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はじめに言葉ありき。

ある広告人の告白(あるいは愚痴かもね)さんによると、「肩こり」という言葉を作ったのは夏目漱石だそうである。さらに「新陳代謝」「反射」「無意識」「価値」「電力」などもそうらしい。つまりその前は、それらの状態に名前がついていなかったということ。名前がついて初めて概念が発生する。これは面白いね。

いわゆる明治維新は日本の歴史において、最大級に大きなパラダイム・シフト(←安易であまり使いたくない言葉ですが)である。だから、この直後に作られた、生まれた言葉というのが必然的に多くなる。ドイツなどのヨーロッパにならって国の仕組みを作ったのが大久保利通たちであるのなら、文化的思想的なパートはこの漱石であるとか鴎外であるとか四迷であるとかの識人(インテリ)たちが担ったわけである。

この時代で語源といえばよく話題になるのが「野球」のそれで、これは正岡子規が訳し名付けたという話が一度は広まったがそうではなくて、baseballという英語を日本語に翻訳したのは中馬庚(ちゅうまん かなえ)という人物であることが知られている。

ところで当ブログにもたびたび登場する岩明均のマンガ「ヒストリエ」だが、ここで「地球」という言葉の生みの親が主人公であるエウメネスであると読める箇所がある。エウメネスとの会話の中で哲学者アリストテレスが、「 地球…地球か! うまい言い方だな これからそう呼ぼう」と話すシーンである。もちろんこれは創作だが、「地球」という言葉を最初に使ったのが誰なのかはっきりと分かっていないため、こういった面白いエピソードが作れるのだ。つまり、可能性として本当にエウメネスが考えたということも捨てきれないのである。これは想像力をめぐらす「余白」があるということだ。

ところでお気づきだと思うが、今回は意識的に改行をせずに書いてみた。読みづらいかもしれないが、まあ、実験のようなものである。でもアレですね、こうすると字切りの制限がないので文章がちょっと変わりますね。これは、テニスにおける「ラケットがプレーを規定する」みたいなもので、いわばフォーマットが言葉を規定するみたいなこと。同様に「言葉が概念を規定する」ということを持ち出すと、冒頭の話と繋がったことになってめでたしめでたしというわけ。
by shinobu_kaki | 2009-04-06 12:52 | 言葉は踊る。

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