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音楽民族たちの宴。茅場町「和光」

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扉を開けてすぐに屋台がドカンと鎮座する。
あえて「安ブシン」といった風情の一軒屋。
中に入ると、まさに家の廊下、トイレ、そして部屋。
キッチンというよりまさに「台所」。
ファッションとしての「ヨゴシ」ではない、
本当に古い家をゴリッと豪快に使用した焼き貝専門店。
茅場町駅から徒歩数分、店の名前は「和光」だ。

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西麻布「衆縁」でたまたま出会ったムラジュン氏、
そして「3衆年パーティ」でミニライブを披露してくれた
mamieさんのお誘いで参加が実現した忘年会。
いや、この店はすごいよ。
つうか「店」って言っていいのかわからない佇まい。
まさに人の家で飲んでる感覚だ。

そしてオーナーのキャラがイイ!
もと某アイドルグループのメインボーカルとして活躍、
ウッドベースやギターを弾きこなすミュージシャンでもある。
だから、スキマ風の漏れそうな店内に、
いきなりピアノやウッドベースやギターなど、
あまりにも無造作に楽器が置いてある。
おちゃめなウィットを常に交えて話すオーナーの豪快かつ繊細な人柄に、
誰しも魅了されることうけあいなのだった。

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そして「焼き貝専門店」という希有なスタンスのこの店、
料亭などで出した日にはたいそうな値段がついてしまうのではないか、
そう思われる鮮度と質の良い貝と魚。そんなのが次々惜しみなく出てくるのだ。
普段から飲み物すべて¥500とスバラシ価格の店ではあるが、
オーナーのご厚意により、今回飲み物はオール持ち込み。
「1人1本」とのノルマ。我々は金沢帰りということもあり、
石川の酒「天狗舞」を、そして「マッコルリ」の限定酒を持ち込んだ。

「遅刻しない系」(オーナー命名)の我々は、
「初めての店だし、迷って遅れたりしないように」と、
集合の30分ほど前、17:30には茅場町にいた。
しかしあっさりと店を発見、ちらりと店内を覗いたらいきなり屋台。
ここかあ〜と思っていたら、
「どうぞ〜どうぞ〜」とすかさずオーナー。
もちろん誰も来ていない。前日に続き、一番乗りになってしまった。
寒いでしょう、とオーナーが七輪に火を起こしてくれた。
先にビールを飲んで待つことにする。
恵比寿のサーバー、オーナーおすすめの「黄金比のビール」は
普通のエビスと黒エビスのブレンド3:7。
お通しも出してくれた。我々は焼きたての貝を齧り、黄金比ビールを飲んだ。

18:00を少し過ぎた頃、どやどやとメンツが揃い始めた。
「イカしたカブキ者」といった風体のムラジュン氏。
彼がオーガナイザーだ。人を集める能力がある。しかも女性の比率が高い、
とはさきほどのオーナーの言。
衆縁でアコーディオンを披露してくれたmamie嬢と旦那様のヒロシ氏。
mamie嬢は会ったときから僕を「ヨン様」と呼ぶので、この宴のあいだ中、
僕はあらゆる人から「ヨン様」と呼ばれる事になったのだった…。
これでペ・カウンターは「96」(当社アバウト調べ)。
まあ、マフラーとかしてたしね。サービスで(サービスって)。

宴が始まる。皆の持ち寄った酒は多岐にわたり、
一杯目がシャンパンの人もいれば梅酒の人もいる。ワインもある。
泡盛もでてきた。そして限定マッコルリが控えている。
持ってきたマッコルリの話をすると、皆から「狙っている!」との声が。
シマッタ!「素」で買ってきちゃった!!(ホントです)

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女の子と男の子。二人とも小学生。オーナーのお子様である。
かいがいしく、店の手伝いをする。貝を焼き、皿を運ぶ。
大勢の酔っ払いの中にあって、可愛らしくもしっかりしている。
「甘やかさず、怒るときは怒る」という今時まっとうな父親像を貫く、
オーナーの育て方を非常に好ましく思った。

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入口の屋台部分を覗いて、3部屋というか、スペースは3つほど。
入り乱れて行き来する。初対面が多いが、妙な親近感を肴に酒がすすむ。
不意に、音楽が聞こえてきた。入口近くのピアノ・スペースで、
セッションが始まったのだ。この忘年会にはミュージシャンが集まっている。
そう、今日は音楽民族たちの宴なのだ。

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皆、めいめい酒を片手に、音楽に酔い、酒に酔う。
オーナーがウッドベースを披露する。ピアノの連弾。まさにセッション。
享楽的にノリノリの生演奏をバックに飲んでいると、
ギターがこちらにやってきた。みんなで飲んで、歌って、騒ぐ。
小民家的間取りの店内のそこここに、音符が飛び交っている。
まるでひとつの焚火を囲んでいるような近さ、そして一体感。
やばい。めちゃめちゃ楽しい。
美味いものを食って、酒を飲んで歌う、楽しい。それはとても原初的な快楽だ。
散らばった音符は次々に沸き起こっては折り重なり、
皆の上気した笑顔とともにしばらくの間、消えることはなかった。

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歌い疲れて泡盛を飲む。
かすかに三線の音が聞こえる。誰かがつまびいているのだった。
最後に別室で、みんなで鍋を囲んでウドンを煮て食べる。
貝のエキスでじっくり煮込んだウドンを、自分たちでこしらえてラフに頂く。
味噌の量を加減したり、バターを溶いてみたり。おかわりも自由だ。
そしてあっというまに電車の時間が迫り、我々は茅場町を後にした。
古い友達にするように皆に別れを告げる。また、来るからね。

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騒ぎ歌いながら飲むのも楽しいが、しっとり過ごすのもまた良し。
気取りや建て前とは無縁の、心までオープンな空間。
かすかなリンクを辿った不思議な縁でもってこの場にいるという不思議、
何よりこの夜もっとも美味に思えたのは、
言わば常に奇跡的な人間の繋がりそのものなのであった。
by shinobu_kaki | 2004-12-20 16:07 | 最初の一皿、最後の一杯

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