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植木等のこと。

植木等が死んだ。
でも、僕は植木等のことなどほとんどわからない。
リアルタイムで見ていた世代ではないからだ。
僕が植木等のことで知っているのは、
かつてのコミックバンド「クレイジーキャッツ」のメンバーだったこととか、
実家が寺だったこと、「スーダラ節」を歌ってヒットさせたこと、
なんか「無責任男」と呼ばれていたことくらいである。
ところで今思うと「クレイジーキャッツ」ってすごいバンド名だよね。
なんたって「狂猫」である。まあ、どうでもいいですけど。

ところで前にも何度か書いたと思うが、
昔のコメディアンって洒脱というか、かなり人間的に味がある。
ちょっとした才能のかたまりのようで、何でもできて何でもやっちゃう。
その中から青島幸男のようなでかい才能が出てきたりする。
実は逆かもしれないけどね。
才能のある人が、コメディアン「も」やってるという。
まあそんなのはどっちだっていい。
なにしろ彼らは単純なカテゴライズを許さない。
井上順とか堺正章とか、谷啓もそうだけど、
結局何をしている人かわからない。
バンドマンと言えばバンドマンだし、俳優と言えば俳優である。
本当はあいまいな言い方で嫌いなのだが、
「才能」をあらわす「タレント」という呼び方は,
実は秀逸なのかもしれない。

植木等の話にもどる。
以下は、とある対談における植木等の発言。
自分自身の「明るさ」について語っている。

「これはね、明るいということは、
さっきも言ったように、ぼくはありがたいなあ、
あの両親がいたからこそオレは明るいんだなあと先ず思うと同時に、
この自分で言うのもおかしいけれど声がいいんですよね。
だから、歌っても、
単純にコメディアンの歌って片付けられないようなね、
いい声を持っているということ。
それにね、お寺の育ちというのは、
態度がでかいんですよ(笑)
だからね、偉い奴の前に行ってもね、
お辞儀しないというかね、
とにかく警察官とか、県知事とか、
医者とか、学校の先生とかは、
昔は態度がデカかったんですよね。
今でもデカいけど(笑)」

植木等の声の良さは、正式な声楽のレッスンを受けていたことからきている。
まあ、寺の息子って声がいい印象がありますけどね。読経をするから。

で、さっき書いた「カテゴライズできない芸人たち」を、
仮に「ショーマン」と呼ぶことにすると、
ショーマンたちはなんとなく生き方がお洒落だし、どこか明るい。
ビートたけしは偉大な芸人で映画監督つまりクリエイターなのだが、
ショーマンという感じではない。たけしには明るさがないのだ。
ここで言っている明るさというのはあまり自意識を感じさせないというか、
例えば楽屋や自宅に帰っても、テレビで見るのと人間が変わらないのではないか、
錯覚であれなんであれ、そんなふうに思わせるキャラクターのことだ。
その、変わらない明るさに人は安心するのである。
共感ではない。あくまでも仰ぎみて、安心したり驚嘆したりするのだ。
そんな条件にあてはまる才能を「スター」と呼ぶとすれば、
植木等はきっと、スターと呼ばれる存在だったのかもしれない。

最後に、植木等の歌った曲たちを列挙したい。
なんかさあ、タイトルが味わい深すぎてすごいんだよね。
時代がそうさせた、ってやつかねえ。

1961年 - スーダラ節、こりゃシャクだった
1962年 - ドント節、五万節、無責任一代男、ハイそれまでョ、
 これが男の生きる道、ショボクレ人生
1963年 - どうしてこんなにもてるんだろう、ホンダラ行進曲、ギターは恋人
1964年 - 馬鹿は死んでも直らない
1965年 - だまって俺について来い、無責任数え唄、ゴマスリ行進曲、
 悲しきわがこころ、遺憾に存じます、大冒険マーチ
1966年 - 何が何だかわからないのよ、シビレ節、それはないでショ、笑えピエロ
1967年 - 花は花でも何の花、余裕がありゃこそ、万葉集、たそがれ忠治
1969年 - ウンジャラゲ、アッと驚く為五郎、酒のめば
1970年 - 全国縦断・追っかけのブルース、おとこ節
1971年 - この際カアちゃんと別れよう、こんな女に俺がした
1979年 - これで日本も安心だ!

「どうしてこんなにもてるんだろう」「遺憾に存じます」、
「何が何だかわからないのよ」「この際カアちゃんと別れよう」とか、
ほとんどやけくそだ。ていうか、曲書いたのは青島幸男か…。
by shinobu_kaki | 2007-03-30 19:52 | エウレーカ!

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