの行程を予想していた。
しかし、その見積もりが甘かった事は後でわかることになる。

さて非常時である。
携帯メールは当然ながら繋がらない。
電話もしかり。
一度出発したなら誰ともコンタクトが取れないのだ。
こういう時はPCのメールが頼もしい。
帰宅する旨を妻に送って会社を出た。
ちょうど陽が暮れようとしていた。

まず徒歩帰宅者(そして車・車・車!)であふれる表参道を、
ぶつからないようにゆっくりと下っていった。
3月はまだ肌寒く、自転車で走る夜ならことさらだ。
僕はダウンを着ていたと記憶している。そんな季節だった。
代々木公園の脇を抜け、代々木上原のアップダウンを越えてゆく。
どこかでタクシーを見つけたら自転車を置いていくつもりだったが、
(「鍵をかけて後で取りにくればいいさ」)、
残念ながらというかやはりというか、タクシーには人が乗っているのだった。
甲州街道に入っても民族大移動の大波は続いていた。
歩道は人で溢れ、車は窮屈そうにのろのろとしか進まない。
不謹慎ながらも「『夜のピクニック』みたいだな」と思った事を覚えている。

出発から1時間半を経過。
甲州街道をかなり進んだあたりでやっと携帯が繋がった。
妻や娘と話ができて、ほっとした。
だが行程はまだ半分ほど。半分でこの時間という事は…くらくらした。
でも徒歩組はもっと凄い。
後で聞いたら友人は会社から家まで5時間を歩いたと言っていたし、
僕がこうして自転車で走っている距離を、
歩いている彼らはひたすら歩いてここまで来たのだ。
「6時間以上歩いた」という声も聞いた。

後半、さすがに乳酸が溜まって足が動かなくなった。
コンビニでパンと飲み物を買い、少し休んだ。
残念なことに、足を動かさなければ進まないのが自転車という乗り物だ。
とにかく少しずつでも前に進もう。
そう思ってペダルを漕ぎ続けた。

やっと地元の街が見えた時の感慨は今でも記憶に新しい。
広い夜空に月が出ていた。
疲労感と安堵感がないまぜになった気持ちで見たあの風景は忘れがたい。
およそ3時間半の道のり、何とか家に辿り着いたのだ。

ちなみに2時間半という当初の想定は決して悪くなかった。
およそ1ヶ月後、会社に自転車を返すために、
同じ道を自宅から青山まで走らせた朝があったが、
その時のタイムは2時間強であったから。
誤算としては道がスムーズに走れないほど混んでいた事、
向かい風が意外に強く、スピードを出す事が難しかった事、
さらに自転車の空気が入りきっていなかった事だろうか。


で、話は冒頭に戻る。
マピオン キョリ測(ベータ)である。

自転車で出発する前に、一応の目安として距離を測った。
その時に使ったのがこのサイトだったのだ。
もちろんこんなのは「うんざりを実感するための基準」に過ぎない。
だが自分がこれからどのくらいうんざりすることになるか、
実際のところを知っておくのは悪くない。

例えば、
サイト上で新宿あたりにポイントを置いてみる。
「A地点」である。
次に地図の西の方を見やり、
「B地点」をポイントすると、距離が表示される。
そこで不思議に思うのは、
中央線と京王線の駅における、都心からの距離のイメージである。
同じくらいの距離でも中央線の駅のほうが都心寄りな感じがするのだ。
新宿からの距離では、
中央線の国立と京王線の聖蹟桜ヶ丘がほぼ同距離(約23km)なのだが、
なんだか国立のほうが都心に近い気がしてしまう。
これはどことなくなじみ深く個性的な、
中央線カルチャーのなせるわざだと思うのだが、どうだろうか?
by shinobu_kaki | 2011-09-27 19:44 | エウレーカ!

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