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岩明均「ヒストリエ」(ネタバレ?)

岩明均の「ヒストリエ」、単行本4巻で物語の冒頭につながった。
なるほどこーゆー経緯だったのかと、
もう一度1巻のアタマから読み直したりして。

「ヒストリエ」は謎多き実在の人物、エウメネスを主人公に描かれる。
wikipedia カルディアのエウメネス
アレクサンドロス大王の書記官を努めたと言われる人物で、
歴史家の筆によると、後年、親友でもあった隻眼のアンティゴノス
殺されてしまう運命の人である。

ところで物語の冒頭で、紀元前343年の若きエウメネスは、
ペリントスの商人を名乗る隻眼のアンティゴノスという男に出会う。
この時点でエウメネスは流浪の若者にすぎない。
アレクサンドロス大王ともまだ出会っていない(と思われる)。
前述したように、隻眼のアンティゴノスはエウメネスにとって運命の人物だ。

しかし、こういうシーンがある。第1巻の82ページ。
「アンティゴノスさん」とエウメネスが呼ぶのだが、返事をしないアンティゴノス。
とぼけた表情で振り向くと、「君は…なぜわしの名を知ってる?」という。
エウメネスが彼の名前を知ったのは、直前に街の近衛兵に、
アンティゴノスが自ら自分の名前を名乗ったからなのだが、
すぐに返事をしない、というコマをわざわざ挟んでいるのは伏線のようにも見える。
つまり、アンティゴノスというのは偽名で、実は別人ではないかという説だ。
そして物語に意外性を求めるならば、このペリントスの商人を名乗るアンティゴノスは、
やはり隻眼と言われたマケドニア王フィリッポス2世、つまり、
アレクサンドロス大王の父親ではないかという疑いがあるんだよね(某所による)。

確かにフィリッポス2世も、作中のアンティゴノスと同じく右目が不自由だし、
「うさんくさい商人」が実はマケドニアの王という意外性も面白い。

でも、エウメネスの生涯により深く関わってくるのは、
「本物の」アンティゴノスのほうだから、アンティゴノスを名乗るこの男は、
本当にアンティゴノスであったほうが面白いかな(ややこしくてすみません)。

ちなみにバルシネという女性のキャラクターがとても魅力的。
バルシネはメムノンの妻で、後にアレクサンドロス大王の妾となる女性である。
大学者・アリストテレスがしばらく考えてから答えた「謎解き」を、
一瞬にして理解してしまう聡明さを持った女性、というエピソードが描かれている。
物語中のバルシネの年齢はまだ20歳。

こうなるとまったく気になるのが、英雄アレクサンドロス大王の造形だ。
33年ほどの短い生涯の間に、未曾有の大帝国を打ち立てた男である。
どれほどの凄みを持って描かれるのか、とても楽しみに待っている。

それにしても岩明均は遅筆だ…単行本1巻出るのに1年、というペースだからね。
作者存命中にアレクサンドロスは出るのだろうか?…お願いしますよホント。
by shinobu_kaki | 2007-08-10 08:37 | shinoBOOKS

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