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太陽のルサンチマン。

一年の中でも珍しく、ふと、仕事が凪いだように動かない。

こんな例えを持ち出すのは不適切かも知れないが、
にわかに客足の止まった繁華街の回転寿司の職人になったようで、
どことなく所在がないというか、どうしていいのかわからなくなる。
だいたい通年にわたって何か忙しくしているというのがいつものペースだ。
ごく稀にだが、こんなタイミングもあるということだろう。
それにしてもこの間の週末には撮影で休日出社をしていたくせに、
どうにもバランスが悪い感じがする。
休みは休み、仕事は仕事。メリハリのあるリズムのほうが好ましい。

平日にはいつも、妻に作ってもらった弁当を食べている。
彼女はいつもかなり早い時間に起きて、僕の弁当と朝ご飯を作ってくれる。
僕が7時くらいに起きるとそれらはちょうど出来ていて、
まだぼんやりと起ききらない僕は、忘れないようにバッグに弁当を入れる。
それを見届けるかのようなタイミングで彼女は2度目の眠りにつく。
僕は朝ご飯を食べてコーヒーを飲み、シャワーを浴びて出勤するのである。

家のドアを開ける。運良く空気が澄んでいれば遠くに富士山が見える。
昨夜は月も綺麗に出ていた。沈みゆく月はちょうどこの富士山の方角だった。

昨日は土砂降りの朝だったが、今日は気持ちよく晴れていた。
雨の日は家の前から少し歩いたバス停まで行き、
駅へと向かうバスに乗る。駅までは約5分少々と、それほど遠くない。
だから小雨の日は歩いてしまうこともある。それでも15分というところだ。
雨が降っていなければ、駅まで自転車を走らせる。
小さな川にかかる橋を越え、ゆるやかな住宅街の坂を降りて行く。
右手に高台を望む。家の方角とは違うが、
高級住宅街のある高台への坂道は、この街のシンボルのような名所だ。
僕は自転車置き場に自転車を止めて鍵をかけると、
駅までほんの数分の道を、同じく通勤途中の人に交じって歩く。
明らかに混雑とは無縁の街である。
かといって、街機能がうんと駅前に集約した地方都市とも違う。
物量の豊かさはあくまで東京のそれであり、人口密度だけが地方なのだ。
休日、駅前に買い物に来るたびにその快適さを実感する。

梅雨の中休みとも言えるこの時期の晴天は、
一年の中でもっとも快適という人もいる。
僕においては、もう少し暑くなっても構わない。いや、暑くなって欲しい。
太陽がアスファルトを焦がし、にぎやかに蝉が鳴く夏が好きだ。
地面に映る朝の影も色濃く、昼は遠くに陽炎の立つ、
そして日が落ちた頃に飲むビールの美味い夏が好きなのだ。

約20年を日照の少ない東北で育った。
僕のこの、太陽を過剰に求め続ける現在の嗜好については、
きっと生まれてから日光を浴びる機会の少なかったことに対する、
「太陽のルサンチマン」なのだと勝手に結論づけている。
by shinobu_kaki | 2008-06-13 14:43 | ライフ イズ

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