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デジタル・ディバイド・デザイナー

メールで大容量のファイルを送ることができるサービスがある。
便利なので仕事でも最近よく使っている。
これでデータの入稿まで出来たりするからね。
「宅ふぁいる便」は容量50MBまで。
「FILETRACK」のように1GBまでオッケー、なんてのもある。

普段なら自分で持っていったり取りに来てもらったり、
バイク便を手配するケース(これが一番多い)において、
メールだけで済んでしまうのは何しろコストがかからなくていい。

これを使うたびに思うのは、このシステムがより整備されていけば、
バイク便業界はかなりピンチだよなあということ。
(もう、かなりピンチなのかもしれないけど)
あらゆるコストの中で最も高いと思われる人件費が浮くのである。
これはオンラインの圧倒的な勝利だ。

貸ポジ屋も、ずいぶんあちこちがつぶれてしまった。
いわゆるフォト・ライブラリーね。
昔はポジをわざわざ貸ポジ屋まで見に行ったりしてたけど、
今じゃあ完全にウェブ検索のシステムに移行している。
確かにこっちのほうが断然便利ではある。

似たような話だが、写植屋もほとんどがつぶれてしまった。
デザインの仕事がデジタルになってしまったからね。
つまり、Macでデータを作ってそのまま入稿、というのが標準になった。
かつて版下を作る職人がやっていた部分をデザイナーがやっているわけで、
その分デザイナーのギャラを2倍にして欲しいくらいだ。

これらの話に関して思うのは、
便利のためにテクノロジーは存在するということ。
便利は必然であるということ。
便利は不可逆であるということ。
そして、便利は雇用の可能性を減らすということ。

版下を実際にいじったことのあるデザイナーも今では少ない。
僕も世代的にはデジタルから入っていてしかるべきだけど、
最初に入った会社がちょっとデジタル・ディバイドってとこがあったので、
仕事を始めて数年はアナログなやり方で仕事をしていた。
印画紙。カラス口。雲形定規。トレスコ。レタリングにペーパーセメント…
そんな「図画工作」的な世界でやっていた数年間だった。
それでだけに、Macでの仕事に慣れるのにかなり苦労した記憶がある。
「選択ツールはつまりピンセットだ」みたいに置き換えて覚えた。

色んな人が言っているし、僕も思うのだが、
初めからMacのモニターの前「だけ」で仕事をする人に、
いいデザイナーはやはり少ない気がする。
少なくとも僕の場合はいかにMacの前に座る時間を少なくするか、
そういうことを思ってやっている。つまりインプットだ。
この場合、Macはあくまで「手作業の場」でしかない。

ただ、アイデアを考える時にウェブというのはとても便利で、
これはもう欠かせないソースになっている。
ウェブを上手に使えるかどうかのポイントは「検索」にあると思う。
そして「検索」のポイントは「想像力」だ。
これは検索に限らず何においても必要なのだが。
by shinobu_kaki | 2007-05-31 13:22 | デザイナーという病

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