2005年 02月 26日
東京ライフ。
東京についての話をしていた。黒い陶器になみなみとつがれた焼酎が、
水を注ぐたびにカラカラと気持ちのよい音を鳴らす。今週はよく飲んだ週だった。
例えばイタリアのように古い遺跡がゴロゴロしているというわけにはいかないが、
東京も歴史のある古い街であり、地名にその名残を感じさせる。
味のある地名が多いのだ。例えば表参道。
すっかりお洒落なブランド店の並ぶ街として認知されているこの街だが、
名前をよく見ると「参道」つまり明治神宮へと続く神社の参道であり、
今のお洒落なイメージとはそのルーツにおいてミスマッチが発生している。
無理もない。地名というのは昔からあって変わらないものであり、
街というのは常に新陳代謝のさなかにあって変化を常とするものだからだ。
名前と言えば、焼酎の名前もユニークなものが多い。
栗焼酎ダバダ火振(ひぶり)、無手無冠(むてむか)、
そしてこのタイガー&ドラゴン…。
日本酒にはここまでの遊びはない。焼酎という酒のポジション、
ほどよい軽さとフットワークを持った装いのせいだろうか。
日本酒が着物なら、焼酎は例えば甚平、そんな感じがする。
少しゆるく、足どり軽く。
東京と言えば、2年住んだ仙台から東京へ来た最初の頃、
友達も知り合いもまだほとんどいなかった僕はよくひとりで街を歩いた。
名前だけは知っている、街に対してはそんな情報ほどしか無く、
けれどもそういう「イメージだけはあった場所」を
自分の足で訪れるのは悪くない感覚だった。
緑の多い晴れた日の表参道も大好きだったし、もっと都心、
皇居周辺や永田町あたりを歩くのも楽しかった。
国会図書館に行ってみたこともある。
こうして思うと基本的に人の少ない、緑の多い場所を好む傾向がある。
もともと田園、というかひどい田舎の生まれという事を思うと、
とても自然な事なのかもしれない。
歩くのは苦じゃなかった。2〜3駅くらいなら平気で歩いた。
「退屈」という感覚は今でもほとんど持たないが、当時からそうだった。
何もなくても退屈じゃない。そういう才能だけは持っていると思っている。
ある時、坂道の多い住宅街に迷い込んだ。
歩きすぎて駅から遠く離れて、しかも土地勘がまったくないときた。
まあいい、歩けばどこかへ出るだろう。それが東京という街だった。
実際に僕はてくてくと歩き、立派な家の建ち並ぶ自分とは縁の無さそうな場所、
しかしどことなく品が良く、ゆったりとした空気に魅力を感じていた。
思えば、それが今の住まいの周辺であり、その時迷い込んだと思った家並みは、
僕の部屋から歩いて5分とかからない場所だったのである。