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「まぐろ漁船に乗る」とはよく言うけれど。

漫画やなんかで、借金を返せない人が
「1年間、まぐろ漁船に乗らされる」なんて言う話があります。
これはほとんど監獄のように劣悪な労働環境、
そして一度海に出たら家に帰ろうにも帰れない、
そんな「せっぱつまった感」の象徴として「まぐろ漁船」は使われます。
つまり「香港に売りとばされる」なんていうのと同じ意味だということね。

でも、別に借金どうこうじゃあなく、
仕事としてまぐろ漁をしている人というのはいるわけで。
そのへんどうなんでしょうか。
AVANTIより「まぐろ漁船の話」


  命懸けで危険なところへ行くまぐろ船に乗る人たちは、
  人それぞれの事情を持っている。
  一度航海に出たら1年半〜2年はかかる。
  それだけ長い間、家族と離れて生活することになる。

やっぱりある程度「事情持ち」が多いんですかね。

  僕がコックとして初めて乗り込んだ船は、最初に高知を出発して、
  40日くらいかけてケープタウンへ向かった。
  その後、まぐろは回遊しているので、
  それを追い掛けてオーストラリアやインド洋へ。
  「吠える40度線」と言われる南緯40度のあたりは大時化。
  南極に近くなっていくと「墓場の50度線」と言われ、
  本当に危険な暴風圏に入る。そういうところで仕事をするのがまぐろ船。
  おそらく一番過酷な漁船だろう。

僕は船酔いするたちなので、まぐろ漁船は向かなそう。
ていうか時化(しけ)っていう漢字も久しぶりに見たな。

  時化になると5階建てのビルのような波が来る。
  船なんてその上に浮かぶ木の葉のようなモノ。
  その5階の高さからドン!と落ちることもある。横からだって波が来る。
  それで船にしがみついていたら仕事にならない。
  まぐろ船は「延縄(はえなわ)」と言って、縄を上げていく作業をするので、
  両手がふさがっている。だから腰だけでバランスを取りながら、
  30〜40度のローリングやピッチング、三角波が来てその上にドン!と乗る、
  なんて状況の中で仕事を続ける。

「延縄(はえなわ)漁業」って聞いたことあります。
ふむふむ、それで。

  作業をしている船員たちには波が見えない。
  だから舵を取っている船長や甲板長が
  「危ないな」と思ったら、非常ベルを鳴らす。
  そのベルが聞こえたら、みんな急いで逃げて鉄柱などにしがみつく。
  その直後にドーン!と船が波に飲まれ、また静かになったら作業に戻る。
  そんなことの繰り返し。
  一度縄を入れてしまうと、すべて引き上げるまで作業は止められない。
  その縄の長さは約150km。だいたい東京−沼津間くらいの長さがある。
  そこに3000本の枝縄がぶら下がっていて、
  イメージ的には居酒屋さんの「縄のれん」みたいな感じ。
  東京−沼津間という巨大なモノだけれど。

150mかと思いました。150kmかよ。
あまりに巨大で想像つかないぞ。

  その縄を海に投入するのに5時間くらいかかる。
  そして一旦、船から切り離して、まぐろが掛かるのを待つ。
  そして「上げ縄」と言って、その縄を引き上げる。
  これには12〜15時間くらいかかる。まぐろが掛かっていると
  「いらっしゃい!」「銭や!」「客や!」なんて景気づけの歓声が上がる。

祭りみたいですねえ。それにしても15時間の作業って。

  当時、南まぐろはキロ5000円くらいだった。1匹100kgとして50万円。
  感覚としては「札束だ!」という感じ。
  だから上がったまぐろの下に毛布を敷いて、傷つけないように気を配る。
  そしてすぐに解剖して、そのままの鮮度を保てるよう
  マイナス60度で急速冷凍する。
  そうやって、漁倉がまぐろで満杯になったら日本に帰れる。
  これがまぐろ漁船。

  斎藤健次さん(まぐろ料理屋『炊屋』店主)


いやー、こんなにハードだとは。お話だけでお腹いっぱいです。
たしかに「借金のカタ」としては申し分ないような。
しかしこんなの読んじゃうと、今後まぐろ寿司ひとつ食べるにしても、
ゆめゆめ疎かにはできないっちゅうか、色々考えちゃいますね。
by shinobu_kaki | 2006-07-29 19:48 | エウレーカ!

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