2006年 08月 20日
日垣隆「手ごたえ」
お金とまったく無関係にするわけでもない。
(各国で超高額宝くじに当たった人の95%は
直後に仕事をやめている)。
「生きがい」と言われるものの正体は、
たいてい手ごたえのことなのである。
例えば小説の執筆も、ボランティアも、
恋も仕事も看病も子育ても、
みなこの「手ごたえ」が欲しくてやっている。
“無償の愛”でさえ例外ではない。
名誉や地位も同様である。
結局のところ、仕事はもとより人生の充実度は、
「手ごたえ」如何にかかっている。
手ごたえとは「張り合い」のことだ。
別言すれば、ひとは「ありがとう」という言葉なくして
生きられないのである。
日垣隆(作家・ジャーナリスト)
僕は超高額宝くじに当たったら仕事を辞めるだろうか?
それはよくわからないけれど、
>みなこの「手ごたえ」が欲しくてやっている。
というのはその通りだと思う。実感が欲しいのだ。
厳密な意味では、自分一人で何かを終わらせることはできない。
「認められる」というプロセスが必要だし、
広義の意味での確認作業が人には必要なのだ。
感謝、激励、叱責、尊敬、それらすべては確認作業の結果として、
必要な「評価」というものである。「評価」がなくては人は働けない。
それはつまり「手ごたえ」だ。
他人と言う鏡に映った自分の姿を確認しながら生きるのが人というものなので、
自分を、自分のやっていることを見失わないためにも、
手ごたえという「鏡像」が要るのだろう。